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COLUMN

コラム

2018.11.08

新しい暮らし方

子を持つ共働き夫婦の「育児」を父親視点で考える。

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「育住近接」という言葉をご存知だろうか。これは、家選びの際に、駅までの距離や職場までの時間を重視するよりも、保育園や学童保育施設が近いかどうかに重きを置くという考え方である。リクルート住まいカンパニーの調査によると、保育園や学童が同じ棟内に設置されているマンションならば、希望している駅まで距離より遠くても許容できるという意見が35%、許容できる時間はプラス7.4分という結果がでた。子育て世帯は、職場へのアクセスが悪くなってでも保育園までの送迎の便利さを求める傾向にあるのだ。

職場までのアクセスの良さを求める「職住近接」が、「育住近接」に取って代わられた背景の一つに、待機児童問題が挙げられる。

「人気エリアに引っ越したため、子育て世帯が多く住み、近隣の保育園はどこも定員だった」
「駅近に住んだものの、駅前の保育園はどこも人気で、応募しても入ることができなかった」

実際、こうした理由で、自宅から数十分もかかる保育園に子どもを預けた後に、職場へ向かうという父母も多いそうだ。そこで、通勤時間が大幅に変わらないのであれば、駅まで遠くても保育園が近ければ構わないと考え、育住近接を求める動きが徐々に高まってきているのである。

<職住近接> 職場に直行:25分 保育園経由:45分

<育住近接> 職場に直行:30分 保育園経由:32分

こうした動きに対し、父親たちは家事や育児についてどのような考え方を持っているのだろうか。小学校入学前の子を持つ父親3人に、集まってもらった。

大山さん(40)
江戸川区在住/新聞社勤務
3LDK(持ち家)
駅徒歩5分/職場まで30分
妻(38):時短勤務、長男(5):保育園

深野さん(32)
墨田区在住/広告代理店勤務
2LDK(賃貸)
駅徒歩5分/職場まで30分
妻(32):育児休業中、長男(1)

佐藤さん(36)
江東区在住/IT系勤務
3LDK(持ち家)
駅徒歩12分/職場まで20分
妻(36):育児休業中、長女(2):保育園、次女(0)

 ──「育住近接」という考え方が広がってきました。今の家に決めた理由に、育児の便利さや快適さを求めていましたか。

深野:今の家は子供が生まれていなかったということもあって、育児のことは何も気にせず、職場に行きやすい場所を重視して決めました。ただ、少し手狭になってきたので広い家に引っ越す予定です。その際は、保育園に入りやすい地区を考慮して決めたいですね。

大山:息子が保育園に入った後に、今の家を買いました。ローンは月8万円ほどで、変動金利で組んでいます。金額や場所など家についてのことは、すべて妻がひとりで決めました。私の希望はまったく聞いてもらえず、言われるがままに契約を結ばされてしまいまして(笑)ただ、妻としては、保育園までの距離がポイントだったらしく、以前の家より保育園に近づいています。

佐藤:育児のことよりも資産価値が下がりづらい家を優先して今の家を購入しました。駅まで徒歩12分ですが、将来的に新駅が徒歩3分の場所にできる計画があり、それに期待しています。そのため、今まで通っていた保育園から離れてしまい、妻が電車と徒歩で計40分かけて保育園までの送り迎えをしています。育休中のうちに近場に入園させたいのですが、募集がまったくなくて困っています。ここまで保育園に入るのが大変だとは思ってもいなかったです。

 ──今、巷ではパワーカップル(夫婦それぞれ年収700万円以上)という言葉に注目が集まっています。その予備軍でもある皆さまは、今後どのような家庭を築いていきたいですか?

深野:子供はあと2人ほしいですね。家庭もにぎやかになりますし。そのためにお金はコツコツ貯めていますよ。生活費は私の給料でまかなって、子どもが生まれるまでの妻の給料と産休・育休手当はすべて貯蓄用の口座に保管しているんです。なので、今いくら貯まっているのかは妻しか知りません。妻を信頼しているのですべて任せています。

大山:我が家のボスは妻なので、私はそれにただただ従うのみです。と言っても、家事や育児、貯蓄など、家のことはほとんど妻がやってくれているので…家庭について意見することなんてできませんよ。ただ、欲を言えばあと1人は子供がほしいですね。一緒にスポーツしたり、運動したりして、遊びたいです。そういうところを父である私が担っていければなと。

佐藤:子供がすくすく育ってくれれば何も言うことはありません。ただ、将来的なお金のことはやはり心配です。株や仮想通貨などに投資はしていますが、子ども2人分の教育費などを考えると、今から怖いですよ。私の家もお金の管理はすべて妻がしてくれているので、毎月のお小遣いの額を減らされないよう、仕事を頑張るしかないですね。

 ──3人とも会社の正社員としてフルタイムで働いていますが、積極的に子どもと関わって育児をする時間はありますか。

深野:基本的に19時までには家に帰っているので、育児をする時間はありますが、あまり関わっていません。食器とかの洗い物は以前はやっていましたが、今は面倒になってしまって、洗わなくなりました。その代わり、お風呂に一緒に入ったり、お風呂掃除をしたりして、妻に怒られないよう、バランスを取っています。

大山:うちは自分で使った食器は自分で洗わないとボコボコにされますよ(笑)。ただ、帰りが遅いので、家に着いた時には子供はすでに寝ていて、育児はほとんど何もできていないですね。平日は、数十秒くらいしか顔を合わせないんじゃないですか。その代わり、土日は息子と二人でお散歩に行きますし、お風呂も入れます。ちょっと疲れている時は、実家に息子を連れて行って遊んでもらったりもしています。

佐藤:食器洗いはもちろん、早く帰った日はお風呂に入れたり、ご飯を食べさせたり、できるだけ妻を助けられるよう頑張っています。次女の寝かしつけも毎日のことです。ただ、一旦子どもたちが泣き出すと、私の抱っこでは泣き止まないのに、妻の抱っこだと一瞬にして泣き止む姿を見ると、まだまだ子供からの信頼は得られていないのかなと。これまでの育児量の積み重ねの結果ですかね。

 ──「イクメン(育児男子)」「カジメン(家事男子)」など、メディアでよく耳にする機会が増えましたが、皆さまはご自身と比較してどう考えていますか?

 深野:家事や料理はほとんどしないので何も言えませんが、少ない時間でも育児をするのは楽しいですよ。だから私もどんどん育児に関わっていって、結果的にそれで妻が職場に復帰しやすくなれば良いかなと。妻もそれを望んでいますしね。

大山:私も家事や料理はしませんが、妻はすでに職場復帰しているので、負担を分散できるように、今後はイクメン、カジメン、料理男子を目指していきたいです。今、週に2回は私が保育園に送り届けるようにしていますが、それでもやっぱり大変です。妻はそれを5年間もやり続けてくれたわけで、感謝しかありません。

佐藤:私も平日休みの日は妻の代わりに娘を保育園に送迎していますが、行くだけでクタクタになります。それを妻は普通にやってくれているのだから、ありがたいです。妻が育休中のうちに、私も家事や育児を一人前にこなせるようになって、妻には家庭のことで心配をかけさせずに、職場復帰してもらえるよう、頑張りたいと思います。

 

母親の負担を減らしたいと願う父親が増えているからこそ、「育住近接」というワードが生み出されたのかもしれない。この少子化の現代にあって、育児環境を整えることが、子供を増やすことに繋がるのではないだろうか。しかし、3人の父親の話を聞いていると、単に家庭内での努力だけではなく、社会や企業もサポートしていく必要がありそうだ。

働きながら育児をしている母親の負担を軽減することは難しいこと。その問題が解決できなければ、子供を欲しいと考える家庭が更に減り、一気に少子化が進んでしまうとも言える。だからこそ、毎日の生活のベースとなる“家”を、育児に適した環境にし、負担を減らそうとすることは理にかなっていると言える。

しかし、家を理想の環境に近づけたいと考えれば考えるほど、お金の問題がでてきてしまうのも事実だ。

収入をアップさせるには、育児や家事の妻の負担が増えると分かっていても、共働きせざるを得ない。ニッセイ基礎研究によると、女性が正社員として働いた場合の生涯所得は、出産・育休を2回利用しても2億円を超えるという。つまり、夫婦共働きの家庭ならば、生涯所得が2億円も変わってくるということ。共働きを選択する家庭が増えているのも無理はない。

国は「大規模マンションを建設する際には、保育施設の設置を促すように」と自治体に働きかけを行い、育住近接のサポートを行う。企業の中にも、自宅で仕事ができるリモートワークの推奨を行ったり、企業内に保育所を設置したりするという事例も増えてきた。加えて、男性の育児休業の取得や、女性の出産後の復帰を促進している企業もある。

育児をする者の立場に立って、環境を整えていくことがこれからの子育て世帯に求められる時代になってきたのだ。そして、育児環境が整えられれば、少子化問題の解決に繋がるのではないだろうか。

(Hello News編集部 鈴木規文)

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