記事
2021.08.19
♯海外取材
ベトナム第三の都市、ダナン(人口:113.4万人/2019年)に3泊4日で行ったのは、2018年の5月のことだった。
<目指せ!!アジアのハワイ。ダナンの不動産市況> (2018年5月作成)
https://www.hellonews-web.net/column/column-909/
その時知り合ったのが、現地不動産会社に勤務する川又愛子さんだった。
さかのぼること2カ月前の2021年6月9日、ダナンに住む愛子さんから届いたメールにはこうあった。
2018年に訪れたダナンの海岸線を思い出した。
20キロにわたって遠浅のビーチが広がり、「アジアのハワイになる」という呼び声の通り、可能性を秘めた美しい光景がそこにはあった。
海の向こうに見える山がハワイのダイヤモンドヘッドに見えると評判
先行して投資を開始していたシンガポール系、ベトナム系、インドネシア系のホテル企業が、今はまだ野っ原のような海沿いの土地に、社名を冠した大きな看板をいくつも立てていた。
そして、いずれ建設される豪華で巨大なホテルの写真を貼り、数年後にこの土地がどれほど大きな変貌を遂げるのかを物語っていた。
それが、壊滅状態だなんて!!
世界的なパンデミック禍だとしても、にわかには信じられない。
早速、愛子さんに返事を書き、現地からのレポートを依頼した。
愛子様
質問をお送りします。
お手数をお掛けしますが、ご協力をお願いします。
愛子さん提供資料
<当時の記事>
「ダナンから世界遺産ホイアンまでは車で40分。その間、左側には海に面したビーチホテルの建設予定地がおよそ10キロに渡って続く。まさに建設真っ只中の建物もあれば、まっさらな土地に完成予定図の載った大きな看板だけが、どんと立っている場所もある。日本企業の名前はなく、ほとんどがフランス、アメリカ、シンガポール、ベトナム資本だった。現在、日系は2社ほどとなります。
最も目立っていたのが「COCOBAY」という会社で、ベトナムのディベロッパーだった。
「こんなにホテルが立って、本当に埋まるのでしょうか?」
Grabの運転手に尋ねると、「まだ建ってもいない、基礎すらできていないホテルでも1年先まで予約が入っているらしいよ」という答えがかえってきてビックリ」
<愛子さんからの回答>
度重なるロックダウンにより、多くの建設中のホテルの竣工が遅延していますが、ほとんどが資本力のある外資なので、資金ショートによる建設頓挫となった案件は意外に少ないです。
※愛子さんからのレポート
❼のアリヤナは建設が進んでいるものの、完成後の利回り保証の減額を行う旨の声明を出しています。❾のココベイに関しては、敷地内の一部のプロジェクトが中止となり、購入者への返金を行っています。
ダナンのホテル市場は、かつて供給過多と言われていましたが、コロナの影響で約半数のホテルが閉鎖しました。結果として、今後は供給が少なく、コロナ前から他セクターより高い稼働率をあげていた高級&ブランドホテルが生き残っていくと予想されています。
ホテル市場 | 2019年以前 | 2019年以後 |
ホテル供給 | 2015年〜2019年にかけ、20,000部屋増加 | |
既存ホテル数 | 943箇所(約40,000部屋) うち2スター以下のホテルは84%を占める | 約500箇所(約23,000部屋) 閉鎖となった約400箇所以上のホテルの多くを占めるのは3スター以下のホテル |
ダナンホテル全体の稼働率 | 約50%/年間 (ハイシーズン時の全体稼働率は70.5%) <4〜5スターの稼働率>約60%/年間(CBREによると、特に外資ブランドの4〜5スターホテルはこの平均%を上回る) |
— |
観光客数 | 870万人 |
ー |
平均宿泊料/1泊 | 160USD(17500円) |
— |
傾向 |
・CBREによると、ダナンの海沿いで建設可能なホテルは限られるため、ホイアン側への新ホテル建設が拡大中 ・2019年に大幅な供給増となったが、コロナの影響で約半数のホテルが閉鎖(約8割が2スター以下) ・コロナ禍(ベトナム入国者に対する隔離実施中)のため今後の供給数は未定 ・外国人観光客が入国できなくなった今、外国人観光客が入国可能となるまで、体力のある外資ブランドホテル、内資ブランドホテルが生き 残っていく傾向と予想 |
※愛子さんからの提供資料を基に作成
<当時の記事>
ベトナム最大手のIT企業、FPTは、ダナンをスマートシティ(環境配慮型都市)にする計画を発表した。すでに2016年には、1万人のエンジニアが常駐するIT拠点を開設し、2020年のスマートシティ化を目指すという。「ハワイよりもシリコンバレー」という評価もあるほどで、IT都市とリゾート都市双方を叶える未来都市になれるか、期待が集まる。
(愛子さんからの回答)
スマートシティ計画に関しては、パンデミック前は欧米、韓国政府系企業が興味を示し、韓国政府企業とは覚書を締結しましたが、現在の状況もあり、ペンディング中のようです。
(愛子さんからの回答)
パンデミック前は、欧米人観光客、欧米人在住者で集うエリアで、欧米人が経営するお洒落なカフェ、レストランが並び、ノマドやサーファーが多くみられました。
平均的なアパートメントの賃料は、パンデミック前、500〜600ドル/月/40㎡でした。 客付けは1週間でつくことも多かったです。
パンデミック前のアントゥン地区
パンデミック後は、外国人観光客が激減しました。また、ベトナム政府のビザ発行規制もあり、 多くの外国人居住者がベトナムを去ったために、ゴーストタウン状態になっています。
土地価格はコロナ前と比較し、15〜20%下落 。ビザ規制によって帰国を強いられたダナン、隣市ホイアンの外国人は、1800人以上と聞いています。
アパートメントの賃料は、40㎡で150〜200ドルまで下落。 多くのレストランは一時的に閉店、または経営が続かずに閉店となっています。
パンデミック後
ダナン登録外国人居住者数
2019年 |
374万人 (観光ビザで居住の外国人も多かったため、実際の居住者は更に多いと思われる) |
2020年 | 68.6万人(2019年の5分の1にまで減少) |
(愛子さんからの回答)
パンデミック前は、賃貸募集の店舗はほとんどない状態でした。あっても30㎡で 2000ドル以上(1ドル110円換算で22万円)と、ダナンの中でも高賃料で、バーやレストランが立ち並び、連日多くの観光客や地元の人たちでにぎわっていました。
2018年にバクダン通りの全ての商業物件に声をかけましたが、空いている店舗物件は一つもありませんでした。
パンデミック前のバクダン通り
以前のにぎわいは、今はない
パンデミック後は「募集中」の店舗だらけ。パンデミック前は人気店だったフランス人オーナーによる、欧米、アジアンフュージョン料理・バーも閉店。立地も良く、連日多くの観光客でにぎわっており、サラダが750円するなど客単価もダナンにしては高い方でしたが、残念ながら閉まってしまいました。店舗賃料は40%以上、下落しています。
閉店が続く店
年代 | 2018年以前 | 2018年 | 現在 |
川又夫妻が住むアパートの家賃 | 3万円 | 6万円 | 2万8000円 |
部屋の特徴 | 1LDK(60㎡)、中心街、築4年 |
2LDK(50㎡)、韓国人街、築1年 Wi-Fi、週1回のクリーニング、水道代込み |
|
フォー店を営むご主人の店の家賃 | 8万円 | 15万円 | 7万2000円 |
過去3年間の物価の変化 |
<給料>2020年の日系企業の昇給率は前年比7〜8%(2021年予想6%) <タクシー>タクシー配車大手グラブ(Grab)は、2020年12月に+8%値上げ |
||
外国人観光客 |
ダナンを訪れる外国人観光客は中国人、韓国人、日本人、アメリカ人でした |
外国人観光客数はゼロ |
※愛子さんからの提供資料を基に作成
急成長を遂げる、真っ只中にあったダナンだけに、パンデミックによって受けた影響は小さくなかったようだ。しかし、観光都市としても、IT企業の一大拠点としても可能性を持った都市であることは変わりない。
現地で暮らす愛子さんは、「こんな状況下でも、周りのベトナム人の近所の方々が積極的に助けてくれて、非常に助かっています。ベトナム人の方の助け合い精神を肌で感じることができて幸せです」と話す。
ダナンの再興を現地の愛子さんと共にこれからも見守っていきたいと思う。
(Hello News編集部)
CATEGORY