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2021.06.24

♯賃貸仲介・管理

月極駐車場のオンライン化で、利用者・オーナー・管理会社三者が便利な社会を作りたい!!

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───「アマゾンを辞めた人らしい」

今勤めている株式会社ニーリーがどういう会社かより、“Amazonを辞めた人”の方に興味を持った。

「カタカナ語連発でいかにも外資というポロシャツ風の出立ちなのだろうか」

やってきたのは、全身スーツにスポーツ刈りの、汗を拭き拭き話してくれる熱血営業マンだった。

「管理会社の手間ひまを無くしたい」

下野昭一さんが、かなりの収入とブランドを捨てて入った会社は、株式会社ニーリーという2013年創業のベンチャー企業だ。システム開発や新規事業の開発支援をしている。不動産業界と関わるようになったのは、201911月から。「Park Direct」という、月極駐車場のオンライン契約と、顧客管理サービスを始めたことがきっかけだった。月極駐車場の募集サイトは、at homeやHOME’Sにもあるが、その後の契約、決済、更新、解約といった業務までをすべてオンライン化しているのは同社だけだ。

すでに導入を決めた管理会社の一覧をみて驚いた。北海道から、沖縄まで地域ナンバーワン企業をほぼ網羅しているではないか。

「2019年の11月頃は大変苦しい営業でしたが、少しずつ増えてきました」

サービス開始後、下野さんが訪問ややり取りをした管理会社はおよそ350社。現在、そのうちの150社以上と契約を結んでいる。(2021年5月末現在)

どうやら、パワーポイントでカッコ良く仕上がった営業資料からは、想像できない程のドブ板営業を繰り返してきたようだ。

同社が月極駐車場に目をつけたのは、宅建業法外のビジネスで重要事項説明が不要なこと、そして、管理会社の手間ひまが多い割に実入りが少ないこと、だった。

「駐車場は1万円くらいの賃料で、管理会社が得る管理料は、月々500円ぐらいです。これでは、契約や更新、解約の時に資料を送る郵送代だけで1カ月、2カ月分の収入が飛んでいきます。オンライン化することで、この手間を防ぎ、同時に借主さんの利便性を高め、さらに稼働率を上げてオーナーさんにも喜ばれることができないかと考えました」(下野さん)

募集

月極駐車場の募集といえば、ポスティングチラシか看板が主流だ。同社は看板を使うが、今までの看板とは少し違う。


よく見るポスティングチラシ

記載されたQRコードに秘密があり、ここに住所情報が入っている。利用者がスマホをかざすと、空車か満車かすぐ分かる画面に飛べるようになっている。


600ミリ×900ミリぐらいの看板を作り、現地に貼る。管理会社ごとにロゴやブランドカラーを用いたデザインは無料で提供。製作費の4000円から6000円が管理会社の負担となる。

空車であればそのまま申し込み、満車であれば空き待ち予約、と手続きを進められる。スマホを持っていない人に対応するため、電話での問い合わせも受け付けているが、この電話対応は24時間、365日、ニーリーのスタッフが対応している。

現在掲載中の月極駐車場は、5万台以上。申し込み済みは15万台以上あり、一台ずつオンライン化を進めているところだ。(2021年6月現在)

とはいえ、月極駐車場の市場は、国内で3000万台と言われており、シェアを取るまでの道のりは長い。


月極駐車場は国内には3000万台(写真はイメージ) 

営業を始めた当初は、「まだまだ部屋のペーパーレス化やIT化もできていないのに、駐車場までやれるわけがない」と言った言葉も聞かれた。しかし、「駐車場のオンライン化の方が部屋より進めやすいのでまずは取り組んでみませんか」と説得してきた。

同時に賃貸管理システムの会社にも営業し、現在、いい生活(東京都港区)や日本情報クリエイト(宮崎県都城市)とのシステム連携を進めている。元々、ニーリーはシステム開発会社だけに、こうした企業との協業は心強いに違いない。

完全オンライン契約

これまで紙で管理していたものをオンライン化することで、管理会社は画面上で、契約者の一覧、免許証の写真、車検証の写真、駐車場賃貸借契約書のPDF、駐車場の情報や賃料の情報、そして区画ごとの契約条項(前向き駐車や高さ制限、車種制限)などを管理できる。

オンライン化以前は、紙だったりExcelだったり、さまざまだ。ある関西の管理会社と提携した時、下野さんは、スキャナーを抱えて事務所まで行き、全ての書類を一枚ずつスキャニングしたという。住所の打ち込み作業も同社で担う。

契約台数が増えれば同社の収入も上がる、積層型のビジネスであることから、この初期導入費用については、通常5万円~15万円で、現在は無料キャンペーンを展開しており、収益度外視で請け負っている状態だ。

オンライン化を実行した後は、Q Rコード集を作成し、管理会社に渡している。現地看板だけでなく、手持ちの営業資料としても活用できるため、喜ばれているという。


紙で渡しているQRコード集

収納代行・決済

決済は、銀行振り込み、口座引き落とし、クレジットカード決済から選択できるが、ほとんどの利用者は、ポイントが貯まることから手持ちのクレジットカードでの決済を選択しているようだ。
カード情報を入力すれば、最短30分未満で利用できるようになるのも利用者側の利点の一つだ。

管理会社からすれば、滞納リスクの軽減につながっている。

一日貸しとのコラボ

管理会社からの希望があれば、タイムズのBと連携し、次の利用者が決まるまでの間を、一日貸しで運用するサービスもスタートしている。一日貸しと月極を同時に募集でき、効率的な運用が可能となる。システム連携しているため、月極が決まれば自動で、タイムズのBの募集は終了となる。

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ネット検索で近くの月極駐車場を探す人が多いことに着目し、「地域名、スペース、月極駐車場」で検索すると、検索結果の上位に同社が提携する管理会社の駐車場が直接出てくるようにした。

管理会社に代わって、同社がマーケティング費用を負担し、集客をしているのだ。
地名で検索され地図上にPark Directが出てくればそこから申し込みをすることも可能だ。
つまり利用者が、仮にPark Directを知らなくとも、Googleの存在を知っていれば検索されるということになる。

空き待ち予約

満車の区画に対し、空き待ちを予約を入れることができる。

完全な機械化により、1つの駐車場に対して何人も空き待ち予約を入れることを可能にした。現在の借主が解約になると、途端に一斉メールで予約者に連絡が回る仕組みになっており、一番先に手を挙げた人が申し込みできる。こうすることで空室期間を短くしている。

【成功事例】


2ヶ月で約50台の「空き月極駐車場」が埋まった事例も。全体の管理台数は、約700台。

Park Directで世の中を便利にしたい」

下野さんは、Amazon時代、アマゾンウェブサービスの営業職だった。
「ああ、これが世界最前線なんだ」という喜びと成長を感じる日々だった。

毎年高成長率を求められ、きつい環境ではあったが楽しさの方が上回った。

しかし、ニーリーの佐藤養太社長と出会いが人生を変えることになる。

「不動産業界は、今デジタル化へと移行するターニングポイントに立っている。その変革を共にやっていかないか」

実際の利用者の声や感動が目に見える仕事がしたいと思い始めていた矢先だっただけに、下野さんの心に響いた。

「もしかしたら自分たちの手で世の中変えられるかもしれない。Amazonでいろんなイノベーションを経験させてもらったけれど、今度はPark Directで世の中を便利にする仕事をしたい」

夢に燃える下野さんは、今日もスキャナーを抱えて全国の管理会社を飛び回っている。


夢に燃えるニーリーの経営陣(下野さんは一番右)

(Hello News編集部)

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