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2018.09.27

♯シェアハウス

ITエンジニアのための賃貸マンションから生まれる新たな価値観

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フリーランスのためのプラットフォームサービスを展開するランサーズ(東京都渋谷区)は、2018年6月、ウィルグループ(東京都中野区)が運営する賃貸マンション「TECH RESIDENCE beta FUTAKOTAMAGAWA(以下、テックレジデンス)」と連携し、フリーランスの住まいを支援すると発表した。そこで今、急激に増加しているフリーランスの生活や暮らしは一体どういうものなのか、その住まい方の実態をテックレジデンスの責任者に聞いた。

コミュニティ形成を目指した賃貸マンション

土日だけでなく平日も多くの子連れや若者で賑わいを見せる東急田園都市線・大井町線の「二子玉川駅」から徒歩6分の場所に、テックレジデンスが建っている。

1階~4階は住居スペースとして1Kタイプ(22.5㎡)の部屋が31室、地下1階には共有スペースとして80㎡のリビングと40㎡のダイニングがある。共用スペースは入居者なら誰でも利用することができ、入居者同士がコミュニケーションを取る場になっている。

テックレジデンスの事業責任者であるウィルグループの若泉大輔さんは、「このマンションは、ITエンジニア向けの賃貸住宅で、企業で社員としてエンジニアをされている方だけでなく、副業として携わっている方、フリーランスとして働かれている方に向けて、入居者同士のコミュニティ形成を目的とした運営を行っています」と説明する。

入居するにはウィルグループが行う面接に合格する必要があり、「あなたはここに住むことでどんな価値を周りに提供できますか?」「ここでどんなスキルを身につけたいですか?」など、4~5問の質問に対して、自分の意思を示さなくてはならない。もし、答えられなかった場合は、入居できないという徹底ぶりである。

入居者の年齢や性別は不問。現在、20代~40代の方が入居し、テックレジデンスでのコミュニティに期待している。家賃は9万3,000円~9万5,000円+共益費。テックレジデンスは他にも恵比寿や目黒など、好立地の場所を選定しているため、優秀なメンバーが集まっている。

入居者のニーズを考えた設備

若泉さんはテックレジデンス事業の立ち上げをしているためため、入居者ニーズを十分に把握し、それを設備面に活かしている。例えば、この物件では全ての部屋に100mbpsのインターネットを完備している。通常のインターネット無料マンションは20~40mbpsということを考えると、ネット環境に十分配慮していることが分かる。もちろん、無線LANは全部屋に配置されている。また、どこでもデバイスを充電できるようにと、コンセントの位置や数も入居者が使いやすいように工夫されている。

他にも、入居者はクリエイティブな仕事に就く人が多いことから、ふと思い浮かんだアイデアを気軽に書き込めるようにと、それぞれの部屋の壁は黒板になっていたり、外に出なくても運動ができるようにと卓球台が置いてあったりする。

 

共用部にも入居者を惹きつける仕掛けがある。共用リビングに設置されているプロジェクターだ。自身のパソコンに入っているアイデアを披露することで、入居者同士の意見交換が活発に行われ、新たなビジネスの創出に繋がることもあるそうだ。

さらに、定期的に外部講師を呼び、ブロックチェーンやプログラミング、VRを使ったファッション、お金のことなど、入居者から希望のあった情報について、定期的に勉強会を開催している。参加は無料で、フリーランスは経理など費用の管理を自分でする必要があるため、会計士や税理士よるマネー講座は人気だそうだ。

 

新たな住まい“コリビング(co-living)”を目指す

そもそもITエンジニア向けに賃貸マンション事業を始めた理由は何かと若泉さんに聞くと、「地方から東京に初めて出てきて家を借りた時、ふと思ったんです。

仕事を昼夜している人にとって、言わば寝る時間が大半の部屋に、なぜこんな高い家賃を払っているのかと。同じ高い家賃を払うのであれば、住まいに付加価値を求めたい。それが私にとってコミュニティの形成だったのです」と話す。そこで、国が発表したIT領域の成長戦略を見て、「ITエンジニア×コミュニティ×住まい」という図式を思いついた。

「ITエンジニア×コミュニティ×住まい」

また、ITとコミュニティは親和性が高いのも理由のひとつである。IT業界で働く人は、ネット環境とパソコンがあれば場所を選ばずにできる仕事も多いこと、副業を認めている企業が多いこと、仕事を分担したり、依頼したりしやすいことなどの面があることも事業を後押しした。実際、入居者同士で仕事を依頼しあうこともあるそうだ。入居者のひとり、28歳の女性はここで出会った入居者に刺激を受け、Web業界に転職することができたことで、「私の人生が変わった」と言う。

「テックレジデンスを“IT版ときわ荘”にしたいです。入居者同士が切磋琢磨し、ここから新たな経済を生み出せればと思っています」

他人同士が共に生活を送るシェアハウスのような住まいに、コワーキングスペースのような様々な職業の人が一緒に過ごせるスペース、“コリビング”のようなコミュニティに対しての考えが日本に根付き、住まいのあり方や価値、家賃の意味を変化させることが目標だと若泉さんは言う。今、働き方の多様化が進み、それに伴って新しい住まいが生み出されようとしている。若泉さんが目指す新しい賃貸マンションも、これから様々なところで認知されていくのだろう。

(Hello News編集部 鈴木規文)

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