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2018.12.20

♯賃貸仲介・管理

賃貸管理もプロにアウトソースの時代

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人材不足は賃貸管理の現場でも深刻な課題だ。そんな中、管理の実務を請け負うプロ集団が登場した。賃貸管理の酸いも甘いも知り尽くした全国賃貸管理サポートセンターの伊瀬知晃社長に話を聞く。

繁忙期の人手確保も自由自在

「募集しても人が来ない」
「せっかく一人前になったのに引き抜かれてしまった」
「新卒採用をしたいけれどできない」

賃貸管理の現場では、よく耳にする会話だ。

経営者が口を揃えて言うのは、

「賃貸管理はクレームが多くて若い子ほど耐えられない」

そんな悩みを解決するのが、全国賃貸管理サポートセンター(福岡県福岡市)だ。2015年11月に設立し、賃貸管理の事務業務のアウトソースを専業で行う賃貸業界でも珍しい業態の会社である。社長の伊瀬知晃さん、部長、そして契約登録、更新業務の責任者である4名を除き、スタッフはすべて女性。正社員や契約社員、パートなど契約形態の異なる48人の女性たちが管理事務全般を担っている。

伊瀬知さんは、「ここ数年、保証業務やコールセンター業務のアウトソース化が進む中で、業界内の“アウトソース”に対する抵抗は低くなってきています」と語る。

とはいえ、場面ごとのアウトソーシングと異なり、管理業務をまるっと外部に委託するとなると話は別。

「賃貸管理会社は全国で3万社あると言われていますが、『事務業務のアウトソースができる』ことに対する認知と理解はまだまだ低い」と明かす。

特に管理戸数が5,000戸以上の比較的規模が大きい会社ほど、社内体制はある程度できあがっているため、事務業務をアウトソースするという発想はない。

このため同社に問い合わせをしてくる企業は、社内体制が未整備だったり、管理に人手をさけられないところが多い。

実際のところ、同社ではどのようなサービスを提供しているのか。

主に大きく5つの業務の受託している。
1、入力
2、契約
3、経理
4、更新
5、精算

とりわけ反応がいいのは、「契約」だ。

賃貸営業担当者に契約書を作成させなくてもよいと考えている経営者は多い上、もともと契約書作成部隊と営業とを別にしている企業も多い。「できる人がすればいい」という考えで、契約はアウトソースしやすい分野なのだ。

全国賃貸管理サポートセンターがカバーする業務は、上記の通りだ。

「いきなり全ての業務をアウトソースされる管理会社はありません。メリットを感じやすい業務から段階的に依頼してくださっています。お互いに社風や管理物件の内容を理解しながら、少しずつ代行業務を拡大していく方が、長い目で見た時上手くいくと感じています」(伊瀬知さん)

実は、伊瀬知さんは九州最大手の賃貸管理会社、三好不動産で管理と仲介の責任者だった経験を持つ。

また、同社では設立と同時に三好不動産が管理する3万戸の賃貸物件の管理事務を受託している。このため、社員全員が管理実務関する知識やノウハウについてよくわかっているのだ。

利用する企業からは、「繁忙期を含め人の手配を気にしなくてよくなった」「月に1回現場担当者と経営層、管理センターの三者で管理の情報共有を行っているため、改善に向けて有意義な話し合いができている」など、満足の声が挙がっている。

管理実務にかかっていた人件費を削減できるだけでなく、人材採用や育成、さらには繁忙期の間のローテーションといったことから解放されるのも大きなメリット。

従業員が夜遅くまで残って事務作業をすることがなくなるため、残業が多かった管理会社からは「離職率は下がった」という声も挙がる。また、委託以前は、家賃の督促やクレーム対応をしていた社員が、外に出て行く営業やリフォームのプランニングなど前向きなを仕事を担当できるようになり、モチベーションが上がったという声もあった。

利用料金は管理戸数によって異なるが、全体集金額の0.5%~2%の費用が目安となっている。

休憩室にマッサージ機設置など社員待遇に一工夫

設立当初は、3社3万8000戸の管理物件を36人で担ってきたが、現在は5社4万5500戸を48人で請け負っている。このため、職場環境は工夫の連続だ。

一日パソコンの前に張り付く業務だということをかんがみ、服装は働きやすいものであればよし、としている。そのほか、「朝の100回スクワット」「休憩室にはマッサージ機2台」「オフィス内のお菓子、アイス、飲料、軽食などを完備」「観葉植物」「季節の置物」など、内勤者が多い会社ならではの取り組みをしている。

働いているスタッフは、契約社員やパートなど勤務形態は様々だ。出産や産休復帰なども当たり前。それぞれの事情に合わせた働き方で、各人が生き生きと働ける環境を作っている。シフト、休暇、残業管理は管理表を利用してきっちり行い、不具合が出れば早めに対応できるように、現状を正しく把握することを重要視している。

管理の仕事は裏方だが、ここではひとり一人の女性社員が光って見える。それは、大きな契約を決める営業が花形の不動産業界にあって、全国賃貸管理サポートセンターには、社員それぞれに誇りがあるからだと感じる。

営業や仕入れ担当が大腕を振るう不動産会社では、脇に追いやられがちな事務部門。しかし、どこまでもストイックに賃貸管理に向き合う同社の姿勢には、管理実務に対するプライドを感じる。

そして、まだまだその事業領域を広げていけるという可能性さえ感じるほどだ。

今後の賃貸管理業とは

賃貸管理業界は「紙」が多い業界。この「紙」こそが顧客にとっても企業にとっても手数を多くしてしまう原因になっている。

「顧客に対する利便性、満足度向上のために、新しい技術を積極的に導入していく必要もあります。今までのようなマンパワーに頼った体制構築では、当社自身もいずれ人材不足に直面していくことになるでしょう」と伊瀬知さんは危機感を込めて語る。

VR内覧、IT重説、情報のデジタル化、電子署名、RPA、OCR認識、AIなど、賃貸管理業にも十分に取り入れられるITソリューションは多々ある。「紙」からの脱却は必至であり、同社としては新しい賃貸管理業務の在り方まで提案できるような体制を作っていきたいと考えている。

「ITを活用し、サービスの魅力を高めていく必要があります。まずは現在のご利用企業様に満足してもらい、口コミで広まっていけばいいかなと思っています。賃貸管理業務は、アウトソースをする会社とアウトソースを受ける当社の2社が両輪でより良い形にしていかねばなりません。アウトソースしたからあとは丸なげ、ではなく、共に課題を洗い出し、解決することで一緒に発展していければと思っています」(伊瀬知さん)

(Hello News編集部 山口晶子)

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