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2018.11.29

♯賃貸経営

ホームステージングで住みたくなる部屋に大変身

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海外ではすでに一般的

「ホームステージング」をご存じだろうか。聞き慣れない人も多いかもしれないが、近年、注目を集めている。一般社団法人日本ホームステージング協会によると、「ホームステージングとは、快適な住まいと暮らしを実現するための様々な問題を、専門知識と技術で解決し、住まいの価値や暮らしの質を高めること」と定義されている。

具体的には、部屋を貸したり売ったりする時に、モデルルームのように演出し、家具や小物を配置することで、内見に来た人が新しい家での生活をイメージできるようにすることである。ホームステージングは1970年代にアメリカで始まり、急速に普及。今では、アメリカのみならずヨーロッパやオセアニアなどでも行われている。

コスパに優れた空室対策

日本の賃貸住宅業界でもここ数年、空室対策としてホームステージングの費用対効果の高さが認識されるようになりった。「ホームステージング白書2018ダイジェスト版(ホームステージング協会)」によると、賃貸住宅のオーナーがホームステージングにかける費用は、平均6万8,337円と家賃の約1カ月分だ。その効果を見ると、ホームステージングを実施しなかった部屋の平均空室期間が91日だったのに対し、実施した部屋の平均空室期間は平均33日と、およそ三分の一の期間で入居が決まっている。

何もしなければ3カ月程度空室になっていた部屋が約1カ月で成約したという事実を踏まえると、家賃1カ月分の持ち出しを加えても、おつりがくる計算になる。さらに、ホームステージングを実施した部屋の家賃は、平均1,300円ほど上がっており、その上で短期間で成約したことを考えれば、コストパフォーマンスは高い。また、家具や小物類は1度揃えれば、ほかの部屋でも使い回すことができる。また、プライベートで使っている家具を使えば、費用をかけずともホームステージングができてしまう。

とはいえ、空室対策というのはあくまでもホームステージングの効果のひとつ。冒頭でも述べたように、住まいの質や暮らしを高めることが本来の目的で、賃貸経営全体で考えれば、日頃の手入れや入居者とのコミュニケーション形成もホームステージングに当てはまる。

アパートを中心に91戸の賃貸物件を所有する林浩一さんは、2012年からホームステージングを取り入れている。

「家具や小物を使い、自分で空室をデコレーションしています。当時はホームステージングという言葉がなかったので、モデルルーム化なんて呼んでいたこともあります」(林さん)

ホームステージングをするようになってから、募集開始後1~2週間以内で入居者が決まるようになったという。最初は自己流で始めた林さんだったが、今では知り合いのオーナーからホームステージングをしてくれないかと依頼されるほどの腕前になっている。

ターゲットを絞りテーマを決める

林さんのように自分でホームステージングできるのであれば苦労はしない。しかし、中には「自分にはインテリアのセンスがないからできない!」というオーナーもいるだろう。そんな時はプロに頼むという手段もある。

賃貸専門にホームステージングを行っているビーシーシー株式会社(東京都港区)は、2017年4月に家具のレンタルとホームステージングをセットにした「MIL-SUM」というサービスを立ち上げた。サービス開始以来、120件のホームステージングを手がけてきた。

同社のルームスタイリスト、森山由佳さんは「万人受けする中性的なコーディネートだと誰にも響きません。まずはターゲットを明確にし、それに沿ってお部屋のテーマを決めるのです」と、コツを紹介する。

ホームステージングの依頼を受けると、まずは「女性が多い物件ですか」「この立地ならこういう方が入居しやすいですね」といった具合にオーナーへの聞き取りを重ね、テーマを絞り込んでいくという。テーマが決まったあとは、森山さんが設置する家具や小物をコーディネートする。ワンルームの場合、家具レンタルと設置・回収費用込みで6万円(3カ月)だ。

ポップで想いを伝える

「私たちのサービスの強みはホームステージングと併せて、お部屋のセールスポイントを書いた手作りのポップを用意していることです。ポップの他に『未来のご入居者様へ』と題して、この街に住むとこんな良いことがありますよという風に、物件以外のことを伝えるメッセージボードも作成しています」(森山さん)

依頼者は長年空室に悩むオーナーが多いが、8割はリピーターになるという。リピーターの場合、空室が出る度に依頼してくる人や、新築物件ができる度に早く入居者を決めたいからと、完成早々に依頼してくる人もいるという。

ホームステージングの良いところは、費用をさほどかけなくてもアイデアと工夫次第で、気軽にできることだ。ひと手間かけるだけで、その後の反響に大きく差が出ていることは統計からも明らかで、これを活用しない手はない。どんな人にどんなふうに住んでもらいたいかを考えてホームステージングをすることで、無機質な部屋から心に響く部屋に変えることができるのではないだろうか。ここに住みたいと思わせるスパイスとして、ホームステージングを取り入れてみてはどうだろうか。

(Hello News編集部 須藤恵弥子)

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