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COLUMN

コラム

2018.11.15

ルポタージュ

「人が人間に戻れる街・ポートランド」で気づいたこと(前編)

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社長「10月22日から28日まで、予定空く?」
わたし「は、はい、何かありましたか」
社長「ポートランド行って欲しいんだけど」
わたし(心の声)「えっ、それどこ?」

こんな会話をしたのは出発の2週間前だった。

全米で住みたい街No.1と言われるポートランドを5泊7日で視察する、日本賃貸住宅管理協会主催「アメリカ賃貸管理業視察ツアー」に、私、ささき三枝は参加した。賃貸業界に強いウェブメディア、ハローニュース社にアルバイトとして入社したのは、わずか3カ月前の今年の7月。賃貸の「ち」の字も知らず、取材だってほとんどしたことがない。加えて、毎年このツアーに参加する方々は、全国の管理会社、仲介会社から抜擢された、不動産のプロだという。

「大変なことになった・・・」

ポートランドは、「全米住みたい街No.1」(出典元:グリーン・シティー50傑)だという。それだけではない。「人が人間に戻れる場所」だと評されているらしい。

「そうか、もしかしたら社長は、私に人間に戻れと言っているのか」

そんな不埒(ふらち)な動機から、私のポートランドへの旅は始まった。

ささき三枝
広島県広島市出身。本業は、女優・歌手。
22歳で上京。一人暮らしを謳歌してきたが、昨年11月、突如、広島の実家を売り払い、埼玉へ移住してきた父77歳、母75歳と暮らすことに。十数年ぶりの親子3人での生活は苦労の連続。実家ロス、老後問題、介護、相続、親子関係、などなど、次々勃発する問題に頭を悩ます日々。そんな夢破れたアラフォー独身女の日常は、ブログで綴ることでストレスを発散している。

Blog「ささき家のみなさーん、きっと人生これからじゃない?」

「よーし、隅から隅まで見てくるぞ!!」

2018年10月22日、われわれ一行は、ポートランド国際空港へ到着した。直行便で約9時間ほどのあっという間のフライトだった。

ポートランドの市街地に入って、最初の印象は、「人が、少ない」。 

全米一位に選ばれるだけに、人がわんさかいるとばかり思っていたら、予想に反して、ホテルがあるダウンタウン周辺でも人はまばらだ。

ポートランドは、オレゴン州最大の都市である。日本の本土と四国を合わせたくらいの広さがオレゴン州のサイズ。そこに埼玉県の人口(732万2,645人)の約半分弱の人たちが住んでいる。人口密度の低さを考えたら、人がいなくてひっそりした印象を受けるのは、あるいはあたり前なのかもしれない。東京の人混みに慣れてきた私の方こそ異常だ。慣れてくると、この少なさに居心地の良さを感じるようになる。

ポートランドだけで見ると、人口は63万人。広さは、横浜市より小さいくらいだ。(ちなみに横浜市の人口は、374万1,765人・平成27年国勢調査)

日中の気温は、18度で、思っていたより肌寒い。

緯度は、北海道の稚内と同じ(緯度45.40)だから、これも当たり前。しかしながら、地中海性気候のため、また、ハワイ周辺から太平洋を北上する暖かい黒潮の影響で、真冬に一日中氷点下になる日は、平均して4日間しかないという。逆に夏場でも、32.2度を超える日は、平均11日程度で、ポートランドで、エアコンを備えている家は全体の1割にも満たないと聞いた。雨も多いと言われているが、年間総雨量は、940mmと東京よりも少ない。

日本を思わせる光景が飛び込んできた。もみじ、松、ナンテンの木。

「そういえば売却した広島の実家に、ナンテンと松の木があったなあ」

急に懐かしさが込み上げてきた。家族みんなで話し合って、やっと手放す決心をした、思い出の詰まった実家だった。

「あれっ、ここって、アメリカだよね?!」

オレゴン州は、23の日本の自治体と姉妹都市関係を結んでおり、親日家が多いことでも知られる。中でもポートランドと札幌市の関係は、1959年からと古いそうだ。住んでみたいと思わせてくれる理由が、どんどん出てきそうで、心が弾んできた。

ポートランドの街づくりを学ぶ

ポートランドは、街づくりの成功モデルとして、世界中から注目を集める街として知られている。その理由をいくつか見ていきたい。

①街づくりは、道づくりから

「ポートランドの建物って、歩道に面している部分は、ガラス張りになってるみたいよ」

ポートランド出発前に聞いたことで、もっとも印象に残った言葉だ。

実際に歩いてみると、

本当にガラス張りで、あっちもこっちも中がスケスケ。

お店の人と目が合うと、微笑みかけてくれる。

「マジでいやされるわぁ」

埼玉で仮住まい中の賃貸マンションは、すれ違っても、挨拶もしない人も多い中、これぞ、コミュニケーションと思わせてくれて、嬉しい。

これが、以前の悪い例。

このように圧迫感のある壁は、街の景色を楽しめず、何より、街の活気を失わせてしまうとして、ポートランドでは、一階の歩道に面した部分は、ビルを新築したり50パーセント改修したりする際、必ず店舗を誘致してショーウインドウにすることが義務付けられている。

このため、歩くだけで常にウィンドウショッピングをしているような楽しみを感じられるのだ。

また、街がコンパクトに設計されていることも特徴だ。

ニューヨークなど、アメリカでは、だいたい1ブロック(一区画)が120メートルくらいあるのに比べて、ポートランドではその半分61メートルに定められているため、景色の変化を感じられて、とても楽しい。街の区画は碁盤の目になっており、長い時間をかけて街が整備されてきたことが伺える。

また歩道が広く作られており、至る所にベンチが置かれている。そして必ずと言っていいほど、大きな木が植えてある。これは、景色を綺麗にしたいという目的以外に、夏の暑い日でも、木陰を作り過ごしやすいようにという意図があるという。

②街づくりのテーマは「ミックス」

ポートランドの特徴を表すキーワード、それは「ミックス」だ。

住宅やオフィス、商業施設などを別々に配置するのではなく、一つの建物に混在させている。

例えば、一階にレストランなどの商業施設、上の階にオフィスや住居を配置するといった具合だ。こうすることで、昼夜を問わず街が賑わうようになっている。

日本における高齢者ドライバーや孤独問題を考えると、「こういう構造の建物が増えてくれると、車で遠くまで行かないで済むとか、そこにいる人たちで助け合って生活できるのかな」など、親の介護に疲れ気味の私は、ついつい考えてしまう。

この仕掛けによって、24時間、人の流れが絶えない街になった。それがセキュリティーの面においても絶大な効果を発揮している。昼間は、お店が開店しているため人が集まり、夜になると、お店は閉店するが、住人が帰ってくるため暮らしの明かりが灯る。常に光があり、安心感のある街になった。

ポートランドが、なぜ、このように「人」にとって住みやすく、そして、街づくりの見本となってきたのか。そこには、人々の「自分たちの街は、自分たちで作る」という考え方が定着していることが理由に挙げられる。

第二弾においては、その「市民参加型」の実例を紹介する。

(Hello News編集部 ささき三枝)

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