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2019.08.29

♯民泊・簡易宿所♯講演・セミナー

民泊ホストに中国人のママ友が多いワケ

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年間の出張日数が206日だった2017年、私は違法民泊に住んでいた。家は寝に帰るだけだったので、家具がつき、布団が用意され、テレビや冷蔵庫、洗濯機が完備されていた民泊は、好都合だった。

所有していたオーナーは、同時に3室の民泊を無認可で営業していた。築年数は50年を超えるという5階建ての建物だったが、銀座や築地が徒歩圏内ということもあり、28平米前後のワンルームで40万円以上の収益を上げていた。賃貸で貸せば月14万円というから、3倍近い売り上げになる。

初めてオーナーに会った時、こう言われた。

「儲かるんだけど、疲れた…」

3室の予約管理や掃除、メンテナンスのやりくりはかなり大変だったようで、3室のうち1室を、私が定額(しかも相場より安く)で借りることを許可してくれたのだ。

結果的に約2年、宿泊数にしておよそ750泊、違法民泊物件で暮らすことになった。その間、民泊新法の施行やいわゆる“エアビーショック”なども、民泊の近隣住民として間近で見てきた。

そんな民泊と浅からぬ縁ができてしまった私が、最近見聞きした民泊周辺で起きていることをレポートしたい。

1)民泊ホストには中国人のママ友が多い

今年3月、2年間の民泊暮らしで感じたことを話して欲しいというセミナーに呼ばれ、1時間ほど”すったもんだの暮らしぶり”を話したことがあった。聴講者の多くは民泊ホストで、皆熱心に耳を傾け、セミナー後の質問は、効果的な反響の高め方や清掃会社の選択方法など、かなり突っ込んだ内容が多かった。

驚いたのは、セミナー後の懇親会での自己紹介タイムでのことだった。参加した女性3人(30~40代)が皆中国人だったのだ。3人とも日本にやってきて25年から30年が経ち、配偶者は日本人。そのため氏名や顔立ちからだけではまったくもって中国人だとわからない。このうちふたりはママ友同士だった。

ホストになった理由を聞くと、「専業主婦だったのでおこずかいが欲しかった」という。

一人のママは、旦那さんに相談した上で家事をしっかりすることを条件に、転貸で民泊をスタートした。数年前は空室を載せれば埋まった時代。加えてゲストは中国人ばかりで、中国語でやりとりできることからゲストにも喜ばれ、次々と予約が入った。清掃や鍵渡しは自ら動いて行なった。収入には手をつけず再投資をしようと決めた。

一人で回せないほど忙しくなった時、保育園で知り合った中国人のママ友に声をかけた。現在3人のママ友で2室を運営している。収入は月およそ50万円。3分の1ずつ分けて、一人当たりの手取りは、約10万円だという。売り上げは3人とも使わずに貯蓄している。もちろん3室目の投資先を探しているからだ。

 ママ友たちは声を合わせていう。

「日本人はリスクばかり言い過ぎ。民泊経営のセミナーを聞きにいく日本人は多いけど、実際にはやっていない人が多いと思う。中国人はとにかくやってみようという考えがあるから、ホストをしている人は多いです。ローリターンだけど、ローリスクだと私たちは思います」

3人は、20数年前、日本にきた時驚いたことがあった。

それは「主婦」という言葉の存在。その当時の中国では、夫も妻も家族のために働くのが当たり前で「主婦」に該当する言葉がなかったのだ。日本人と結婚したら「主婦」になるという自分が想像できなかった。

加えて、幼い頃から「政権が変わると何もかもが変わる。平和な時にやれること、稼げることを考える」という癖がついていたことから、日本でインバウンド需要が日に日に高まっていく時勢を見た時、「民泊」は専業主婦でもできる仕事だと直感したと語る。

「中国人ママ友のホストは多いです。みんなきちんと許可をとり、真面目にやっています。最近清掃は外注するようになりましたが、中国人だと雑なので、日本人にお願いするようにしています。とても丁寧に仕事をしてくれます」

2)モデルハウスを民泊で運用!

ハウスメーカーのモデルハウスを民泊として解放し、収益を上げる方法のセミナーが開催されているというので参加した。全国に100ヶ所以上の常設展示場をもつ大手ハウスメーカーのスタッフ、地域密着型の工務店経営者など、約50名が集まっていた。

講師の一人、エアトリステイの取締役、澤畑勝章さんは「以前、Airbnbで東京が行きたい都市、世界一位になったことがあります。たくさんの旅行者が東京に来て、レストランや飲食街で美味しいものを食べます。その後にその方々が考えるのは、今度はその産地に行ってみたいということ。東京から次は地方へ、という流れが生まれています」と語り、日本各地で宿泊需要が高まっていると解説した。

モデルルームは販売を目的に建てられている、新築の1軒家。ファミリー旅行者にとっては、高級ホテルのスィートルームに泊まっているような感覚で旅行を楽しむことができるのだ。当然、宿泊費用の設定も高くなる。

参加していた大手ハウスメーカー勤務の女性は、「モデルハウスにお客さんがくるのは大抵土日か祝日。平日は使われていないことが多く、その遊んでいる時間と空間を活用することで収益が上がるなら、会社としても十分検討できるのでは」と話していた。

Airbnb Japan、執行役員の長田英知さんによると、2018年5月に6万室だった登録部屋数は、民泊新法直後、2万室まで落ち込んだものの、2019年6月現在では、新法施行前を上回る7万3000室に拡大しているという。最近では、ツタヤとの連携により、宿泊金額に応じてTポイントも貯まることから日本人利用者も増加しているそうだ。

オリンピックまで1年を切った今、まだまだ民泊マーケットは拡大まっしぐらのよう。そのプレイヤーも仕組みも日進月歩で変化しており、国内でどのような成長を見せるのか、まだまだ目が離せいないと言える。

(Hello News編集部 吉松こころ)

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