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2020.06.11

♯インタビュー

緊急事態宣言解除後の不動産マーケットを読み解く

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西村明彦さん
1990年大学卒業後、山一證券を経て不動産会社、ファンド会社などで様々な職種を経験。2009年に商業用不動産コンサルティング専業の(株)不動産戦略研究所を創業し現在に至る。プロ間のブローカレッジと相続対策の助言を得意としている。

堅調な株式・リート市場

吉松
西村さん、ご無沙汰です。緊急事態宣言中はいかにお過ごしでしたか?

西村
積み残しの取引があり4月半ばに無事に納めた以降は自宅で家族と静かに過ごしました。

吉松
緊急事態宣言後の不動産マーケットが見えてこないので西村さんの予測を聞いてみたいと思います。まずはぶっちゃけどうですか?笑

西村
ぶっちゃけ、コロナ以前とあまり変化なさそうです。日銀のヘリマネ(ヘリコプターマネー)の恩恵で投資に向かうマネーが溢れています。

吉松
株式もリートもそこそこ堅調ですよね。

西村
不動産村では不可思議に捉えていますが、金融村では教科書通りの展開です。

吉松
ヘリマネは具体的にどんな政策ですか?

西村
一万円札を休まず輪転機にかけて刷りまくり、まさに上空からばら撒く政策です。国債ではないので国の借金も増えません。

吉松
そんな事をしてよいのですか!貨幣価値が落ちてインフレを招きませんか?

西村
当然実物資産の金と不動産はインフレ気味になります。マーケットがその傾向を端的に表しています。

吉松
経済活動が再開されたばかりで企業収益はまだまだ悪くなると言われていますし、個人消費も長期低迷するのは必至です。「7割経済」、「6割経済」なんて言葉も聞かれます。格差がますます広がるということにもなりかねません。

西村
残念なことにその蓋然性(がいぜんせい:ある事柄が起こる確実性や、ある事柄が真実として認められる確実性の度合い〈goo辞書より〉)はあります。都内の資産家で現金を30億円程度保有している人を数人知っています。どういうわけか皆さん30億円なんです、笑。メガ銀にこだわらず信用金庫とかに全額預けている人もいまして、顧問税理士から銀行の倒産リスクを指摘されて定期預金を普通預金に変えたりします。

吉松
ペイオフを気にしているのですね。
ペイオフ: 金融機関が破綻したとき、預金保険機構に積み立てた保険金から預金者に一定額の払い戻しを保証する制度。現制度では1000万円までとされる。平成22年(2010年)に日本振興銀行の破綻に伴って初めて実施された〈goo辞書より〉

西村
それもありますし、出遅れ気味の相続税対策を開始しようと考える人も増え出しています。

吉松
現金を現物不動産に変えていく動きですね。いよいよ不動産も下がり始めるのでチャンスと捉える富裕層もいるでのは?

西村
外貨保険、海外不動産も外国の金利が日本並みに下がってしまい選択肢が金と不動産の二択になっています。もっとも金は相続税対策にはならないのでおのずとマネーは不動産に向かいます。

こだわるのは、1に立地、2に…

吉松
株、リートには向かいませんか?

西村
両方とも相続税対策になりません。資産家には現物不動産しか選択肢がないのです。

吉松
不動産素人の資産家が投資対象とする不動産は何を基準に選べばよいですか?

西村
コロナ以前と価格はあまり変化しませんので、利回りを追いかけるべきではありません。こだわるのは立地、立地、立地です。

吉松
確かに立地なら見に行けばわかりますしね。西村さんだったら物理的な投資対象は何にしますか?

西村
旧耐震(昭和56年以前に竣工)の区分所有マンションです。

吉松
老朽化マンション…。

西村
老朽化マンションで立地が優れているものをヴィンテージ・マンションと呼んでします。

吉松
ヴィンテージ・マンションは、よいネーミングですね(笑)

西村
現金でしか買えないのです。

吉松
ローンが付かない?

西村
その通りです。

吉松
そうなると資産家には競合先が不在のブルーオーシャンになりますか。

西村
ヘリマネ経済下では非常に有効な投資対象になります。利回り高いし、相続税対策にも効果を発揮します。税理士も反対しにくいわけです

これから有望なのは銀座の…

吉松
ヴィンテージの他で西村さんがやるとしたら何ですか?

西村
商業地域に狭小地を買ってコインパーキングで運用します。

吉松
銀座だと1台で月収50万とか月収70万とかいくみたいですね。

西村
コロナ禍で車移動のメリットが見直されたと思います。最近の小学生への大人になって欲しいものアンケート結果で男子女子ともに一番が車だったそうです。

吉松
え、本当ですか。今の20代は車離れだと言われているのに真逆…。確かにコインパーキングには昼夜問わず車が止まっているように思えるし、高速道路網も整備が進みました。コロナで電車通勤を避ける傾向が強まったと聞いていましたが、子供の夢がマイカーとは意外でした。

西村
友人にコインパーキング投資の鉄人がいます。それだけで億万長者になり銀座にビルも持っていました。しかし銀座のビル投資は失敗しました。

吉松
鉄人の投資の秘訣教えてください。

西村
蕎麦屋の横の空き地を狙うみたいですよ。蕎麦食べるためにドライバーが頻繁に利用するらしいです。

吉松
ラーメン店の横は?

西村
もちろん有りでしょうね(笑)

吉松
転売で稼ぐのですか?

西村
更地を買ってコインパーキング業者にサブリースで貸します。これで利回り商品に仕上がります。あとは相続税対策の投資家、富裕層が現れるのを待つのみです。

吉松
なんか難しそうですね。

西村
実に簡単ですよ、コインパーキング業者とつながり持てばいろいろ教えてくれます。

大企業が入るビルは強い

吉松
話が面白すぎて本題から脱線しましたが、不動産の取引に関してはいかがでしょうか。

西村
業者による取引は衰えていない気がしています。不動産業の大半である中小零細業者にテレワークはありませんでしたから。

吉松
全産業の中でも不動産業は落ち込むどころか4月もよい結果が出ています。

西村
マンション販売は落ちこみましたが、販売拠点が閉まっていたので参考にはできません。中古マンション流通はそこそこ動いていました。価格は以前と変化がなく高値安定です。

吉松
一方でホテル、旅館は厳しいでしょうね。

西村
ホテル、旅館は確かに不動産装置産業ですが不動産セクターではなく観光セクターに属します。不動産業者は土地建物を保有していますが運用は観光業者に一任しています。

吉松
なるほどそういう見方もありますね。

西村
ホテル投資に傾倒した中小業者がおかしくなるのは時間の問題でした。

吉松
オフィスの先行きをどう占いますか?

西村
大企業が入るようなSクラス、Aクラスビルは落ち込みません。入居ビルは企業の顔であり内外への信用アピール、広告塔を兼ねていますから採用等にも影響が出ます。空室率が極端に上がる可能性は低そうです。

吉松
中小オフィスはいかがでしょう?

西村
中小企業の大半はいわゆるブラック企業です、私は大企業、中小企業にも在籍していましたからよくわかります。表面上グレー企業も増えましたが実質ホワイトは全くないですね。中小企業の大半は創業オーナーですからテレワークの比率をあげていこうとするような社長は紙面に載るくらい貴重な存在です。結論からすると、中小ビルも空室率の上昇があっても極端に振れないと読んでいます。

吉松
商業店舗ビルはどうなりますか?

西村
手離れをする所有者は増えますね。しかし借入額より下値では売却できませんから取引成立する事例は少ないと予想します。オフィス系とは異なりテナントとオーナーは一蓮托生です。お互いに理解し合えるような仲であればテナント側は滞納家賃の繰り延べを認めてもらい、所有者は銀行から返済繰り延べを認められるわけですから波乱は少ないでしょう。

吉松
定量的より定性的判断に重きをおく西村さんの説明には納得感あります。

西村
私もいい加減いい年齢ですからこのくらいはわかりますよ(笑)

吉松
状況は違いますが、トランプさんも過去に4回会社を倒産させていますが、その度に銀行と交渉して、今の会社を潰しても次に作る会社で借金を返すからといった超強気な交渉をして、まさに銀行と一蓮托生で生き残ってきたという話を聞いたことがあります。最後になりますが、今一度ポストコロナの不動産動向予想をまとめてお話いただけますか。

西村
緊急事態宣言中にプロ業者仲間からはリーマンショック以上に下がると弱気発言が相次ぎました。いまもベア相場(弱気)考える人が大半かもしれません。私は完全にブル相場派(強気)です。反対にいったら信用なくしそうですが(笑)

吉松
ブルになれる理由は何ですか?

西村
経済の司令塔が誰かを知っていれば少なくともベアにはなれません。総理大臣でも財務大臣でも経済産業相でもありません。経団連会長でもありません。司令塔の発言に注目して次の潮流を想像していくことは簡単です。情報料もタダです。また行動経済学を少し学んで自身の不合理な習性バイアスを掴むことです。常にマーケットの声に忠実であるべきですね。

吉松
ありがとうございました。西村さんをみていると、「当たり屋につけ、曲がり角に向かえ」の格言を思い出します。引き続きよろしくお願いします。

(Hello News編集部 吉松こころ)
(インタビュー日:2020年6月4日)

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