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2020.09.03
♯賃貸仲介・管理
2020年6月12日、賃貸業界の悲願ともいえる「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律(賃貸住宅管理業法)」が、参院本会議で可決、成立した。翌2021年7月に施行される予定だ。
これにより、「賃貸住宅管理業」に登録制度が創設された。200戸以上を管理する管理会社は、国土交通大臣の登録が義務化された。管理受託契約やサブリース契約の際の重要事項説明が義務づけられるなど、一定のルールを設けることでオーナーと入居者の利益を保護する。また、登録事業者名は管理会社や物件を選択する際の判断材料として活用することが可能になる。
設立の背景にあったのは、オーナーと管理会社、オーナーと入居者との間でトラブルが増加したことが挙げられる。特にサブリース会社では、オーナーとの間で家賃保証等の契約条件の誤認を原因とするトラブルが多発し、社会問題にまで発展した経緯があった。
記憶に新しいところだと、「かぼちゃの馬車」問題だ。2017年当時、売上高300億円で急成長中だったシェアハウス運営会社のスマートデイズが「30年間は家賃保証します。利回りは8%以上です」との謳い文句で、サラリーマンにシェアハウスを建てさせた後、入居率が低いことを理由に、一方的な賃料減額やサブリース契約の解約を迫り、トラブルになった。その後、スマートデイズは経営破綻している。
高齢化によって自分で物件を管理することができなくなり、管理会社に委託するオーナーやサブリース方式で契約するオーナーが増加するなかで、今後さらに増えるであろうトラブルを未然に取り締まることが賃貸住宅管理業法の狙いだ。
<施行スケジュール>
参照:「公益財団法人日本賃貸住宅管理協会」作成資料を基に編集部で作成
公益財団法人日本賃貸住宅管理協会事務局は、「これまでは宅建業法の延長上に賃貸管理業があるといった位置づけでしたが、今回の法制化により、宅建業とは異なる“賃貸管理業”という全く新しい業界が誕生したことになります」と話す。
賃貸住宅管理業法による登録制度の義務化にともない、今後、各事業所に最低1人以上、配置しなければならなくなったのが、重要事項説明などの役務を担う「賃貸不動産経営管理士」だ。
賃貸不動産経営管理士は、賃貸住宅業界の問題解決を目的とし、契約はもちろん、市場調査や入居審査、建物維持管理、原状回復工事など、あらゆる賃貸不動産管理業務のプロフェッショナルとして、オーナーや入居者との間に立ち、中立の立場からアドバイスを送ることが求められている。
<賃貸不動産経営管理士の業務範囲>
試験は年に1回、11月に実施される。誰でも受験することができ、賃貸管理に関する実用的な知識があるかどうかに基準が置かれた試験内容になっている。
なお、賃貸住宅管理業法の施行後に国家資格となることが考えられる賃貸不動産経営管理士資格の受験者数は、2015年度試験では約5000人だったのに対し、2019年度試験では2万3605人と、4倍以上となっている。受験者数は年々増えており、管理会社によっては受験費用の補助を行い、資格取得を後押ししたり、資格取得を必須としたりするなどの動きも出ている。今後の賃貸不動産経営管理士の活躍に期待が集まっている。
(Hello News編集部 鈴木規文)
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