• facebook
  • twitter
  • line

ARTICLE

記事

2018.10.11

♯データで読み解く

どこまで進んだ?新しい働き方

このエントリーをはてなブックマークに追加

時間や場所にとらわれずに働く

政府主導の働き方改革が始まった。今年6月には働き方改革関連法が成立し、残業時間の上限規制や有給取得の義務化、正社員と非正規社員間の待遇格差の改善などが内容に盛り込まれ、その一部は来年4月から施行される。

多くの企業が新しい働き方を模索するなか注目されているのが「テレワーク」という勤務形態だ。テレワークとは、パソコンやインターネットを始めとするICT(情報通信技術)を使い、拠点となるオフィス以外の場所で働くことを指す。このほかに「リモートワーク」「モバイルワーク」「在宅勤務」などと呼ばれることもあるが意味は同じだ。時間や場所にとらわれずに働くことができるため、育児や介護で会社オフィスへの通勤が難しくなった人にはもってこいというわけだ。

カフェや出張先のホテルで働く人が多数

では、テレワークの普及状況はどのようになっているのだろうか。総務省が2032社(有効回答数)に行った調査「平成28年通信利用動向調査」によると、テレワークを導入している企業は13.3%となった。次に、テレワークを行う場所の内訳をみると、在宅勤務が22.2%、サテライトオフィス勤務が13.8%、カフェや出張先のホテルなどで働くモバイルワークが63.7%で、圧倒的に多い結果となった。

一方、テレワークを導入していても、実際にテレワークを行う従業員は全従業員の5%未満という企業が45.4%にのぼった。また、業種によって導入率に大きなばらつきがあった。例えば、製造業は35%、サービス業・その他は31%、卸売・小売業は25%であるのに対し、運輸業が4%、建設業が3%、金融・保険業が2%と一桁台の業種もある。物理的にテレワークが難しい職種があるとはいえ、調査結果からはまだまだ普及に及ばずという状況がうかがえる。

ところが、海外ではやや事情が異なるようだ。例えば、アメリカでは実に85%※①もの企業がテレワークを導入している。導入率が半数以下のイギリスでも38.2%※②、ドイツでも21.9%※②にのぼり、普及率は日本よりも格段に高いことがわかる。アメリカではすでに大半の企業が導入している現状をみると、将来的には日本でも普及の余地はありそうだ。

※①:Survey on workplace flexibility 2015, WorldatWork
※②:European Company Survey on Reconciliation of Work and Family Life 2010

テレワークなら育児や介護をしながらでも働ける

テレワークを導入することで、働き手と企業の双方にどのようなメリット・デメリットがあるのだろうか。まず働き手にとってのメリットは、育児や介護などをしながらでも働けること、通勤時間をなくせること、会社の場所に合わせて住む場所を選ばなくて済むことなどが挙げられる。デメリットは、職種によってはテレワークできないケースがあること、自分で時間管理をする必要があることだ。在宅勤務の場合は自宅だと集中しにくいと感じる人もいるだろう。

次に企業側にとってのメリットは、育児や介護を理由に退職する者が減り、離職率の低下につながることが挙げられる。また、個々のライフスタイルに合わせ業務ができるため、生産性の向上が期待できる。デメリットは、セキュリティ管理の強化が求められたり、勤怠管理がしにくくなったりすることだ。

2017年12月に東京商工会議所が行った「東京2020大会における交通輸送円滑化に関するアンケート結果」によると、今後テレワークの導入を検討していると回答したテレワーク未導入の企業は11.4%に留まった。一方、今は何とも言えないと回答した企業が最も多く45.7%となった。アンケートの中では、行政に対し「成功事例の積極的な開示」や「テレワーク導入に伴う費用補助等のインセンティブや技術的支援」を求める声も多く聞かれた。大半の企業では様子見状態にあるといえるだろう。

助成金でテレワークの普及を促進

国もこういった動きに応えようと、働き方改革を推し進めている。法整備をするだけではなく、自治体などと連携してテレワークを普及させる具体的な動きも見えてきた。国と東京都が連携して開設した東京テレワーク推進センターもその一つだ。センターでは、テレワークの導入を検討している企業に向けて情報提供や相談を受け付けている。また、公益財団法人東京しごと財団では、テレワークを導入する企業を対象に、テレワーク活用・働く女性応援助成金を設立。これは在宅勤務で必要な通信機器などの導入費や、サテライトオフィスの利用にかかる経費の1/2(限度額250万円)の助成を行うというもの。申請は今年の5月からスタートし、来年3月まで受け付けている。

特集2では、実際にテレワークを導入している企業の担当者に話を聞いた。

(Hello News編集部 須藤恵弥子)

このエントリーをはてなブックマークに追加
ページトップへ戻る