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2018.12.13

♯海外取材

「人が人間に戻れる街・ポートランド」で気づいたこと(終編)

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住まいにおける「Keep Portland Weird」

このアパートも、約70年以上も前に建てられた、かなり古い建物をリノベーションして賃貸物件になった建物だ。

エントランスの様子は、まさに、「Weird」という感じだ。

動画に出てくる外国人は、このアパートの「オンサイトマネージャー」だ。

自分で飾りづけしたというハロウィンの説明に夢中で、なかなか視察が進まない(笑)

オンサイトマネージャーとは、その賃貸物件の全てを任されていると言っても過言ではない立場の人で、入居希望者への物件案内や賃貸借契約の締結、家賃の受け取り、建物の点検、クレーム対応など、広範囲にわたって業務を受け持っている。

というのも、アメリカでは、日本でいう仲介業者は、ほとんど存在しない。

代わりに、物件ごとにいるオンサイトマネージャーが、この役割を担う。

オンサイトマネージャーには、こんな立派な部屋も与えられている。

オンサイトマネージャー次第で、その物件の価値も決まると言ってもおかしくはない。オーナーからの信頼も厚く、現場のことがよくわかるので、クレームの対応なども早く、事が大きくなる前に最小限にすることも可能だという。

どんな人でも受け入れてくれる

ポートランドは、アーティストからとっても人気のある街だ。

それもそのはず!地元からアーティストを育成するという目標が掲げられ、公共事業の総予算の2パーセントは、芸術に当てるという決まりがあるのだ。

「こういうアートが街の中にあると、それだけで楽しいでしょ?これも街づくりの一環なんだよね」と嬉しそうに話す谷田部さん。

街全体が、芸術の必要性を訴えているというのだ。

「売れない時代でも、なんかこの街ならがんばろうって思えそう……」(芸歴10うん年のささきのつぶやき……)

都市部の中心地、特に、5番街と6番街の広い歩道には、多くのアーティスト作品を目にすることができる。

「芸術って、表現することも大事なんだけど、それと同時に、こうやって応援してくれる人がいて初めて成り立つもの。それが、街に応援してもらえるなんて、それだけで心強いだろうな〜」としみじみ。

芸術家が増えた理由も、「変わり者」を受け入れる風土が浸透しているから。芸術家たちが生きていくのに居心地がいい環境が、ここにはある。

そしてもう一つ目に飛び込んできたのは、障がい者用のマークや、障がいを持った人々が困らないような設備だった。

これは、どういうものか、まずは動画をみていただきたい。

これがあることで、車いすの人や、歩行器を使う人は、自立して外出したりできるようになるという。自分の力で外出できるとなると、それが嬉しくなって、どんどん外の世界へ出ようとする。

障がいがある人、高齢者は、楽にいけるお店を優先的に探す。

それで、店を決めると行っても過言ではない。私は、母が歩行器を使っているので、その感覚はよく理解できていると思う。

トレイが広いとか、扉が軽い、とか、もちろん、ご飯が美味しいも、重要だけど。

「日本には、ないよな〜」。これもまたしみじみ。

調べてみると、オレゴン州の18歳以上の全体人口は、約288万人と言われており、そのうち、18歳以上で障がいのある方の人口は、約80万人と言われており、およそ3分の1に値する(参照先:U.S. Department of Commerce2014 Annual Report on the Health of Oregonians with Disabilities)。

アメリカの中でもオレゴン州は、障がいのある方が多いと言える。なぜかというと、オレゴンの障がい者支援者の知識や技術が、高く維持されていることで、支援レベルが高度に維持され、近隣地域から移住してくる障がい者の数も多いからだ。当然、障害者の方への理解も深い。

障がい者も高齢者も、特別ではなく、この街に住んでいる健常者となにも変わらないよという気持ちが伝わってくる。

何事においても、この「特別な感じがしない」というのが、ポートランドの特徴だ。

全米で住みたい街No.1と言われるからには、これだ!!という大きな理由があるのかと思って訪れたポートランドだったが、「特別」には、見当たらなかった。

他と違っていいじゃないか!変わり者でいよう!と言っても、そういう場所や人が強調されているわけでもなし。

どういうことなのか?!

ツアー中は、正直、ピントこなかった。

ありのままでいいじゃないか、自分が楽しいと思うこと、心地よいと思うことをやろう。

その風土が「他とは違う個性」になり、それが、本来の人間としてあるべき姿なんじゃないかと、日本に帰って、記事を書いているうちに気が付いた。

私は、昨年広島の実家を売却し、上京した両親と同居を始めた。今、3人で都内近郊の賃貸住宅に仮住まいをしている。

この一年、どんな街に住むことになるのかと、模索し続けた。

ポートランドで感じた「この街に住みたい」と思えるような場所にいつか私も出会いたい、帰国後、静かに、そして強く思った。

今回、このツアーに、素敵なメンバーの方々と参加できたことにも感謝の気持ちでいっぱいだ。

(Hello News編集部 ささき三枝)

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