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COLUMN

コラム

2018.07.26

インタビュー

不動産SNS「セプト」で不動産流通に革命。繋がりを生む新住文化プラットフォームが登場

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時代の流れを読む

家具付きの短期契約賃貸住宅である“マンスリーマンション”という言葉が初めて誕生したのは今から27年前。バブル景気に陰りが見え、不動産価格が下落に転じ始めた1991年3月のこと。茨城県にある小さな地元の不動産会社、泉ハウジングが、月単位で部屋を貸すというビジネスをスタートさせた時のことだった。

本社を構える神栖市は、重化学コンビナートの街として発展してきた。このため、周辺には多くの工場が建っていた。泉ハウジングの創業者である故・今泉正勝さんは、賃貸アパートなどの空室を活用し、工場で働く短期間労働者に向けて、「鞄ひとつで引っ越せる、ホテルよりも月の宿泊費が安い家具付き賃貸」をうたい、マンスリーマンション事業をスタートしたところ、次々に借り手がついた。

当時4万円の周辺相場に対して、月のひと部屋あたりの売上は10万円に上った。この収益性の高さと、時代の流れから部屋の短期貸しの需要が増えると見越し、全国にマンスリーマンションを広めようと考えた。そして、正勝さんは妻、直美さんとトラックに乗り、3カ月かけて全国各地でセミナーを開いて回った。すると徐々に賛同者が現れ、70社が集まったところでFC展開を開始。夫婦二人三脚で始めた事業だったが、今では全国に約1万室を管理するまでになった。こうして時代の流れを読み、すぐに行動に移したことがマンスリーマンション事業での先駆けという地位を築くことができた秘訣だろう。

その時代の流れを読む力は、次男のマンスリーマンション事業責任者、今泉竜さん(41)に引き継がれた。

父・正勝さんは「短期貸し」という新たな選択肢を入居者に与えた。息子の今泉さんは、そんな父のようになりたいと、不動産業界に関連するあらゆるものをWeb上で相互に繋げるためのプラットフォーム(土台)を構築。SNS型の新住文化システム「不動産ONS セプト!(以下、セプト)」を立ち上げ、セプト内であらゆる情報を流通させたいと考えたのである。

「オーナーや不動産会社、入居者、この3者がひとつのプラットフォーム上で繋がることができれば、わざわざ誰かが間に入る必要はありません。直接つながることができれば、みんながみんな楽になる。私はその仕組みを作りたい」

一筋縄ではいかなかったセプトの開発

今年10月25日に正式オープンするセプトでは、 “Facebook”や“Line”のような従来型のSNSと同じように、日々の日常を言葉や写真にして投稿したり、気の合うユーザー同士でグループを形成し、情報共有したりすることができる。

従来型のSNSと異なる点は、不動産業界に特化し、登録時に自分がオーナーか不動産会社か、顧客(個人/法人)かを選択する仕組みだ。3者がそれぞれ会話することができることで、オーナーと不動産会社が意見交換を行うことも、オーナーが入居者向けに情報発信することも、自由に行えるのだ。

また、セプト上では誰でも自由にビジネスができるようにと、オリジナルのアプリを作って登録することが可能。例えば、アプリ上で入居者が自宅の一室を民泊として貸し出せたり、オーナーが自身の空き物件の入居者募集をしたりすることができるのだ。

セプトの開発を後押ししたのは“不動産テック”の台頭だ。“不動産テック”とは、テクノロジーの力を活用した不動産における新しい仕組みのこと。近年、IT技術の進化により、不動産業界にも様々な事業にITが取り入れられるようになった。

ここに目をつけた今泉さんは、「不動産業界に特化したSNSを作り、みんなで自由に繋がれる場を提供したい」と考えた。本来であれば、オーナーや不動産会社、入居者が同じひとつの空間で繋がりを持つということはあまり歓迎されていない。というのも、この3者が繋がりを持ってしまうと、情報を囲うことができなくなるからだ。今泉さんはそうした、業界の悪しき風習を気にすることなく、誰もが自由に好きなことができることに重点を置いた。

開発にあたり、どれほどの金額がかかるか見積もりを取って回った今泉さんだったが、ここで現実を知ることになる。大手システム会社から提示された金額は、なんと5億円。想像を超えた金額に、見積書を見ながら自分の目を疑った。では他のシステム会社ならどうか、結果は同じだった。見積もり金額は6億円だった。

多額の開発資金に頭を悩ませていたある時、なにげなくフェイスブックを見ていると、あるWebシステム会社の広告が目に留まった。早速、その会社に連絡してみると、大手システム会社よりも20分の1まで開発費用を削減することができるとのこと。理由は、その会社が独自に開発したCMS(コンテンツ・マネジメント・システム)に、セプトで必要なプログラムが最初から多く含まれていたからだ。そのため、機能を新しく構築することなく、低コストでセプトを開発できた。この話を受け、すぐに契約した。

不動産業界のSNSを開発しようとしている今泉さんが、ユーザー数世界一(2018年7月時点)のSNSであるフェイスブックで得た運命の出会いをきっかけに、セプトの開発は大きく前進していった。

新しい住文化を築くために

Webシステム会社が決まると、今泉さんは朝から夜まで仕事に没頭し、ベータ版のリリースまで一気に進めることができた。今年10月25日の正式オープンに向けて、現在も引き続きベータ版での運用を行っているが、毎日のようにアップデートを行い、使い方を研究している。

登録ユーザー数が思っていたほど増えない時期もあった。自宅のある茨城県から、Webシステム会社のある東京に何度も足を運び、打ち合わせを重ねたが、開始から1週間で登録された人数は30名程度だった。しかし、ここで父が作り上げてきたマンスリーマンション事業のFC加盟店に救われることになった。セプトへの登録を促すと、遠方の加盟店ともセプトを通してコミュニケーションがとれると好評で、1ヶ月で250人の登録があったのだ。その勢いのまま、3カ月後には登録者が450人にも上った。

そして今、「誰でも新しい住文化が作れる仕組みにしたい」という目標を掲げる今泉さんの考えに共感する人々が、577名(2018年7月25日現在)になった。一日20人以上が登録している。

「今は、セプトの正式リリース日に開催する『新住文化カンファレンス』の準備をしています。このイベントでは、運営側とお客様、それぞれが相互に意見を言い合えるものにしようと考えています。不動産業界で積極的に行動を起こしている方々が集まるので、一緒に何かしたいですね。ワクワクがないと、仕事が捗りませんから」

ベータ版のリリースから約半年が経った今、不動産流通の仕組みを変えようと試行錯誤している真っ只中のセプトではあるが、不動産業界に受け入れられるかどうかは、まだわからない。まだまだ知名度は低い。だからこそ、これからはどこまでセプトを広め、登録数を伸ばし、いかにしてセプト内でのコミュニケーションを促進できるかが鍵となるだろう。

今泉さんはセプトにおけるゴールを次のように設定した。

「元々はマンスリーマンション事業内のネットワークツールとして使えればそれでいいかなと思っていました。なので、すでにゴールには辿り着いているのかもしれません。ですが、せっかく誰でもメッセージを発信できるSNS機能があるので、ユーザーと一緒に新しい住文化を創り出せればいいなと思います」

マンスリーマンション事業に続き、セプト事業でも不動産業界のインフラとなることができるのか。今泉さんの新しい挑戦が今、始まろうとしている。

(Hello News編集部 鈴木規文)

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