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2021.09.30

♯市場・トレンド

やるっきゃない!未経験からの介護業

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歩行訓練特化型リハビリデイサービス「コンパスウォーク西ヶ原」を、8月2日にオープンした小倉さちよさんを訪ねた。

生まれも育ちも東京都北区。ここで育って、ここで結婚し、ここで子育てをして、親となった。会社を興したのも、事業を共にする仲間と出会ったのも、そして母親を見送ったのもここ北区だった。

 

コンパスウォーク西ヶ原の定員は、1コマ20名。現在、看護師1名と理学療養士1名を含む4名のスタッフと、切り盛りする。
小倉さんにとっては、全くの異業種からの新規事業立ち上げだった。

周りからは「無謀」「怖いもの知らず」と言われた。
「勢いがなくっちゃ、始まらない!」
どこ吹く風の小倉さんを奮起させたのは、亡き母への追慕と後悔の念だった。

「母にできなかったことを」

今からさかのぼること5年前の2016年、製造業設計部門向けの技術支援サービスを行う会社、オズクリエイションを興したばかりの小倉さんは多忙な日々を送っていた。同居していた母の腎不全が悪化し、週に3回は人口透析に通わなければならい状況だったが、作ったばかりの会社を軌道に乗せなければならない身の新米社長にとって、母にかまう余裕はなかった。

母から受け取った愛情がいかに深いものだったか、思いを馳せられるようになったのは事業が安定した3年後。母はすでに天国の人になっていた。

「母にできなかったことを、地元の人たちにしたい」

転機となったのは、母亡き後も元気に暮らしていた父が、骨折し入院してしまったこと。

元通りに歩けるようになりたいという一心で根気強くリハビリに取り組み、自分の力で動けるようになって行く父を見守った。

一歩ずつ足が前に出るようになった時、父がみせた笑顔が忘れられない。

「人は歩けるようになることでこんなにも元気になれるんだ」

その時はまだ、歩行訓練特化型リハビリデイサービス、とう形態のデイサービスがあることは知らなかった。ただ、歩けることがもたらす喜びがどれほど大きいものか、強烈な印象となって小倉さんの胸に突き刺さった。

介護ではなく敬護(けいご)

コンパスウォークは、リハプライム株式会社が運営するデイサービスのブランドだ。2021年9月時点で全国に102店舗を構える。全国のネットワークを支えるのは、フランチャイズ企業だ。

コロナ禍になって1年が経過した、2020年2月。
新しい事業の柱、そして地元北区に貢献できる仕事、それを模索していた小倉さんは、リハプライムの代表である、小池修氏と出会う。そして、理念である「敬護」(人生の大先輩を敬い、護る)に共感し、99店舗目のコンパスウォークオーナーとなったのだ。


看護師の長田希歩未さん(中)と理学療法士の浅田徹さん(右)

「歩ける」を助けたい

コンパスウォークが、歩行訓練特化型をベースとしたデイサービスであることも加盟を決めた理由の一つだったと言える。

一人ひとりのケアプランに合わせた歩行訓練が特徴で、リハビリに重点を置く。
機能回復を目指す個別のカリキュラムにより、住み慣れた環境や日常に戻れるよう後押しするのだ。


歩行訓練に重点を置いている

「父が見せてくれたような笑顔をまた見たい」

その思いは、異業種からの参入、未経験での新事業という様々な懸念を払拭するのに十分な熱量となって、小倉さんを突き動かした。

介護事業が引き寄せた仲間たち

新規事業は、北区での新しい縁も導いてくれた。
デイサービスの開所にあたって行政を訪問する過程で、同じく北区で立ち上がったばかりの高齢者支援を行う「一般社団法人みんな元気に」を紹介された。

代表理事の青木信男さんと、理事の山崎靖之さんは、2021年、「北区ビジネスプランコンテスト」で、「高齢者の住まいのお悩み解決で安心のまちに」をテーマに、最優秀賞を受賞した人達。
小倉さんにとって、心強い仲間となった。

そればかりか、青木さんは子供が保育園で同級生だったという親同士のつながりも判明。理事の山崎さんはのちに、コンパスウォーク西ヶ原に適した不動産を、見つけてくれる人となった。

共に北区の高齢者支援を目指す小倉さんは、今年6月に「みんな元気に」の理事にも就任している。

次の展開も視野に

普段は、技術支援を行う会社の社長という顔を持つ小倉社長。会社経営をしながらだが、今は極力施設にいるようにしている。

技術会社と介護事業の共通点を尋ねると、即答で返事が帰ってきた。
「人、です」

「どんなビジネスでもプライベートでもそうですが、お客様も社員同士も人との関わりがいちばん大切だと思います。お客様に求められているものは何か、仲間のためにできることは何かを考え、最善を尽くすことで生まれる信頼関係は、AIには代われない強みです」と語る。

「ご利用者様と面談をしていると、境遇や環境は本当に様々で、色々な方がいることを知りました。お一人ずつの力になれることを考えていきたい」(小倉さん)

オープンして1カ月。小倉さんの頭には、すでに次の展開が広がっている。

「青木さん達と共同して高齢者の方の生活支援をサポートしたり、デイサービスが休みの土日や業務終了後の夜間には、介護保険非対象者の方のリハビリ訓練サービスや頭痛整体にもチャレンジしたい」と意気込む。

地元のため突き進む小倉社長の挑戦を見守っていきたい。

(HelloNews 編集部 吉松こころ)

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