保証金なしで賃貸住宅を借りられるのは650点以上の人たち

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保証金なしで賃貸住宅を借りられるのは650点以上の人たち

『アフターデジタル』（2019年、日経B P）に、中国のジーマ・クレジット（芝麻信用）のことが書いてあった。スコアは「支払い能力」を可視化したもので、スコアが高い人であれば、保証金なしで賃貸住宅や車を借りられたり、特別なサービスを受けられたりする。日本では個人が信用スコアで格付けされることに否定的な意見も多いようだが、本にはこうある。

〈信用スコアが浸透してから中国人のマナーは格段に上がったように感じられます〉
〈（前略）そうした状況で信用スコアという評価体系が登場したことで、「善行を積むと評価してもらえる」と考えるようになりました。〉

こういったスコアシステムが、与信管理に重要な意味を持つ社会が中国国内で構築されつつあると読み取れた。

芝麻信用の利用者でもあり、現地の事情に詳しい中国・湖北省出身のライター、Aimeeに話を聞いた。

賃貸住宅を借りるとき、信用スコアが及ぼす影響はどれくらいか？

「まず、芝麻信用は、学歴、クレジットカードの支払い能力、購買力、友人関係など、A I が総合的に判断し、点数を出します。そのため、成功している人や、成功しそうな人たちが有利と考えられます。日本の「楽天経済圏」のような「アリババ経済圏」の信用スコアですから、芝麻信用の信用度を高くする方法としては、たくさんアリババで購入し、アリババが提供するサービスを受け、いいお客さんになることです」

芝麻信用で６５０点数以上を獲得した人は、芝麻信用と連携した賃貸物件サイトで部屋を探し、保証金不要という権利を持つ。また、中国では３ヶ月おきに、３ヶ月分の家賃を一括払いするのが通常だが、６５０点以上であれば１ヶ月払いが可能となる。

「高い信用度さえあれば、安く理想的な賃貸住宅を借りられます。審査などに余計な時間が掛からず、保証金に回さずに済んだお金で他の資産運用や、個人投資に使うことができると考えます」

満点は９５０点で、３５０点から点数がつくのが一般的だという。

家賃の支払いはどうなっているのか。

「芝麻信用はアリババのサービスの一つですから、保証金なしの不動産は芝麻信用アプリで探せます。支払いはアリババのアリペイで自動支払いになります。その支払い状況も信用スコアに反映されていきます。発生した費用の明細、全てアリペイで反映し大家さんと入居者の間では公開されます」

免除金や規則について書かれているページ

「６５０点の場合、契約以外の行為、修理や退去などの依頼も芝麻信用専用カウンターが対応してくれます。例えばトイレが詰まったとしたら、芝麻信用の中にある専用のカウンターに問い合わせをしたらすぐに来てくれます。費用は大家さんが持つのか自己負担になるのかはケースバイケースです」

アプリの中では、以前住んだことがある入居者が、物件の評価をレビューとして書くことができる。オーナー側が書くこともでき、お互いに評価できる仕組みになっているという。

現代の中国では、個人信用は、個人の品徳、能力、資本、条件、担保など、様々な要素と繋がり、信用度の高い人は社会で利便性を手に入れることができると考えられている。信用さえあれば、自由度が高まり、好きなところでお金を使うことができ経済を活性化させ、結果的に将来はより良い社会になる、という考えが浸透しているのだという。

国民性や社会の構造そのものが違うから、すぐに日本にこの仕組みが普及するとは考えにくい。しかし、ジーマ・クレジットが2015年のスタートからわずか5年余りで市民権を得ているというのは、注目に値すると感じた。

（Hello News編集部　吉松こころ）