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2018.09.06

♯物流

知っているようで知らない宅配ボックスの種類

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急増する宅配便

宅配ボックスは日本人が発明したということをご存じだろうか。今から35年前、フルタイムシステムの代表取締役社長 原幸一郎さんが開発した。今では考えられないが、当時は人々が使ったことがない設備だけに、営業をしていても「使う人はいない」と言われたこともあった。近年では参入メーカーが増え、宅配ボックスは海外でも生産されている。そして、物流業界の救世主として注目を集めている。

家電に家具、食品や日用品まであらゆる物が24時間インターネットで注文でき、しかもそれらが翌日には手元に届く時代となった。この手軽さから日々の買い物は通販で済ますという人も増えている。結果、インターネット通販市場はぐんぐん拡大し、2002年に約27億個だった宅配便の数は2016年には40億1990万個※まで膨れ上がった。

このような物流量の急増にドライバーの数が追いつかず、ここ数年再配達問題などが深刻化。新聞でも大きく取り上げられた「宅配クライシス」が起こっている。この「宅配クライシス」を解決する手段として白羽の矢が向けられているのが、宅配ボックスなのだ。宅配ボックスがあれば、自宅に不在でも荷物を受け取れるので、受け手・送り手双方にとってのメリットは大きい。

※経済産業省『宅配便取扱い実績資料』

機種によってはトラブルがひん発

このように暮らしに浸透してきた宅配ボックスだが、メーカーによって機能や種類がまったく異なることはあまり知られていない。「宅配ボックスってどれも同じじゃないの?」という声が聞こえてきそうだが、機種によっては安全性も管理の手間も格段に変わる。

宅配ボックスは大きくわけて、コンピュータ式とダイヤル式が存在する。コンピュータ式宅配ボックスは、入庫の履歴管理ができるほか、利用者が事前に決めた暗証番号を使って開けるため、セキュリティも万全だ。さらに、トラブル時は、メーカー側に遠隔操作で開けてもらえる機能がついているタイプもある。

一方、ダイヤル式は、コンピュータ式よりも安価だが、入庫の履歴管理機能はついていない。荷物を入れる時は、宅配業者がそのつど暗証番号を設定する。番号を書き込んだ不在票をポストに投函し、受取人はその番号を見てロッカーを開ける。一見するとセキュリティには問題がないようにも見える。ところが、そのつど暗証番号を設定する仕組みが原因で、トラブルが相次いでいる。

代表的なトラブルには2つある。1つ目は、宅配業者が誤った番号を紙に書いてしまい、受取人が開錠できなくなってしまうパターン。こうなると、管理人を呼んで対処しなければならない。2つ目は、業者を装った人間がポストから不在票を抜き取り、そこに書かれた暗証番号を見てロッカーを開き、荷物を盗まれる事例もある。また、これ以外にも、銭湯道具やペットの散歩用具を入れるなど、ロッカーを私物化したり、荷物が入っていない状態でロックされてしまったりすることもある。

以上の例からもわかるように、ダイヤル式はセキュリティ面においてやや問題があるといえそうだ。また、トラブルが起きても、遠隔操作ができないため、管理人が現場まで駆け付けて対処しなければならない。そのため、ダイヤル式宅配ボックスが設置されている物件を管理する会社の間では「ダイヤル式は手間」と不評のようだ。 

人気設備だからと、とりあえず安いものでも設置さえされていれば、集客につながるはずと考える賃貸オーナーは少なくない。特にダイヤル式はコンピュータ式と比べると、メーカーにもよるが3~4割ほど安く手に入るため、価格の安さに惹かれて選びがちだ。しかし、ダイヤル式宅配ボックスでは、トラブルが絶えないことから「利用者の責任でご使用ください」と張り紙をするマンションが出るほど厄介者扱いされている例も出始めている。

日常生活に必要不可欠な設備

全国賃貸住宅新聞社の「入居者に人気の設備ランキング2017」によると、宅配ボックスの人気は年を追うごとに上昇している。単身者向け物件で1位のインターネット無料、2位のエントランスオートロックと王道の2設備に続き、宅配ボックスは前年の8位から3位にランクアップ。一方、ファミリー向け物件では、前年度は圏外だったが4位に急浮上した。

宅配ボックスの生みの親である原さんは「参入メーカーが増え、あって当たり前の設備になった今の状況は、35年前には考えらなかった。だからこそ、宅配ボックスは自分に合ったものを選んでほしい」と語る。

ライフスタイルの多様化で、今後ますます宅配ボックスの存在感は増してくるはずだ。オーナーは、人気の設備だからといって安易に設置するのではなく、導入後の管理も見据え、物件に合う機能を備えた宅配ボックスを選ぶことが大切だろう。

(Hello News編集部 須藤恵弥子)

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