• facebook
  • twitter
  • line

ARTICLE

記事

2019.08.01

♯賃貸経営♯講演・セミナー

管理会社の「働き方改革」を学ぶ②【ちんたい研究会】突撃ルポ

このエントリーをはてなブックマークに追加

ちんたい研究会(※)が主催する「働き方改革についての勉強会」が、2019年7月18日(木)、東京・八重洲のカンファレンスルームで開催された。

前回は8名の登壇者のうち、以下の2名のレクチャーを紹介した。
米澤社会保険労務士事務所/米澤和美・所長
(株)リクルート/野口貴広・執行役員

今回は、次の3名の講演を一部抜粋して紹介する。
(株)高知ハウス/和田英和・代表取締役社長
(株)Good不動産/牧野修司・代表取締役
(株)クラスコ/清水秀晴・常務取締役

前回の記事はこちら⇒管理会社の「働き方改革」を学ぶ①【ちんたい研究会】突撃ルポ

(※)ちんたい研究会について(ホームページより)
全国賃貸仲介管理業のちんたい研究会とは、賃貸仲介管理業の経営者の方を中心に有志を募り、先進的取組みを共有することを目的としたものです。会では、先進企業からいろいろな経営ノウハウや戦略・戦術を学ぶことに加え、地域・FCを超えた経営者間での『気軽に相談し合えるネットワークづくり』も大事な目的としています。ベンチマークの後、毎回親睦会を開催し参加者同士の交流を深めています。全国賃貸仲介管理業ベンチマーク会は、株式会社クレシオが運営しています。既に30回の開催実績があり、参加者数はのべ1,000名を超えるに至っています。

「管理職社員の大量離職」というピンチからの大逆転

株式会社 高知ハウス /高知市

管理戸数

約8,300戸

従業員数

80名

創業

1996年(平成8年)

改革の趣旨

ビジョン経営へ 企業風土・環境の見直し

改革のきっかけ

社員の大量離職(平成24年)

高知市で5店舗を展開し約8,300戸を管理する(株)高知ハウスは、先代社長の和田浅吉さんが銀行を早期定年退職し、故郷・高知で1996年に創業。4年後には子息である和田英知さんが大和ハウス工業(株)を辞めて入社し、2010年に先代と交代する形で代表取締役社長に就任した。第2期創業期が始まった。

しかし、その矢先の2013年、社員の大量離職に遭遇した。その数は当時40人いた従業員のうち12人、実に全体の30%にのぼった。しかもほぼ全員が管理職というから、打撃の大きさが伺い知れる。

ここで和田社長は、企業として生き残るため、「人財確保と育成」に開眼した。まず、それまで定めてなかった「経営理念」を約1年かけて社員たちと創った。社員一人ひとりがこの会社をどうしたいのか、というビジョンを描き、持ち寄り、全員ですり合わせる作業を繰り返した。当初は戸惑いも多い中、迷いながらも一人またひとりと想いのベクトルが合わさり、深い絆のようなものが生まれていったという。これによって、「家業」から「企業」へ、「経営者の会社」から「働く仲間たちの会社」へと大きく舵を取った。

それからは社員同士で仲良く互いを支え合う気風が育ち、社内結婚も4組誕生した。結婚後も女性が辞めずに、産休、育休を経て100%職場復帰するというから、帰属意識の強さがわかる。

大切なルールとして決めているのは、毎年社長が示す「今年達成したいビジョンとゴール」に対し、社員がそれを自分ならどのようにやってみたいか、どこにゴールを設定するのかを決めることだという。部署ごとにプレゼン大会を開催し、発表し合う。それは自分の夢や目的の実現、ひいては幸せの実現につながっている。それに対し、社長や上司が段階的に実現可能な目標を示す。社員は身近な目標に対して自分の長所を生かした役割を見つける。毎月の面談では社長や上司がティーチングし、成功体験へと導き、自信を育てる。

そして、達成できたら全社員で称賛する。毎年、社員の家族も一堂に集うパーティの席上で、社内「表彰式」を開催しているが、これも経営者が社員を表彰するのではなく、社員同士で表彰するという。このループがしっかり機能している証拠に、2013年に残った従業員数28名から、現在は80名となった(うち50名は女性)。

新しい社員採用の面談には、社員全員が参加し、積極的に採用に関わる。新入社員の入社後は、自ら選んだ人材のサポートに積極的に関わる仕組みになっているそうだ。

大量離職のあと、52名もの新社員が仲間に加わったことになるが、なるほど、その社員サポートも社員の手で行われているということだ。

このように、生まれ変わった企業風土のもとでは従業員満足が大きく育ち、今では社長と社員の月面談で「社内恋愛の相談」まで持ち込まれるというから、微笑ましい。

女性社員から社長に届いた手紙には、社長への感謝と「高知ハウスの社員でいられることがとても幸せ」と書かれていた、というくだりでは思わず目頭が熱くなった。

「IT導入」による画期的な業務改善

株式会社  Good不動産 /福岡市

管理戸数

約14,400戸 

従業員数

103名 ※全グループ

創業

2009年(平成21年)

改革の趣旨

IT導入による管理業務の効率化

改革のきっかけ

業務の複雑化・膨大化

(株)Good不動産の牧野修司社長からは、IT導入による画期的な業務改善に成功したことが報告された。

リーマンショックで倒産を経験し、民事再生で建て直した。その経緯から、それまでやってきたサブリースができなくなり、一般管理をやることになった。すると、募集から、審査、工事等のすべてをオーナーさんに相談、報告しなければならず、業務は複雑化・膨大化した。当初は、倒産を乗り越えようとするエネルギーがあったが、これが常態化してしまうのはまずいという危機感があり、業務改善に着手したという。

社長が掲げた改善ポイントは以下の4つ。
1.電話の問い合わせをなくそう
2.Faxやめよう 
3.二重三重の登録やめよう 
4.担当制廃止

仲介会社が電話をかけてくるのは、空室情報や特約を知りたいから、申込の審査がどこまで進んでいるかを知りたいから。要するにリアルタイムで「みえる化」されていないことが、コール数を増やしていた。

その数は繁忙期で一日あたり500件ほど。しかも物件ごとに情報が属人化していて、残業は深夜に及んでしまう。そこで、仲介会社の知りたい情報が一元管理できるサイトを作ろう!となった。サイト「GoWeb」の誕生だ。

次にFaxでの申込については、字がつぶれて見えず問い合わせ、入力してもキャンセルや審査落ちで3割ほどが無駄になる。ならば、はじめから仲介会社さんに入力してもらおう、という逆転の発想で電子申込に切り替えた。

また、保証会社、保険会社、インターネット取次会社等への登録もそれぞれ個々にやり、Faxを送っていたが、ひとつの登録情報データをそのままデータとして送ることで、入力ミスを撲滅した。

Webで情報共有できているので、ステイタスごとの担当は不要になる。パート社員であろうと、正社員であろうと、対応した者が例えば「内見予約」や「審査状況」などのログを残す。ログさえあれば時間外でも誰でもどこでも共有できるようにした。

「GoWeb」は、空室状況がみられるだけのサイトとしてスモールスタートしたが、いまでは契約書まではきだせる。仲介会社さんはいつでも申し込みできて、保証会社、保険会社さんともシステム連携でき、契約完了までスマートに進む。ここまできてはじめて、自社の基幹システムにRPAで書き込まれる。

見事なデータ連携によるペーパーレスだ。業務が大幅に効率化し、改善されたことは言うまでもないだろう。実際のところ、繁忙期でも電話がかかってくるのは1日100~150件程度。管理戸数が増えたことを加味すると、電話の本数はIT導入前の10分の1程度だ。Faxで申し込みがくることはほぼないという。

福岡で12,000戸、東京・大阪で2,400戸を管理する中、電子申込は福岡で100%達成し、東京・大阪でも今年から切り替えるという。この7年で管理戸数を8,000戸増やしたが、正社員は2名増員しただけだという。

夜間や休日は、万が一かかってきた電話に自動音声が対応する機能を追加し、時間外労働の元凶を廃除した形だ。

鮮やかな不動産TECの実例を聴かせていただき、胸のすくような思いがした。

「デザイン経営」を基にした組織風土の改革

株式会社 クラスコ /金沢市

管理戸数

約14,000戸 

従業員数

191名 ※全グループ

創業

1963年(昭和38年)

改革の趣旨

「デザイン経営」を基盤に組織風土の改革

改革のきっかけ

社員の大量離職(平成24年~26年)

(株)クラスコの清水秀晴常務からは、「デザイン経営」を基にした組織風土の改革で、独自の働き方改革を行っていることが報告された。

離職が相次ぎ、3年間で8割ものスタッフが入替となった状況で開催された幹部合宿(2014年)では、当時の会社が抱える課題を本音で語り合い、洗い出したという。

1.マネージャーのスキル不足、コミュニケーション不足など「人(教育)」の課題
2.休みが少ない、残業が多いなど「働く環境」の課題
3.マニュアルがない、ノウハウの共有がないなど「システム」の課題

課題として挙がった現象の下層には社員一人ひとりの心理面での問題(批判や無関心など)があり、その結果、組織は部門間の情報共有や連携等がなく硬直化、孤立化した状態になっていたという。

そこに変革をもたらしたのが「デザイン経営」の手法だ。

まず行ったのは徹底したリサーチ。業務分担表を作成し、一人ひとりの業務の可視化を行う。次に、業務の流れを図式化し、各個人がどの業務にどれくらいの時間を使っているのかをグラフ化。これによって「ムリ」「ムダ」「ムラ」が見えてくる。

それを丁寧にフォローする施策を練り、実行する。たとえば、業務ノウハウのeラーニング化など、デジタルシフトすべきところはする。また、社員とは面談で真剣に向き合う濃密なコミュニケーションを大切にする。こういうアナログ部分は絶対に必要だという。

そして、全員で共有すべきビジョンはビジュアル化し、ポスターにして社内に貼り出す。

これらの改革は、組織戦略として大きく実を結び、年間休日は33%アップ、残業時間は46%ダウン、集客は1.8倍、年間売上は30%アップしたという。

デザイン経営の根幹にある「デザイン思考」とは
これまでの課題解決方法は「マーケティングリサーチ」が重要視されていた。
それは「仮説検証型」のアプローチであり、市場やニーズについて調査した結果を分析し、仮説を立て検証し、それを元に製品開発などを行ってきた。
しかし、ニーズが多様化し変化の激しい現代では、この「仮説検証型」で問題の本質を捉える事が難しいケースも増えてきた。
背景として『VUCA時代の到来』がある。
Volatility(変動)…変化の質・大きさ・スピード等が予測不能であること
Uncertainty(不確実)…これから起こる問題や物事が予測できないこと
Complexity(複雑)…数多くの原因などが複雑に絡み合っていること
Ambiguity(曖昧)…物事の原因や関係性が不明瞭であること

「VUCA」とは、これらの頭文字を取った言葉。これは、現代の世界経済環境がこれら四つの要員によって極めて予測困難となっている状況を表す。

このような時代の到来により、人々のニーズなど課題の本質をスピーディーに分析できる方法が求められるようになり、ユーザー中心主義であるデザイン思考が注目されている。

画期的なアイデアやイノベーションを生み出す「デザイン思考」が注目されていることは耳にしていたが、その経営術の実例をつぶさに聴くことができた。

次回は、引き続き管理会社の取り組み例として、(株)宅都ホールディングス、(株)第一不動産、(株)コスモ不動産の各社について紹介する。

前回の記事はこちら⇒管理会社の「働き方改革」を学ぶ①【ちんたい研究会】突撃ルポ

(Hello News編集部 黒後登志恵)

このエントリーをはてなブックマークに追加
ページトップへ戻る