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2020.09.24

♯賃貸仲介・管理

ゴルフ練習場の鉄柱倒壊問題で取り上げられた「災害ADR」って何?

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2019年9月、関東一帯に猛烈な強風をもたらした台風15号によって、千葉県市原市にあるゴルフ練習場の鉄柱が倒壊し、周辺の住宅が損壊した。この被害によりゴルフ場と住民との間で損害賠償問題が発生したが、練習場の担当弁護士が、「災害ADR」を活用して補償に応じる方針を示した。

このニュースで、「ADR」という言葉を初めて聞いた人も多いだろう。

「ADR」とは、「Alternative(代替的)」「Dispute(紛争)」「Resolution(解決)」の頭文字から成り、裁判をせずに弁護士などの専門家が当事者同士の間に立ち、話し合いで円満に解決することを目指す手続きを言う。また、裁判所を通さないことで、早期解決を目指すことができるが、一方で裁判のように強制することはできないため、あくまでも紛争解決のためにお互いが歩み寄る姿勢を持っているということが重要になっている。

冒頭でお伝えしたゴルフ場と周辺住民の問題は、自然災害が原因のトラブルだったため、「災害ADR」であったが、例えば金融トラブルであれば「金融ADR」、医療トラブルであれば「医療ADR」と、その分野の専門機関が「ADR」を行う仲裁人となる。

日本弁護士連合会のホームページによると、「ADR(裁判外紛争処理機関)センター」への2018年の申立て件数は1062件で、受理件数が1059件、解決件数は405件だという。また、受理件数のうち、「不法行為案件」が355件でトップ、次いで「その他の契約紛争」、「請負契約を巡る紛争」、「不動産の賃貸借を巡る紛争」、「相続関係」と続いている。

不動産トラブルは「不動産ADR」へ

この「ADR」は不動産業界においても効率的なトラブル解決手段となっている。

例えば、原状回復や賃貸借契約に関するトラブル、雨漏りや壁のひび割れなどの施工に関するトラブルなどが発生した際、それが誰の責任によるものか、すぐに責任の所在をはっきりさせるのは難しい。そこで「不動産ADR」を主に取り扱う「一般社団法人日本不動産仲裁機構」では、そういった問題に対し、協力団体の「NPO法人日本ホームインスペクターズ協会」からホームインスペクターをADR調停人として派遣し、「ADR」で責任の所在判断や、当事者間の話し合いによる解決のサポートを実施しているという。

■「ADR」の手続きの流れ

「一般社団法人日本不動産仲裁機構」作成資料を基に編集部で作成

住宅診断を行うホームインスペクターは元来、トラブルの解決を法的に行うことは、弁護士法で禁止されていた。しかし2007年に施行されたADR法(裁判外紛争解決手続きの利用の促進に関する法律)以降は、ADR調停人としてトラブル解決まで合法的に携わることができるようになったのだ。

円満、かつ早期に解決を図りたい場合に、「ADR」は非常に有効な手段である。とはいえ、当事者間で主張が食い違う場合や譲歩できない場合などにおいて「ADR」は向いていないため、利用する際はお互いのトラブル解決に向けた「想い」を事前に話し合っておく必要があるだろう。

(Hello News編集部 鈴木規文)

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