• facebook
  • twitter
  • line

COLUMN

コラム

2018.05.31

♯シェアリングエコノミー

<前編>シェアハウスは日本に根付くのか

このエントリーをはてなブックマークに追加

キラキラと輝く星のように現れたシェアハウスが、新しい住まい方として注目を浴びるようになって久しい。シェアハウスを舞台にしたテレビ番組「テラスハウス(2012~2014年)」の影響もあり、住んだことがない人でも一度は見聞きしたことがあるのではないだろうか。同番組は2014年に惜しまれながらも放送を終了したが、その後、未放送エピソードを動画配信する番組公式YouTubeを開始し、累計2億8000万回におよぶ再生回数を記録。2015年に映画版が公開された際は、公開初週の週末興行収入ランキングで首位を獲得するなど話題を呼んだ。

今特集では、シェアハウスの歴史から最新のシェアハウス事情までを前編・後編にわけて読み解いていく。

浸透しないシェアハウス

シェアハウスは、2000年代後半からその存在感を増してきた。シェアハウス運営会社などが参画する一般社団法人日本シェアハウス連盟(2006年~)や、一般社団法人日本シェアハウス協会(2010年~)の設立もちょうどその頃だ。

また、近所づきあいが希薄になったといわれる現代だが、2011年におきた東日本大震災をきっかけに、周辺地域の人々との助け合いやつながりが大切だということが再認識されるようになり、人とのつながりを求めてシェアハウスの門をたたく人が増えたのではないかと予測される。

そもそもシェアハウスとはどういった住まいを指すのか。国土交通省の定義では「プライベートなスペースを持ちつつも、他人とトイレや浴室などを共用する賃貸物件で、入居者一人ひとりが運営事業者(家主含む)と個室あるいはベッド単位で契約を結び、共用空間は運営事業者が定期的に掃除するなどの管理を行う」と明記されている。

では、通常の賃貸住宅とは何が異なるのか。最大の違いは、同じ住居内に複数人が住み、寝室以外の浴室やトイレを共有している点だ。また、初期費用とされている敷金・礼金は不要で、家具や家電が標準装備されていることが一般的だ。

国土交通省のシェアハウスの市場動向(平成27年)によると、シェアハウスの入居理由の約4割を「家賃が安いから」が占めていることからもわかるように、初期費用を抑え、身一つで引っ越しできる気軽さが特に若者の間で受けている。

シェアハウスのポータルサイトを運営する株式会社ひつじインキュベーション・スクエアの調べによると、シェアハウスの数は2007年に5000戸にも満たなかったが、2013年には2万戸を超えたという。同社の北川大祐社長は「シェアハウスは徐々にではあるが浸透しつつある」という。とは言え、1586万4100戸(平成25年住宅・土地統計調査:統計局)ある賃貸住宅市場と比較すると、その割合はわずか0.12%と1%にも満たない。つまり、全体数からみると、シェアハウスは根付いていないともとれる。

一方、海外ではどうだろうか。アメリカ、イギリス、中国におけるシェアスタイルの居住形態(家族以外の友人や他人とのルームシェアを含む)に関する統計を見ていこう。

イギリスでは、家族ではない複数人が住む住居「Houses in Multiple Occupation(以下HMO)」の物件数は、約23万6000件(2008 年:同国地方公共団体による推計)にのぼるとされている。イギリスの賃貸住宅は約629万戸あるので、HMOの割合は3.6%ということになる。

次に中国では、シェアハウスとは異なるが賃貸住宅におけるルームシェアの割合が50%(2015年:中国住房 城郷建設部による調査)に達するという。

いずれの統計からみても、シェアスタイルの居住形態は日本よりも浸透していることが伺える。

シェアハウスが日本で根付かないワケ

このように5年で1万5000戸増えながらも、なぜ定着しないのだろうか。そもそも他人と空間をシェアすること自体が、日本人の文化に合っていないのではないかとも考えられる。

日本法規情報株式会社(東京都新宿区)が行った「シェアハウスに関するアンケート調査(2017年)」によると、「現在もしくは将来、シェアハウスに住みたいと思いますか」という問いに対し、84%が住みたくないと回答し、住みたいと回答した人はわずか16%だった。シェアハウスに住みたくない理由として「住人同士でトラブルが起きそうだから」と「プライベート空間が少ないから」がそれぞれ27%、「他人と住むのは怖いから」が20%、「共同生活に自信がないから」が19%となった。現状では、約8割以上の人がシェアハウスに抵抗感を抱いており、受け入れる土壌ができあがっていない現実が浮き彫りになった。

次に、シェアハウスの入居者・入居経験者たちの意向について、国土交通省の「シェアハウスの市場動向(平成27年)」から読み解いていこう。まず、今後の居住意向について「今後も住みたい」と「どちらかと言えば今後も住みたい」の合計が約3割に留まった一方、「今後は住みたくない」と「どちらかと言えば今後は住みたくない」の合計は6割を超えた。つまり半数以上の現入居者・入居経験者が、今後はシェアハウスに住みたくないと考えていた。

さらに、入居者・入居経験者の約6割が何らかのトラブルを経験していることも明らかとなった。このことから居住スタイルの特性上、問題が起こりやすいことも、今後は住みたくないと思わせる要因の一つとなっていることは否めない。トラブルの内訳は、「騒音」、「私物を共有スペースに置く」、「浴室やトイレの利用ルールを守らない」、「清掃、ゴミ出しのルール・当番を守らない」で、それぞれ約2割だった。

あるシェアハウス事業者は、当初、家賃を抑えるために清掃は入居者同士で分担制としていた。ところが、どれだけ注意をしても清掃をさぼる入居者がいなくならないため、スムーズに回らなくなった。結局、清掃業者が入ることになった物件もあるといい、こうした事例は“シェアハウスあるある”のひとつといえる。

実際に数年前までシェアハウス暮らしをしていたY子さん(40)は、「もう二度とシェアハウスには住みたくない」と当時の生活を振り返る。物件は全30戸で、女性専用だった。外部スタッフが週1回ハウス内を掃除していたというが、週に1回では、清掃日が近づくにつれ、床に落ちた髪の毛の量や汚れが目立ち、不快な気分になったという。また、憩いの場であるはずのリビングでは、テレビとソファをいつも同じ人が占領し、仲良く譲り合いながら使う雰囲気はなかった。さらに、うっかり洗濯機から洗濯物を出し忘れると、勝手に出されて床の上にそのまま置かれていたこともあるという。確かに洗濯物を取りにいかなかったのは悪かったが、放置してしまったのは15分ほどで。その間に出したうえに床に置くなんて…。

Y子さんは「仕事で外にいる時間のほうが長かったので、ハウス内のトラブルに巻き込まれることはありませんでした。ですが、他の入居者からハウス内のグチを聞かされたり、他人の小競り合いを目の前で見たりして、嫌気がさし一般の賃貸へ引っ越すことに決めました」という。

大都市圏への一極集中化

全国的には、どの程度の割合でシェアハウスが存在しているのだろうか。シェアハウス市場調査2016年度版(シェアハウス連盟)の統計から、全国4533棟あるシェアハウスの実に7割が東京都に存在していることがわかった。残りの3割も、千葉県、埼玉県、神奈川県、大阪府の4つの府県が大半を占めている。そして、青森県、秋田県、島根県に至ってはゼロだった。地方都市にはまったくといっていいほど浸透していないことが読み取れる。

大都市圏に集中する要因としては、運営者側の収益性があげられる。シェアハウスの市場動向(国土交通省)によると、シェアハウスの家賃で最も多いのは3~4 万円(約17%)で、個室の広さで最も多いのは7.5~10㎡(約32%)となっている。この数値を元に、都内で同じような条件でワンルームを借りようとすれば、2割以上高くなる。一方、地方では3~4 万円の家賃を支払えば、7.5~10㎡よりも広いワンルームを借りることが可能だ。

つまり、都心では個室は狭いが家賃の安さを売りに入居者を集めることができるが、地方では家賃を3万円以下に下げるか、家賃を下げずにシェアハウスならではの魅力で入居者を集めるしかない。こう考えると、収益性に大きな疑問が出ることから、地方でシェアハウスが広まらず、都心部ばかりに集中していることが予測される。そもそも、土地が余っているエリアも多いため、狭いスペースを共有するシェアハウスは建てる側のニーズがないとも考えられる。

シェアハウスごとに入居者層がわかれる

ここまで、シェアハウスが浸透しない要因をいくつかあげてきたが、最後につけ加えるとすれば、入居対象者が絞られていることもその要因になっているといえる。

国土交通省がシェアハウス事業者に行ったアンケート「シェアハウスの市場動向(平成27年)」によれば、約4割の業者が入居対象者を絞っていると回答した。これは性別や年齢などを制限して募集しているという意味だ。

例えば、20~35歳までなどと年齢を限定して募集するケースはよく見受けられる。また、表面上は年齢制限を設けていないという業者からもこんな証言を得た。「20~30代の入居者が多いので、60代の方からお問い合わせが来た時は、やんわりとお断りしました。あまりに世代が違うと、共同生活が難しくなるからです」。

また、国際交流型のシェアハウスを展開するボーダレスハウス株式会社(東京都新宿区)の橋本浩平氏は入居条件をこう説明する。

「入居者全員で家族のようなコミュニティを作ってもらいたいという観点から、カップルやご夫婦、友人お二人でのご入居はお断りしています」。

30代くらいまでの単身者をメインターゲットとして募集されているケースが多く、これらの条件から外れると入居が難しくなってくる。つまり、一般賃貸と比較すると、間口が狭いという現実もあるのだ。

シェアハウスが定着しない理由は、これらの問題が相関していることが考えられる。

後編ではこれらの問題を解決しようとする各事業者の取り組みを中心に探っていく。

(ハローニュース編集部 須藤恵弥子)

このエントリーをはてなブックマークに追加
ページトップへ戻る