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2020.03.25

♯インタビュー

コロナショック緊急対談①「Jリートと金融市場これからどうなる?」

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コロナショック真っ只中の3月23日(月)、先の見えない相場先行きについて、株式会社不動産戦略研究所の西村明彦さんと緊急対談しました。
※本記事の内容は、オリンピック延期発表前のものです

西村明彦さん
1990年大学卒業後、山一證券を経て不動産会社、ファンド会社などで様々な職種を経験。2009年に商業用不動産コンサルティング専業の(株)不動産戦略研究所を創業し現在に至る。プロ間のブローカレッジと相続対策の助言を得意としている。

投資用ワンルームバブル

吉松
早速ですが、不動産の現場で起きていることを教えてください。

西村
新築マンションの販売現場では、3月7日、8日の土日までは、普段時間のないサラリーマン家庭の来場者が大勢来て、盛況の様でした。投資用ワンルームも品薄状態で、埼玉県西川口の新築マンションでさえ即販売完了したそうです。

吉松
住宅系は今のところ問題なしということですね?

西村
長引けば流石にどうでしょうか。他が全滅なのに対し、住宅セクターだけが好調維持とはいかないでしょう。収入が減る家庭が増えれば、家賃の滞納が増えるのではないかという声もあります。

吉松
投資用中古マンション販売をしている会社に先週聞いた話ですが、2002年に1280万円(21㎡/1階部分/都内文京区/一般的なワンルーム)を2050万円で業者が購入し、業者はさらにそこに500~600万円を乗せてエンドに売ったと言われていました。“ワンルームバブル”とも言われていましたね。今まで投資用不動産に関しての金融機関は、ジャックスとオリックス銀行のみでしたが、昨今、アルヒやイオン銀行などが参入したことで金利競争が起きた恩恵だとも。

西村
賃貸業界は繁忙期ですが、仲介の現場の話は聞いていますか?

吉松
賃貸仲介の動きは昨年より良いと聞こえてきます。ただ、動きが早くてとりあえず申し込みを入れないとすぐ決まってしまうと嘆く仲介店の人もいました。その分キャンセルも多くて、半分くらいの割合で「2番手」「3番手」が決まると。

西村
昨年の引越し危機で転勤予定者が滞留したのかもしれませんよ。

山高ければ谷深しのJリート

吉松
Jリート市場が心配ですね。

西村
株式市場よりも下落率が大きいです。指数は2月21日の「2255」から3月19日には「1138」まで、ちょうど50%の下落です。


引用元:日本取引所グループ 株価指数ヒストリカルグラフ-東証REIT指数-日足チャート

吉松
株式市場より谷が深い原因は何だとお考えですか?

西村
山高ければ谷深しの格言通り、Jリートに割高感があったのかもしれません。もっとも下げが極端なのは宿泊特化型リートで、物流、住宅系はさほどの下げ幅でありません。

吉松
今後の見通しなどありますか。

西村
タイミングが悪かったのが一番大きいかな…。Jリートは国債の代替として地銀、生保がたくさん買っています。3月末決算日までには決算対策で一度益出しするので、どこも必ず売りにかかるのです。ほうっておくと、減損会計基準にヒットする可能性があるので、無理矢理でも売却をしてきます。一方の個人投資家などは、冷静を保っていると考えられます。少し時間が経てば、高値の80%くらいの水準までは戻るのではないでしょうか

吉松
なるほど、機関投資家は株式より含み益が大きいJリートを早く売却することで、自らのクビがしまるのを覚悟で見切り売りしたのですね。

西村
個人には不可思議な行動ですが、金融法人の決算は日本の場合3月なので仕方がないのです。ですから、決算対策の売りが一巡した直後には、一旦底入れするのを期待したいところではあります。

吉松
個人には大チャンスですね。

西村
理屈はそうなりますが、皆がそう思っているとそうならいのが投資の世界です。そうは問屋が許さないというやつです。

吉松
今後まだ下がるとしたらその要因は何になりますか?

西村
リーマンショック時同様、銀行の貸し渋りです。

吉松
日本も欧米もリーマンショックをきっかけにして、金融、財政を総動員して流通性が落ちない対策をしていますよね?

西村
その効果が発揮されると良いですね。

世界がキャッシュを渇望


引用:楽天証券 星野リゾート・リート チャート(3カ月)

吉松
インバウンドバブルが弾けた観光業界が心配です。星野リゾート・リート投資法人も安くなりました。

西村
すぐにでも買い注文を出したいくらいですね。リートも現金豊富な銘柄だと、当面の配当には支障をきたしません。有価証券報告書を睨みながら、直近の予想配当率が守られそうかを注視してください

吉松
キャッシュ・イズ・キングですね。

西村
世界の民が日々のキャッシュを渇望しています。数年間高値安定だった金(ゴールド)でさえ、投資家がドルに換金する有様で、下落傾向にあります。おかげでドル高円安基調になっているのは、日本には悪いことではありません。原油も安いので円安でも問題なしです。

吉松
リーマンショック後の為替はどうなっていましたか?

西村
発信源の米国が極端な不況に陥り、急な円高が数年に渡って続いて、それが定着しました。

吉松
貿易収支は悪化したのですか?

西村
そうですね。米国には自動車を多く輸出していたので、トヨタ自動車が一時経営危機になりかけました。

吉松
トヨタショックの後に名古屋経済圏が大変なことになり、東海圏の借家入居率が極端に下がったのを記憶しています。

西村
株式は先行指標で不動産は遅行指標と言われます。バブルの崩壊のタイミングも、株式より2年ほど遅行しました。今のところ、不動産セクターは無風状態ですが、歴史を俯瞰するとやはり無傷では済まないと思ってしまいます。

吉松
西村さんが総理大臣だったら、コロナ経済対策をどのようにしますか?

西村
今のところ、政府の対応で批判する部分はないです。とにかく、銀行から資金が遅滞なく国民全体に行き渡るように監視することのみです。

吉松
政府による不動産セクターに対する期待はありますか?

西村
バブルの反省から、不動産に過度の融資がされないよう、金融庁が不動産総量融資について実質の貸出規制をかけていて、GDPの上限15%程度と言われています。600兆円の15%程度だと90〜100兆円ですが、最近になり100兆円に到達したと聞こえてきました。

吉松
それでは総量規制のアッパーですから、不動産セクターは冷え込みませんか?

西村
数字理屈上ではそうなります。30年前に起きたバブルの反省に基づく施策にも柔軟性が必要と思います。

吉松
政府は宿泊業、飲食業には手厚い保護を行いますが、不動産セクターにはいつも冷たいです。

西村
不良債権を処理するスキームと、解決知見がある国になったので、不動産自体を目の敵にしてほしくはないです。投資自己責任を徹底的に追求する素地が未熟ではありますが…。

吉松
スルガ問題では、サラリーマン大家さんが債務側責任負担減を訴えています。

西村
それは絶対に許してはいけないと思います。投資自己責任精神を根づかせるよい機会になるかもしれません。汗水垂らさずに生計を立てるなんて、土台無理な話なんです。

吉松
バブル後の不動産には外資ハゲタカが飛びつきました。リーマンショック、東日本大震災後にはサラリーマン大家が飛びつきました。コロナショック後に飛びつくのはどんな主体ですか。

現物不動産は品薄状態

西村
現物不動産の売り物はあまり出てこないはずです。相変わらず品薄状態が続きます。Jリートでは、救済型M&Aが行われる可能性はあると思います。

吉松
売り物が少なければ不動産価格は下がりにくいですよね。

西村
そう予測しています。銀行がモラトリアムを実施しているので不良債権が発生しません。
※モラトリアム…本来の意味は「一時停止」や「猶予期間」をいいます。金融では、法令に基づき、債務の返済について一定期間猶予する「支払猶予」のことをいいます。

吉松
モラトリアムは仕方ないですが、所有者の新陳代謝が起きないのもどうなのかなと思います。

西村
コロナショックくらいでは良い不動産は出てきません。バブル崩壊の後のように、長らく塩漬けにされると、なかには玉石が出てきます。

吉松
では今から不動産投資家を目指しても無駄ということですか。

西村
日本のバブル崩壊後の数年は、それほどにきつい時代でした。リーマン、コロナの比ではありませんでした。世界が日本は終わったと確信していましたから。今から不動産投資をやるならばJリートが鉄板です。

吉松
最近、公示地価が発表されました。インバウンド特需もあり、地方リゾート地、地方都市商業エリアの上昇が確認できました。地価の先行きにはどんな感想ですか。

≪令和2年地価公示 全国の地価動向≫

国土交通省「令和2年地価公示の概要」より抜粋

西村
公示価格は雰囲気を掴む程度しか把握していません。というか関心がいきません。最近、母親とも話ましたが、今の時代勝ち組は独身者です。これはなんとなく皆が認めはじめていることなんです。だから地方でも未婚が増えているのです。独身の場合、資産を残す対象がいないため、一生懸命に働くインセンティブが減ります。余計な資産を増やす動機も減り、地価は下がります。不動産業界が唯一期待をかけるのは、東京の都心部だけになっています。

吉松
う〜ん。なんとなくそれは極端なお話のような気もしますが…。しかし地方都市での人口減、高齢化が加速度的に進んでいる以上、地価の上昇も東京都心部に限定されたという現実が近づいているのですね。生産年齢人口が全国の中では多く、住みたい街として常時トップの横浜市でさえ、374万人の人口に対し、老年人口(65歳以上)は、24.6%を占めています。40年くらい前の1975年は、人口260万人に対し、80歳以上は1%くらいしかいなかったというのに。また、男性未婚率も、2050年には全国で30%を超えるという予測もあるみたいですね。

西村
役人は、地価が下がると固定資産税という地方の基幹税収が減るので、非常にナーバスです。一旦止まった感がある地方財政危機も、また再燃するはずです。だから不動産投資とか地価が上がっていたとかの話題が出ているだけまだ幸せです。

吉松
人口減による財政危機を回避する劇薬はありますか?

西村
農民を地方公務員にしちゃうことですかね。若い人は案外農業に就くかもしれないですよ。

吉松
なるほど!それならば地方人口の空洞化を抑えられるし、作物自給率を上げられるかもしれないですね。

西村
よい作物が取れる畑や美味しい米が取れる田んぼの価格が上がったりしたら、不動産の活性化になりますよ。発想の大転換でアパート建てるのやめさせて帰農しましょう。東京都心部以外にある不動産業者は、農家と繋がりがあります。そのパイプを生かす経営を志向すべきです。

吉松
最後はなんか本題から大脱線した感もありますが、楽しい話題をありがとうございました。色々チャンスはありそうですね。私は早速、星野リゾート・リートを購入したいと思います。

後日談…この対談をした3月23日の星野リゾート・リートの株価は、26万3500円。しかし、モタモタしているうちに、本日3月25日に38万円になっていました。大チャンスを逃しました…。

(Hello News編集部 吉松こころ)

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