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2019.06.27

♯連載♯お墓

お墓に入る相手を選ぶ時代。広がる死後の選択肢。

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生まれた土地で死んでいく。それが当たり前だった時代には、「先祖代々の墓」を一族で代々引き継いでいくことはそれほど難しいことではなかった。

しかし時代は移り変わり、都市部への人口集中や少子化高齢化、おひとりさまの増加などライフスタイルは著しく変化した。その結果、次世代へ墓を承継することが困難な時代に突入していった。

こうした昨今のお墓事情を、葬送業界に精通した終活コラムニスト、星なお美が4回に分けて紹介する。第2回となる今回は、現在のニーズに合わせた様々な種類の葬送方法について考える。

【著者プロフィール】
終活コラムニスト 星なお美
ライフエンディング関連企業のマーケティング部門に属し、マネージャーとしてメンバーの育成に従事。お墓や葬儀にまつわるデータを活用しながら、業界に精通した立場から女性独自の目線で日本の様々な終活事情に切り込む。

2児の母として子育てに奮闘する傍ら、終活関連コラムの執筆も行っている。趣味は家族旅行、旅先で墓地・霊園の見学をするのも楽しみの一つ。

「配偶者と一緒のお墓に入りたくない」と考える女性は約32%

「一緒のお墓に入ろう」

一昔前は、定番のプロポーズの言葉として浸透していた。死ぬまで一緒、死んでからも一緒。夫婦が死ぬまで添い遂げて、同じお墓に入るのはごく自然なことだった。

お墓に入る相手や、どのお墓に入るかは、法律やルールで定められているわけではない。ただなんとなくお墓は家族と入るものだと、昔から誰しもがそう認識していた。

しかし今、こうした伝統が覆されようとしている。

保険クリニックの調査によると、「夫と一緒のお墓に入りたくない」「知らない先祖と一緒に入りたくない」「ゆかりのない土地のお墓に入りたくない」と考える人は少なくない。実際、「配偶者と同じお墓に入りたいですか」という質問に対し、3割強の女性が「入りたくない」と回答している。

そんな現代において今、友人と共同でお墓を購入して、同じ墓に入る前提でお付き合いをする「墓友(はかとも)」という言葉が誕生した。

また、高齢者向け住宅や老人ホームの中には、共同墓地を建立する施設も増えているという。亡くなった後も気の知れた仲間と一緒の墓に入ることができる合同供養を志願する入居者も多い。

ペットと一緒のお墓に入る人が増えている

少子化が進行する中、今やペットの数は子供の数を超えている。ペットフード協会によると、犬と猫を合わせたペットの数は1979万頭で、15歳未満の子どもの数1600万人を上回っている。

昔は、ペット=(イコール)番犬だった。しかし時代は変わり、今ではペットが家族の一員として扱われるようになっている。そこで、ペットと人間が一緒に入れるお墓がほしいという声に応えるように、同じ区画に入れるタイプや、同じ敷地内に供養塔があるタイプのサービスなどが誕生するようになった。「ベイサイド三浦浄苑」 では、ペット供養塔は合祀で2万1600円から利用できることから、リーズナブルな金額設定になっている。

とはいえ、仏教の世界では、動物は「畜生」として生前に悪い行いをした者が畜生道に生まれ変わるという考え方があるため、十数年前までは人間と動物が一緒のお墓に入るなんて許されなかった時代がある。少子化が進み、ペットと暮らす人が増えたことで、お墓に対する考え方が大きく変わっていったのだろう。

お墓の形や色も自由自在。ハート型のお墓も

日本のお墓といえば、先祖代々の墓のような従来のお墓を思い浮かべる人が多いのではないだろうか。

お墓の形は和型、洋型、デザイン墓と大きく3つに分類される。

和型は石塔加工と呼ばれる日本のお墓の伝統的な形である。

洋型は和型と比べて幅が広く、高さが低いのが特徴で墓石に好きな文字を刻む人も多い。

デザイン墓は自分の好きな形にお墓をデザインしたもので、ガラスなど珍しい素材が使われる場合もある。墓石の色は、黒や白が一般的だが、緑、青、赤など、石の色も好みに合わせて選ぶことができ、ハートのお墓であれば120万円ほどで作ることが可能だ。

お墓の種類や購入する場所も変化

さらに、石のお墓だけではなく、樹木葬や納骨堂、宇宙葬や海洋散骨など新しいお墓が登場している。女性から支持が高い、樹木を墓標とした樹木葬は、里山型や庭園型、区画型などいくつか種類があるが、桜の木を用いたものや薔薇を用いたイングリッシュガーデンのような樹木葬などが人気を集めている。一般的に200万円ほどかかると言われる墓石を利用するよりも安く、相場は50万円程度だ。

また、都心部ではビル型納骨堂と呼ばれる自動搬送式納骨堂も新しいお墓の形として定着しつつある。駅から徒歩数分のアクセスの良い場所にあり、近代的な外観の建物が多い。受付で渡されるカードをかざすと、預けている遺骨が参拝所にスタンバイする立体駐車場のような仕組みになっている。こちらも相場は50万円~100万円程度で、墓石を利用するよりは安く済む。加えて、天候に左右されず参拝でき、墓掃除も不要なため年配の方にもおすすめしたい。

お墓の情報サイト“いいお墓”の調査によると、樹木葬や納骨堂など一般墓以外を購入する人の割合は増加傾向にある。

また、お墓を持つ場所についても、昔は住んでいる土地にお墓を持つことが一般的だったが、近年お墓を持つ場所にも変化が見られるという。

きれいな海が見える沖縄や思い出の温泉地、ハワイなど、リゾート地や観光地にお墓を作って、お墓参りと旅行を兼ねて出かけられる「リゾート葬」を選択する人が増えている。霊峰富士と海を臨める「ベイサイド三浦浄苑」では、2年前と比べて資料請求の数が295%増加している。

その他にも、遺骨を粉骨して、海に撒く「海洋散骨」や、アメリカではロケットを使って宇宙に散骨する「宇宙葬」、日本では成層圏で割れる風船を使って宇宙に散骨できる「バルーン葬」なども登場している。

骨になった後とはいえ、ハワイに永眠したり、宇宙飛行ができるなんて、想像するだけで胸が躍るのは筆者だけだろうか。慣行にならって嫁ぎ先や実家の墓に入るのではなく、死後も自分らしい在り方を選択できる時代が訪れたと言える。

(終活コラムニスト 星なお美)

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