• facebook
  • twitter
  • line

COLUMN

コラム

2018.08.23

インタビュー

マンションデベが挑むホテルビジネス

このエントリーをはてなブックマークに追加

マンションデベロッパーのコスモスイニシアがホテル事業に乗り出している。今年2月に1棟目をオープンさせ、わずか半年で開業予定は20棟を超える。新規事業にスピードは欠かせないとはいえ、この早さには目を見張る。宿泊事業の責任者で執行役員兼コスモスホテルマネジメントの社長を務める藤岡英樹さんに話しを聞いた。
(インタビュー日:2018年8月6日)

 ──ホテル事業に参入したきっかけは?

ホテルをやる、というよりも、これから確実に増えていくインバウンドの市場を見据えたとき、「コスモスイニシアの強みを生かして何か事業をできないだろうか」というところが出発点でした。ですから、最初のうちは民泊も含めて検討していました。

事業性や将来性などを考えていったとき最終的に着地したのが、旅館業法でのホテル事業でした。2015年の春くらいから動き始め、その年の夏には土地を買い始めました。

 ──2018年2月に1棟目となる「MIMARU東京 上野 NORTH」がオープンさせ、わずか半年で20棟を開発中です。新規事業にスピードはつきものとは言え、なかなかの実行力です。

2020年までに30棟1,500室をオープンさせる計画ですから、あと10棟分の土地を近々に手当てしていく予定です。今週末の8月10日には上野で2棟目の「MIMARU上野EAST」がオープンし、9月には、「MIMARU上野稲荷町」がスタートします。新規事業は他の会社がやっていないこと、業界にないものを商品化して打って出ることですから、立場のある人間がグワーと動かさなければ前に進みません。

すでに20棟分の開発用地を取得済みですが、どんどん土地を買い始めた3年前、まだ1棟も稼働していなかったので、これで予約が入らなかったら大変だ、という思いはありました。しかし、それでも推し進めることができたのは、「絶対にニーズはある」という確信があったから。山手線に乗っても、街中を歩いていても、家族連れの旅行客がたくさんいる。この人たちの泊まるところが必要でないわけがないと思いました。

 ──通常のホテルでは珍しい、「40㎡、多人数対応」が特徴です。

コンセプトは、「旅先で暮らすように滞在する」です。主なターゲットは家族旅行で日本に来るファミリー層。実際、宿泊者を見ると、7〜8割はファミリーで、小学生やベビーカーに乗ったお子さんを連れているご家族が目立ちます。大きい子供で高校生くらいまで。こういった家族連れは、一般的なホテルだとツインをふた部屋取ることになり、別々の部屋になってしまいますが、弊社のホテル「MIMARU」であれば家族全員が同じ部屋に泊まることができます。

レストランの併設はなく、朝食サービスもありません。食事は室内で作ることもできますし、出前を取ることもできます。各々自由。

我々も海外に行くとコンビニで売っているものを面白がって買ったりしますが、日本に来ている旅行者も同じです。「アニメの主人公が食べていたおにぎりはこれか!」といって喜んで食べていますね。

 ──需要があるなら、なぜ既存のホテル業界は「多人数対応」の部屋を作ってこなかったのでしょう。

あるホテル業界の専門家の方から、「このタイプは絶対に失敗する。辞めたほうがいい」と言われました。「そこには明らかに市場がない。だからホテルはツインやシングルしか作ってこなかったんだ」とも。私たちが対象にしている家族連れ旅行者の層は、これまでのホテル業界が対象にしてこなかった層です。それはそのくらいのボリュームしかなかったからだと思います。

ほんのすこし前までインバウンドが全体に与える影響はとても小さくて、見過ごしていい程度だった。しかし、ここにきて急速にその層が拡大しました。ホテル業界としては、そういったニーズが広がっていて、家族が二部屋に分かれて泊まっているという実態をなかなか理解できなかったのではないかと思います。

 ──「MIMARU」は、御社で保有するスタイルですか。

所有して、一定程度稼働後、投資商品として売却する、または土地やビルを持っている方の有効利用として稼働させ、それをコスモスイニシアが借り上げて、グループ会社のコスモスホテルマネジメントで運営するかの二本立てです。コスモスホテルマネジメントは、ホテル運営の会社として2017年10月に新設しました。

実は、すでにほとんどの物件が売却済みで、大手企業が資産運用として購入したり、投資家の方が買ったりしています。当初、1年分くらいの運用履歴がなければ売れないだろうと思っていましたが、実際にはオープン直後からどんどん購入希望の方が現れました。

 ──分譲マンション事業を主体としていきたコスモスイニシアだから発揮できた強みはありましたか。

もともと土地を買って開発して販売する会社ですから、売り土地の情報が入ってきやすく、話をまとめていく能力、プランニングするスピード力があります。また社内にはプランナーや建築のことがわかる人間が大勢います。

完成後、モデルルームを見にきたホテル業界の方々からよく、「どこのデザイン事務所を使ったのですか」と聞かれましたが、デザインを考えたのも全て社内の人間。

「わざと住宅っぽいデザインにしているのでは?」とか、「どうやったらこんな風に家にいるような雰囲気になるのか?」とか問われましたが、われわれとしては、マンションを中心にやってきたわけで、一生懸命ホテルを作ろうとやったらこうなったという感じ。マンション主体できたことがいい方向に振れたと思います。

 

 ──都心部を中心に土地の価格が高騰しています。新しいホテルもどんどん建っている中で仕入れでの苦労はありませんか。

今のところ開発地域は、東京、京都、大阪としています。都心型で、土地の面積にすると平均100坪くらい。これは、ワンルームマンションと同じ規模になります。もし、一般的なファミリー型分譲マンションを作るとなると、やや狭くマンションとしての価値は出しにくい。このため、分譲マンションの会社と競合になることはほぼありません。稀にビジネスホテルの開発業者と競合することはありますが、ビジネスホテルの場合、150室から200室ないと効率化しにくく、狭い土地には手を出したがりません。「MIMARU」にとってちょうどいいサイズの土地は、マンションやビジネスホテルのそれと異なるため、結果的に土地の情報量は多いと言えます。

ファミリー層を対象としているため、空港から一本のエリアのニーズが高く、今後も仕入れは都心部が中心になっていくと思います。小さなお子さんがいる場合、荷物も多いですし、ベビーカーを押し、子供の手を引きながら電車を乗り継いで移動するというのは本当に大変ですから。

 ──新築が多いようですが、既存ビルのリノベーションもしていく予定ですか。

第1棟目の「上野NORTH」は、すでにあったビルを有効活用してできたものです。2棟目からは全て新築ですが、新築にこだわっているわけではありません。ただ、既存のビルを生かしてやるとなると、エレベーターとか窓の位置とかを考えながら設計していく必要があり、その辺りで苦労が伴います。

 ──集客はどのようにされていますか。

自社サイトと、OTAで集客しています。普通のお買い物と同じで、旅行者はOTAの口コミや評判をみて予約します。

やってみてわかりましたが、予約サイトにポンと出しても予約はなかなか上がってきません。中央区だけでもホテルは100棟以上、東京だと1,000棟以上出てきます。新築は一番下に表示されますから、まず誰も気づいてくれないところからスタートするわけです。口コミが増えてきてやっと上位に表示されるようになるのですが、「MIMARU」の場合、結構口コミが多くて有り難いです。

「子供の日にお菓子をもらった」とか「目の前を電車が走るのが見えて子供が喜んだ」とか。ついこの間までモデルルームでマンションを販売していた人たちが接客するため、お子さんが喜ぶ工夫を自分たちで考えながらやってくれているのも、いい口コミに繋がっています。

 ──ホテルの場合、通常、稼働率は、初月3割目標で、1年くらいかけて7割くらいに持っていくと聞きますが、「MIMARU」の稼働率はどれくらいですか。

稼働率は、月によって変動しますが、8〜9割です。初月から8割稼働した物件もありました。金額は、一部屋で平均3万前後。

初めて「上野NORTH」を出した時、たまたま近隣に4人以上で予約できるホテルがなかったようで、4人とか5人とかで検索するといきなり1ページ目に出てきて、予想を上回る反響となりました。

一方で、小さな子供さんや高齢の祖父母を連れた家族旅行の場合、地震や豪雨など自然災害が起こると途端にキャンセルが増えます。子供がいることでより安全志向が強いという傾向があります。

国籍別に見ると、中国、韓国からの旅行者は5%くらい。圧倒的に多いのが台湾・香港です。これらはプロモーションの成果で、特に台湾・香港に向けてアピールしようと、現地メディアに取材に来てもらったりしました。こういった活動は従業員の採用にも役立ち、「台湾で有名なMIMARUの従業員になりたい」と言って応募してくれたスタッフもいました。

 

 ──これから先、日本の観光産業が盛り上がっていくためには何が必要と思われますか?

2030年に6,000万人を実現するには、飛行機の便も増えないといけないでしょうね。羽田・成田がいっぱいとなると、地方空港での乗り入れが増えないことには日本に来たくても来られないという人も出てくるでしょう。

英語や中国語のインフォメーションも少ないと感じています。例えばお寺や神社に行っても、外国語の説明がほとんどない。何年くらい前に、どういう思いで建てられたものかが、わからない。これでは魅力も何も伝わりません。

 ──日本が観光立国となるために、御社としてどういった活動をしていきたいと思いますか。

まずやれることは、スタッフがお客様に明るく対応すること。弊社のスタッフは、日本人と外国人の割合が1:9。例えば「MIMARU東京 赤坂」では、スタッフ全員が外国人です。彼らと話している時、日本の接客にしっくりきていないと言うので、みんなでどうあるべきか話し合い、自分たちのやり方で接客をしてみたらどうかと言いました。

そうしたらみんなとってもフレンドリーになっていって、どんどんお客さんに話しかけていく。お客さんとしても無駄話をたくさんしてその中から情報を得たいと思っているわけで、とても明るい雰囲気が出来上がっていきました。

OTAのスタッフ評価を見ると、9.5ですごく高いんです。これが「MIMARU」の強み。また日本に来たいと思うお客様を増やしていけたら嬉しいですね。

 ──今後の展望を教えてください。

1棟稼働させるごとに改善を繰り返していています。清掃の動線、リネンの動線がわかって来ると、また次からそれをフィードバックしてプランの見直しをします。家具の見直しもしょっちゅう。未だに正解はありません。

その時の様子を見ながらですが、今後は、地方都市へも出て行くかもしれません。エリアによっては商品形態を変えることも検討しなければならない。これからさらに増え続けるインバウンドの宿泊を支える企業として、足元を固めていきたい。

(Hello News編集部 吉松こころ)

このエントリーをはてなブックマークに追加
ページトップへ戻る