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2020.03.19

♯ボロビル再生

【新型コロナショック!】東京・池袋のボロビル再生請負人

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【筆者プロフィール】

山田武男
1980年横浜生まれ。茨城のニュータウン育ち。東京農業大学造園科学科卒。2004年に不動産業界に就職して以来、数社の不動産事業に従事。店舗、オフィス、ホテル等の事業用不動産を中心に、数十件の築古ビルを再生、運営に関わっている。築古ビルの空室に若手アーティストの展示場所として活用するイベントを18回開催するなど、ビル再生、地域への関与を模索し続けている。2019年4月、不動産会社(株)オリエンタル・サン設立に参画し、現在取締役。

ボロビル再生請負人の身の回りで起こっていること

新型コロナがニュースで騒がれて早や2ヵ月ほどが経った。連日メディアでの報道を見つつ、ネット上の意見などを散見するに、素人から見て、さほど心配する病気でもないように思える(重症化率、死亡率が低い)が、世界中の株価が大幅に下落しているところを見ると、いよいよ経済的な影響が出てきそうだ。

専門的な分析は専門家に譲るとして、私の身の周りで起きていることを散文ながら書き留めたい。

1.問い合わせ減少
オフィス募集の問い合わせが減っている。

2月と3月の同時期で、3月は2月の6割ほどの問い合わせ数だ。移転を予定していた法人が状況を見て、移転(増店)を一度見合わせたかもしれない、と想像している。

ただ、経済が悪い方向にいったとしても、縮小移転があるので、状況(上昇、下降どちらの局面でも)がはっきりすれば、また移転の動きが出ると思われる。

2.銀行の動き
知り合いの施工会社は政府の資金繰り支援の方針が出て以降、メガバンクが早速連絡してきた、と言っていた。

こちらから言わなくても数千万の融資を申し出たと言う。

3.飲食店の打撃

飲食店は影響が甚大だ。この1ヵ月で、筆者が参加予定だった飲み会のキャンセル数は数知れない。ほとんどが、「会社から不要不急の宴会は避けるように言われた」という理由からだ。

ただ、こうした緊急事態はさておき、筆者は昨年から飲食業界の異常を感じていた。理由は次のとおりだ。

①六本木のバー
店舗仲介の顧客である六本木の小さなバーのママから、この1年程相談に乗っている。数年前から、夜の街ではお金が落ちなくなっていると嘆いていた。

とくに2軒目、3軒目と飲み歩く風潮がなくなり、1店舗で済ます客が増えたとのこと。この店では酒のほか、フードメニューを充実させ、1軒目で飲んで食べて満足してもらえる店に転換したそうだ。

②酒屋の不況
昨年末に神田でキャバクラ店を経営していた会社から店を畳んだとの連絡がきた。筆者が賃貸していたのはそのバックオフィスだったが、この半年めっきりと客が減っていたという。この店の出入りの酒屋も、酒の出る量がかなり減っており、異変を感じていたという。

この会社の社長は飲食業から撤退し、別の事業に専念すると言っていた。

③店舗問い合わせ減
都内某所の店舗ビルオーナーから1月頃に相談を受けた。駅2分の立地で自主管理の店舗ビルを経営している。

路面階の募集で、オーナー名の募集看板を出しており、過去の募集では、問い合わせはひっきりなしに来る状況であったが、今年に限って問い合わせがほとんどないという。

筆者の経験上、オーナー直接での募集はなかなかないので、仲介業者やテナントの店舗開発担当などが色めき立ち、大変な人気になるのが普通なので、この状況は異常だ。

④銀座の店舗
銀座の飲食店の社長から3月に相談があった。コロナの影響で売上がガタ落ち、家賃減額交渉の相談に乗ってほしいとのこと。

聞けば100万円超の家賃を払っている築2年ほどの好物件。直近の景気は良かったので、減額交渉は難しそうだと判断された。

コロナ騒動が続けば、100万円超の家賃、従業員の給料などが毎月飛んでいくことを考えると、想像するだけでも恐ろしい。

4.宿泊業キャンセルの嵐

九州で宿をやっている仲間と2月下旬に電話で話した。3月はほとんどキャンセルだという。ちょうど九州で複数の感染者が出た頃だ。

しかも、昨年は韓国との政治問題で韓国人観光客がほとんど来なかったため、すでに各ホテル、旅館は売上が半減していた。そのうえ、他の外国人も減ったとなると売上は0に近づく。

仲間は緊急融資を申し込むと言っていた。

5.成田付近の不動産

成田の投資家と3月上旬に電話で話した。仲の良い不動産会社の近況を聞いたら最悪だという。

観光バス会社に物件を売る直前で、キャンセルの連絡が入ったらしい。成田空港からの外国人観光客を相手に仕事をする人の多い成田では、不動産の動きが止まり始めている。

6.工事業者への影響

知り合いの施工会社、管理会社など複数の業者から工事の悲鳴が上がっている。各メーカーの品が入ってこないのだ。

筆者自身も現在進めている工事があるが、トイレの便器が入荷しなかった(その後、なんとか在庫を見つけた)。

とくに影響が大きいのがエアコンだ。先日ワンルームマンションのルームエアコンを設置したが、業者によれば今のところ問題はないという。ただ、業務用エアコンは動きがストップしているらしい。

また、ユニットバスもなかなか入荷しないと聞く。とくに3月は原状回復の時期で、もともと需要がひっ迫しているため、ユニットバスの発注が取りやめになった現場もあるという。

前述の業者によれば、プラスチック製品は中国製が多く、例えば照明カバーなどが入荷しないことがあるという。本体だけ取り付けて、カバーだけ納品待ちという現場もあるそうだ。

今後を考える時期がやってきた

筆者が実際に耳にしてきた情報から、不動産、飲食、宿泊、工事業などの肌感覚は伝わったと思う。

とくに昨年から続いていた韓国人観光客の減少や飲食不況の影響は大きく、地方の小規模店はコロナの影響でとどめを刺された感があり、店主が高齢な店などは廃業を余儀なくされる店があるのではないか、との声も聞かれた。

すでに、新型コロナが落ち着いた後(かつ、東京オリンピック後)のことを考える時が来ているのかもしれない。

(ボロビル再生請負人 山田武男)

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