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2020.04.09

♯インタビュー

コロナショック緊急対談②「Jリートと金融市場これからどうなる?」

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前回(3月25日号)は、先の見えない相場先行きについて、株式会社不動産戦略研究所の西村明彦さんと対談しました。今回は、新型コロナの感染拡大やオリンピックの延期を受けて、3月の不動産市況情報の変化を紹介します。
※本記事の内容は、「緊急事態宣言」発令前のものです

西村明彦さん
1990年大学卒業後、山一證券を経て不動産会社、ファンド会社などで様々な職種を経験。2009年に商業用不動産コンサルティング専業の(株)不動産戦略研究所を創業し現在に至る。プロ間のブローカレッジと相続対策の助言を得意としている。

テナントの減額交渉増加

吉松
Jリート指数は少し落ち着きを取り戻しました。

西村
3月19日の「1138」から「1436」まで、約300ポイント上昇しました。このあたりから膠着状態です。

吉松
今後の見通しは?

西村
3月の不動産市況情報が判明すると下がっていく可能性があります。

吉松
3月の結果は恐ろしいですね。新築マンション、中古マンションとも各社堅調だったとは聞こえてきますが。

西村
賃料はいかがですか?

吉松
賃貸保証会社へのヒアリングによれば、商業系テナントからの家賃減額交渉が増えているようです。3月31日には国交省から飲食店舗のテナントの賃料支払いに対して、柔軟な措置を取るよう要請が出ました。この流れが住居系にもこないか、個人オーナーは戦々恐々としていますね。

西村
銀座のドラックストアは賃料負担に耐えきれなくなっているみたいです。

吉松
リーマンショックと3.11の後は、外国人が居なくなり高級賃貸マンション需要が低迷し、外資系企業の撤退でオフィスビルの賃料が急低下しました。今回は宿泊施設と商業テナントビルが、最初に打撃を受けた感じですね。

西村
そうですね。しかし商業ビルはテナントと2〜3年契約しています。なので、貸主の収入が減るとしても時間的なラグがあります。

吉松
しかしこれだけ来客がなく売上も激減すると、賃料負担が重くなりますね。4月9日の日経新聞の報道によれば、串カツ田中やサイゼリアなど大手も賃料交渉を始めたとのことです。

西村
コロナの終息が長引けば、大手テナントであっても賃料負担に耐えきれなくなるかもしれないですね。

商業不動産仲介は活発

吉松
投資用ワンルームはエンドローンの供給が止まったみたいです。

西村
ジャックスとかオリックスは、止めたというより社員の自宅待機でマンパワーが不足しているのだと推察してます。

吉松
ワンルームバブルはまだ続きそうですか?

西村
山高ければ谷深しでしょうね。少なくとも賃料相場は頭打ちになりますから、しばらく停滞はしそうです。

吉松
住宅系がさほどでないとしても、商業系リート銘柄への投資は危険ですね。

西村
三菱商事スポンサーの日本リテールファンド、ケネディクススポンサーやケネディクス商業リートは高値から50%以上も下がり、下落率も上位です。

吉松
ところで西村さんのご本業であるブローカレッジ(商業不動産仲介)は如何ですか?

西村
あまり止まってないです。銀行のローンは止まった感じですが、大手業者など財務盤石なところは空前の仕入れチャンスになりました。

吉松
具体的にどんな案件を手掛けているのですか?

西村
開発案件や屋内型トランクルームです。

吉松
具体的にどんな主体が買うのですか?

西村
開発は、まず土地を買うのでプロであるデベロッパーが買い手になります。屋内型トランクルームは、個人に融資が付かないのでファンドや生保が買い手になります。

吉松
商業不動産は、BtoBが多いのですか?

西村
BtoBがほとんどで、次にCtoBです。住宅のように、CtoCは非常に少ないのが特徴です。

吉松
Jリート市場は?

西村
発行体がBですから、BtoCになりますね。

吉松
そうすると、現物不動産市場には参入しにくい個人は、Jリート市場に積極的に参加すべきですか?

西村
実は、不動産個人投資家にはそれしか選択肢がないと言っても過言ではないです。商業不動産市場では、BとCの情報格差に格段の開きがあるのです。

コロナで個人投資家にもチャンス

吉松
コロナショックで個人投資家にも千載一遇のチャンスが訪れたかもしれません。どのような事をしたらチャンスをものにできますか?

西村
Jリートでは、BとCに情報格差がありません。半年に一度開示される有価証券報告書を熟読すれば、その銘柄の全容が把握できます。特に、不動産の鑑定評価が記載されていますから、その数字をじっくり研究することに尽きます。

吉松
コロナショックを転機にJリートが見直されるきっかけになるでしょうか?

西村
リーマンショック時に比べると下方硬直性が増した感があります。あの頃に比べると、投資信託と生保の存在が目立ちます。国債がマイナス金利下のうちは、運用手段として益々存在感が出てくるはずです。

吉松
今後下落局面が続いても、リーマンショック時のような下げ幅にはならないのですか?

西村
投資商品は半値8掛け2割引、つまり高値から68%下がったあたりが大底と言われます。リーマンショック時は、まさに68%下がったあたりが大底でした。

吉松
コロナショックはリーマンショック以上と言われています。先月は、急速に50%も下落したわけですから、最終的に半値8掛け2割引ですむのでしょうか?

西村
わからないです。68%を底値目安として記憶しておきましょう。

宿泊特化型リートにも期待

吉松
前回、星野リゾートリートの話題がありました。インバウンドの代表銘柄だったわけですが、宿泊特化型リートの見通しはいかがですか?

西村
政治次第ではないですか。来年の五輪開催が実現されるのはもちろん、観光にどのくらいの規模のお金が投入されるか見極めたいところです。アベノミクスの優等生はインバウンドでした。これが全く萎んでしまえば、国難極める事態になりそうです。だから政治はかなりの救済をしていくと予想します。

吉松
Jリートも国策に左右されるのはわかります。一番安定している住宅系はどうなるとお考えですか?

西村
Jリートに組み込まれる賃貸住宅は中所得層向けが大半で、今回も小じっかり(※)推移すると予想します。
※下値の心配がなく、相場が少し高い状態にあること

吉松
コロナショックが、逆に追い風になるセクターはありますか?

西村
物流系は未だ借手の需要が旺盛です、今より上昇する可能性の方が高いかもしれません。

吉松
おすすめ銘柄はありませんか?

西村
普通に考えたら物流系と住宅系になります。しかし、あえてインバウンドを盛り上げるためにも宿泊特化型をあげておきます。清潔、安全、多様な外食文化、温泉、史跡、テーマパーク、買い物施設、安い移動費用など総合力で、日本を上回る国は見当たりません。

吉松
西村さん、今回もありがとうございました。読書の皆様には今後ともJリートに対して興味が湧くニュースの提供を継続していくつもりです。私は初心者ですが、勇気を持って何か銘柄をゲットしたいと思っています。

(Hello News編集部 吉松こころ)

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