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COLUMN

コラム

2018.07.05

♯市場・トレンド

かつての「番犬」は「家族」に。人間顔負けに進化したペット向けサービス

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ペットの数は子どもより多い

フィットネス、ホテル、カフェ、エステ、おむつ、保険、葬儀・骨つぼと聞いて、何を思い浮かべるだろうか。実はこれ、全部“犬”をターゲットにした商品なのだ。ペット全体でみると、その市場規模は1兆円を超えており、矢野経済研究所の調査によると、2015年度は1兆4,720億円に達している。これは出版業界の書籍売上高1兆148億円(2017年オリコン調べ)を超える規模だ。

成長著しいペット市場だが、なんとペットの数は子どもの数まで上回っている。少子化が年々進んだ結果、15歳未満の子どもの数は2018年4月1日時点で1,553万人(総務省統計局調べ)となり、37年連続で減少している。一方で、一般社団法人ペットフード協会の調査では、犬・猫の数は約1,800万頭(2017年)にのぼり、子どもの数を約240万以上も上回った。

犬向けホテル · トリミング · フィットネス施設を運営するエルペロクラブ(株式会社久ケ原スポーツクラブ:東京都目黒区)の淡路純平マネージャーによると、「子どものいないご夫婦がわが子のように犬をかわいがるケースが多いです。最近はペットに対する位置づけが変わっています」と指摘する。つまり、ひと昔前のような「番犬」としての役割は期待されておらず、人間同様の「家族」という立場に変化しているということだ。

2016年の熊本地震では、当時、避難所に連れ込んだペットに対し、苦情が出るなどペットの受け入れ問題が発生した。そして、環境省が災害時のペット対応の指針を改定したほどだった。つまりこれは、家族として扱っている人の心理や状況に、社会体制が追いついていないという現状が浮き彫りになった形だ。

こういった社会の変化に合わせ、最近はもしもの時に備えてペットに遺産を相続させる、「ペット信託」なるものまで出てきている。ペット信託とは、飼主(委託者)が信託会社(受託者)などに財産を託しておくことで、飼主に万が一のことがあっても、ペットが今まで通りの生活を送れるように契約を結ぶというものだ。例えば、ペットを老犬ホームに預けることを希望していた場合、飼主の死亡後は、信託会社(受託者)が信託契約に従い、入居費用を老犬ホームに支払っていくことになる。

犬の数は、ここ数年それほど大きな変化はないものの、犬にかける支出は年々増加している。一般社団法人ペットフード協会の調査では、2016年の1カ月当たりの犬に対する支出総額が8,079円だったのに対し、2017年は1万818円まで増加した。

「家族」として位置づけられるようになったことで、商機を見いだした企業が、犬向けにあらゆるサービスを作り出している。そして、サービスの種類が増えたことで購買意欲がかきたてられるのか、飼い主の財布の紐も緩むいっぽうだ。中でもペットの健康に関わる分野となればなおさらだ。

フィットネスで生活習慣病予防

生活習慣病にかかる人間は数多くいるが、犬にも同じような問題が浮上している。家族同然にペットをかわいがるあまり、餌を与えすぎたり運動をあまりさせなかったりした結果、肥満などの生活習慣病を抱える犬が出てきたのだ。

それらを解決するために登場したのが、動物のフィットネスだ。エルペロクラブ(東京都目黒区)は、犬専用のフィットネスを運営しており、ペットの肥満に悩む飼い主たちが訪れる。施設内には独自開発した犬専用のウォーキングマシーンがあり、これを使って運動を行う。スピードや傾斜などが調整でき、人間用のウォーキングマシーンと機能はほぼ同様だ。犬種や目的に合わせて作ったオリジナルトレーニングを10~15分ほどかけて行う。料金は、カウンセリング・トレーニング・マッサージが30分1セットで3,000円。週1回、半年から1年程度のトレーニングで、1~2キロほどシェイプアップできるといい、体重を減らすだけではなく筋肉をつけることは老化防止にもつながると、同クラブの淡路純平マネージャーは説明する。

 

トレーニングでしつけを身に着ける

犬の幼稚園やしつけ教室、トレーニングといった名称で、犬の問題行動を正す訓練を行うサービスも登場した。犬のトレーニングなどを行うレルヒェ(東京都練馬区)には、吠えや咬み癖などの問題行動に手を焼く飼い主が訪れるという。同店の熊谷美里オーナー店長によると、飼い主としての自覚を持たないまま、ペットを飼い始める人が増えているといい、こういった飼い主のもとでは問題を抱えるペットが少なくない。

以前は2週間ほど犬を預かってしつけを施すプログラムを提供していたというが、問題が発生したため、飼い主も交えて犬をしつけるプログラムに切り替えた。問題というのは飼い主自身が自覚をもって帰宅後のしつけを継続させないため、犬が元の状態に戻ってしまうというものだ。実際に2週間のトレーニングで問題が矯正されたにもかかわらず、自宅で飼い主が今まで通り接してしまい、“ワガママ犬”に戻ったケースがあったという。熊谷店長いわく「飼う側も犬に信頼されるリーダーとなることが大切」。トレーニングが必要なのは、犬だけではないというわけだ。

ペットと一緒にカフェに行く時代

街では、ここ10年ほどでドッグカフェを見かける機会も増えた。犬と行けるお店を検索できるウェブサイト「ドッグカフェ.jp」では、2007年に312件ほどだったドッグカフェの登録件数が、2018年6月時点で912件まで増え、当時と比較すると3倍の数になったという。

「ここ10年ほどの間に、ドッグカフェなどペット対応のお店がすごく増えました」と語るのは、犬と一緒に食事ができるアンディカフェを運営する株式会社アンディカフェ(東京都目黒区)社長の谷口哲也さんだ。同社はカフェの他に、トリミングやホテル・犬の幼稚園も運営しているが、開店当初の2007年は同社のように複合サービス提供する会社が少なく、その珍しさから、メディアで度々取り上げられていたそうだ。そのため、当時は大阪や新潟の遠方からの来店客もいたという。ちなみに来店客の7割が犬同伴だが、残りの3割は犬を連れていない一般客だという。

アンディカフェでは、人と犬それぞれに対応したメニューを揃えている。犬向けメニューで1番人気なのが、鶏肉でできた「わんバーグ」と、犬の似顔絵をあしらった特製ケーキだ。いずれも、じゃがいもや米粉、豆乳など犬に適した素材を使用している。なかにはお店で犬の誕生会を開く客もいるというから驚く。

  

谷口さんがカフェを開くきっかけになったのが、通っていた近所のドッグカフェで感じた居心地の悪さだという。ある日、そのお店に入ると隣に小型犬がおり、谷口さんの飼っているラブラドール・レトリバーに向かって吠え続けた。谷口さんによると、小型犬は大型犬に向かって吠える傾向があり、離れた席にするだけで状況が変わるにもかかわらず、スタッフは知らんぷりで、気まずい思いをした。そこでの体験からアンディカフェでは、相性の悪い犬種が隣にならないような席位置へ案内している。また、天井に間仕切りのカーテンをつけ、必要であればそれを使い、隣の犬同士が見えないような工夫もしている。人も犬も居心地よく過ごせる空間づくりを意識しているアンディカフェは、都内に3店舗展開しており、今後は新店舗のオープンも検討しているそうだ。

ペットと住める賃貸は
差別化が図れるが問題もおきやすい

賃貸住宅業界では、10年以上前からペットが飼えるペット可住宅や、ペット仕様の設備を備えたペット共生型の物件があるが、最近ではペットと一緒に暮らせるシェアハウスまで登場した。

HOUSE-ZOO株式会社(東京都渋谷区)は、ペット共生型のシェアハウス「HOUSE-ZOO」を首都圏近郊に15棟展開している。同社の社長、田中宗樹さんは、幼少の頃から動物に囲まれて育ったといい、8年前に宮崎から東京へ引っ越した際、ペットの飼える物件は家賃が割高なうえ、そういった物件自体が少ないことを知り、驚いたそうだ。

そこで、手ごろな価格で動物と暮らせるシェアハウスの展開に至ったという。ペットを飼う入居者に好評を得ており、入居率は90%台を維持している。

とはいえ、ペットと住める賃貸物件は、トラブルの原因になりやすいことから、まだまだ少ないのが現状だ。例えば、ペット可にしたはいいが、動物を飼っていない人も入居できる物件の場合、ペットを飼っていない入居者が何かしらの不満を訴えるケースがあるからだ。ペット可の賃貸マンションに住んでいるという前述の谷口さんは、「エレベータに大型犬を乗せては駄目とか、あっちの通路は犬の通行禁止といったルールがいくつもあり、暮らしにくさを感じています。他の入居者からのクレームなどで規則がどんどん後付けされているのです」とペット可賃貸住宅ならではの問題を語った。

ペットを飼っている人も飼っていない人も、気持ちよく住めるような働きかけを運営側でサポートしていくことが大切だろう。犬を取り巻く環境が年々変わるなかで、昔と同じように「ペット可」にしたからといって満室になるわけではない。どうしたら人もペットも暮らしやすい賃貸住宅になるかを追求し、工夫を重ねることで、初めて差別化が図れるのではないだろうか。

(Hello News編集部 須藤恵弥子)

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