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2020.06.04
♯賃貸仲介・管理
新型コロナウイルス感染拡大が、賃貸経営や賃貸仲介の現場にもたらした影響は大きい。
アフターコロナ、ウィズコロナによって、IT化や業務効率が進むと喜ばれている面もあるが、現場では未だ前例のない対応に苦慮しているようだ。
こうした状況を受け、公益財団法人日本賃貸住宅管理協会(東京・千代田/以下、日管協)は、3月の早い段階から協会会員向けに、「賃貸住宅管理会社向け新型コロナウイルス感染症対策」をホームページ上で発表し、業務のサポートを行っている。
専用ページでは、新型コロナウイルスに関連する入居者および賃貸オーナーへの対応策をまとめた実務相談事例Q&Aを公開中。さらに様々な支援策や国土交通省からの通達事項もわかりやすくまとめている。
>「賃貸住宅管理会社向け新型コロナウイルス感染症対策」はこちら
「入居者が感染したらどうすればいい?他の入居者への告知義務は?」
「家賃を支払えないと連絡が来た時の対処法は?」
「エアコンの入荷が遅れている。賃料は減額すべきか?」
これまで経験がない対応だけに、管理会社や仲介会社にとっては心強い内容となっている。以下、協会了承の元、その一部を紹介する。
Q1:入居者(同居家族含む)に感染者がいる場合、他の入居者や貸主に通知すべきですか。また、入院しているケースと自宅待機しているケースで、対応を変えるべきですか。
A1:入院しているケースも自宅待機しているケースでも対応を変える必要はありません。他の入居者については、厚生労働省通知に他の宿泊者への通知に関する記述がない以上、感染者の個人情報・プライバシー保護の観点から、感染者の同意がない限り、通知すべきではないと考えられます。貸主については、管理受託契約に基づく報告義務の対象となる場合があると思われますが、個人情報・プライバシー保護の観点から、管理物件で感染者が出たという報告に限定すべきであり、感染者の同意がない限り、詳細な感染者情報は提供すべきではありません。
Q7:感染した入居者が退去しました。次の入居者へ重要事項説明を行う際、いわゆる心理的瑕疵として、前入居者の感染の事実の告知義務が生じますか。生じる場合、告知期間はいつまでですか。
Q7:厚生労働省通知に次の宿泊者への告知に関する記述がないことから考えれば、厚生労働省通知が指定する方法に従って、適切に物件の消毒を行っている限り、次の入居者への告知義務は否定的に解されるのではないかと考えられます。ただし、物件の消毒のみでは感染症を防ぎきれないといった事情が発生したような場合には、次の入居者に対する告知義務が生じる可能性はあります。
他にも「感染した社員への対応」や「管理会社の責任範囲」、「原状回復工事の遅延」など、22の質問に対して、日管協顧問弁護士のアドバイスに基づいて答えが作成されている。
会員限定となるため、全ては紹介できないが、新型コロナの影響によって起こりうる、様々なケースを想定して作られているため、不動産実務を行う方にとって大変有益な情報となっている。
「家」は命の産業とも言われ、賃貸管理に関わる人々をアメリカではエッセンシャルワーカーと位置付けていると聞く。感染の恐怖と戦いながら奮闘する業界関係者のため、不安やリスクを少しでも取り除けるようにと作られたWebサイトであり、ぜひチェックしていただきたい。
(ハローニュース編集部 鈴木規文)
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