記事
2019.08.01
♯海外取材
2019年5月28日配信のハフポスト日本版に、気になる見出しをみつけた。
〈公衆トイレ、「女子は男子の3倍必要」東京五輪を前に専門家が警鐘鳴らす課題とは?〉
記事によると、「来年に迫った東京五輪を前に、国内の公衆トイレを見直す必要がある」とある。便器を使用する時間から考えると、女性は男性の3倍の時間を要すため、適正なトイレの個数を算出しようとすると、公共トイレは男女比、1:3が望ましいという。しかし実際にはそうなっておらず、混雑が予想されるというのだ。
また、車いす利用者や障がい者、子連れやLGBTの人々に対応する「多機能トイレ」の数も足りていないとあった。広さについても、ベビーカーやスーツケースも入れるくらいのゆとりが欲しいという。
さらに、これは日本独特だと思うが、トイレの機能が高度過ぎて操作に時間がかかり、混雑が助長されたり、誤作動によってトラブルが発生したりする可能性もあるという。
この記事を読み、早速、1年の半分を海外で過ごし、大好きなスターバックスに人生を賭ける“旅人大家”こと村瀬裕治さんに「世界のトイレ事情はどうなっているのか?」を聞いてみた。
氏名:村瀬裕治(通称:旅人大家)
本業:賃貸経営。愛知県や海外で複数の賃貸マンションを所有
趣味:放浪の旅・スターバックスのタンブラー集め
訪問国数:27カ国日本滞在日数:210日〜230日(約60%)
「確かに1:3が適切とは思います。けれど、本当は、男性1:男女1:女性2の合計4がいいかもしれません」
冒頭から、予想外のコメント。なるほど世界を旅する村瀬さんからすると、男性女性で分けること自体がナンセンスだったようだ。
「ヨーロッパに行くと、公衆トイレそのものがありませんから、飲食店に入らなければ用を足せません。日本の公衆トイレはきれいだし、何より無料で使えます。感謝する人の方が多いのではないでしょうか」
どうやら公衆トイレという発想も、世界基準では当たり前ではないようだ。そう言って見せてくれた各国のトイレ写真が衝撃だった。
これはラトビアの飲食店のトイレ。トイレというよりただのバケツだ。下に見えるパイプに流れていくらしい。
仕切りもない。
「高さが選べるように設置位置が工夫されています」と言われても、このバケツでは……。
「足で流すのはイタリア・ミラノ流。さすがファッショナブルな国です」
軽やかにつま先でタッチすると、センサーが反応して水が流れるらしい。
そのミラノからスイス・チューリッヒに移動する電車に乗ると、
今度は地球に戻るタイプになった。
次は、パリへ移動。“花の都巴里”だけに、トイレもきらびやか、と思いきや、これまたびっくり仰天な写真が送られてきた。
「国王を祝う祝日のような日、街に人が溢れかえっていました。そこで街中の各所に急きょ設置されていたのがこちらです。4人同時の使用可能で省スペース型です」
的がずいぶん小さいことを指摘すると、
「はい。外れるかもしれません」とのことだった。
衝撃写真はまだまだ続く。
ドイツ・フランクフルトからチューリッヒに、遅めの新幹線のような電車で移動した時は、
このような近未来型のトイレになった。スペースが広く、車いすも入る十分な余裕があった。鏡がこんなに大きい必要は、よく分からないが……。
ミラノ、チューリッヒ間の地球に戻るタイプのトイレとは天と地の違いだ。
チューリッヒ駅で電車を降りた。街に出てしまうと公衆トイレはないため、駅構内のトイレを借用。当然、有料だ。一回、1.50CHFフラン(165円くらい)だったという。
ここでは、トイレだけでなくシャワーや授乳スペースも借りられる、ちょっとした休憩室のような場所だった。
駅を出て観光がてら、FIFA本部を訪問。
サーカーミュージアムには、記憶に残る名場面の写真などが飾られており、しばし見学した。
ひととおり見終えてトイレをお借りすると、なんと
便器にサッカーボール。まさに「ゴールを狙え」。
なんとなくしにくさを感じるのは、日本人だけだろうか…。
ところ変わって、日本。
「やはり日本のトイレは世界一。こんな景色を見ながら用を足せるなんて、贅沢すぎます」
マンダリン・オリエンタル東京のトイレでは、眼下に広がる東京の夜景に向けてもよおすことができる(いや、実際におしっこをかけるわけではないが)。まさに光悦のひととき。
ちなみにマカオのリッツ・カールトンホテルでは、一人が利用するごとに、“トイレコンシェルジュ”なるスタッフが、即クリーニングに入るという。
トイレの写真はないが、ロビーや内装の写真がこちらだ。
高貴な雰囲気が伝わってくる。
ところ変わればトイレ事情も様々。
日本のトイレ環境は、かなり良い方だと思わざるを得ない。
こちらは村瀬さんから送られてきたトイレに関するメモだが、日本人の常識で読むと意味不明な文章が多すぎる。例えば、「ヨーロッパ便器が大きい、小人が落ちる」など。
トイレに関しては世界最先端の日本製品だが、唯一不満があるとすれば、手を乾かすドライヤーだという。アジアでは瞬間的に水滴を吹き飛ばすくらいの風力があるのが普通だが、TOTO、三菱など日本製のものは風力がかなり弱いという。
「日本製でもアジア諸国に設置してあるのは強いんです。国内だと弱いのは、何かトラブルやクレームになるのを避けるためとか、あるんでしょうか?」と村瀬さん。
ちなみに、ヨーロッパやアメリカはダイソン製で勢いは相当強かったそうだ。
最後に、世界を旅する村瀬さんに理想の未来型トイレについて聞いてみた。
「キーワードは、ヘルシーでフレキシブル。リトマス試験紙みたいなので健康チェックができて、高さやサイズが自由自在。雨水で流せばエコにもなる。勉強や仕事もできる楽しいトイレ」
トイレの常識にとらわれない自由な発想に脱帽した。
※村瀬さんのイメージを基に作成
(Hello News編集部 吉松こころ)
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