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2021.06.03

♯賃貸経営

「アート×不動産」でコロナに負けない元気を!!

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アートリノベーション、って面白い響きだなと思って見に行ったがそれより興味を惹かれたのは、新しいことをやりたいと奮起する社員と、それを見守る社長の姿だった。


アートリノベーションが施された「越中島ハイツ」

一歩足を踏み入れた瞬間、壁一面に広がる絵と、原色のサグラダファミリア、そしてピンク色の柱に圧倒された。18年近く賃貸業界で取材しさまざまな賃貸住宅を見てきたが、こんな“ド派手”な部屋は初めてだった。

「自分の周りから明るくしたい」

そしてその派手派手しさとは正反対のお堅いスーツ姿とジャケット姿の二人が立っていた。


平野社長(右)、社員の柏原さん(左)

「この方々が企画者?」

ギャップに驚いた。

案内してくれたのは、クレスの平野哲也社長と、社員の柏原健太郎さん。クレスは、平成5年創業の不動産会社で、千代田区に本社を構え、不動産の仲介や相続コンサルティングなどを主とする。30数年にわたり不動産に関わってきたという平野社長は、「弁護士が関与するちょっと手前くらいの相談が多いかな」と頭をかき、不動産が絡む資産整理などの仕事も多いと話した。
どちらかというと「堅実」「真面目」という雰囲気だ。

同社にとって初めての試みとなる「アート✖️不動産」に取り組むきっかけを作ったのは入社18年の柏原健太郎さんだった。

「コロナ禍が広がる中で、世の中がどんどん暗くなっていくのを感じました。何か、自分の周りからでもいいから少しずつ明るくできないかと思いました」

毎日のようにそう考えていた時、目に止まったのがOVER ALLsのTwitterだった。アートを軸に自分の思いを自由に表現する社長の赤澤岳人さんの言葉と、画家の山本勇気さんの絵が光って見えた。のめり込むように見て、気がついたら目黒にあるOVER ALLsの店の前に立っていた、と語る。8月初旬のことだった。


OVER ALLsの赤澤岳人さん(左)と山本勇気さん(右)

時を同じくして越中島の元公団住宅という分譲マンションの一室を仕入れることができた。

最上階の9階、角部屋、眺望は最高。

「ここで新しいことができるかも!」
そう思った。

 

しかし、実際の打ち合わせが始まると、OVER ALLsの提案は予想を遥かに超えたものばかりで面食らった。

「壁に一枚、絵があったらいいな」くらいだったのに、どんどんアイデアが出てくる。知らない世界の人たちとの打ち合わせは楽しくて仕方がない。しかしはじめのうちは、共通言語もなかった。意味不明の言葉が飛び交ていたが、お互いをさらけ出す対話を続けるうちに信頼関係が築かれた。OVER ALLsはアートと実用性を融合させる提案をしてくれた。

打ち合わせの場面 其の1
「壁に直接描いてしまうのはどうでしょう」
「左右どちらの壁ですか?」
「壁画用の壁、作っちゃいましょう」
「え〜」
「この壁が収納空間を生みますよ」

打ち合わせの場面 其の2
「キッチンとリビングをどう分けましょうか」
「壁は作りたくないです」 
「色を使いましょう」
「え〜」
「圧迫感なくピンクの柱が空間を視覚で仕切りますよ」

「信じて任せよう」

手探りながらも、OVERALLsからの想像を超えて飛んでくる発想を理解し、社内を説得、同意を得るのに苦労する柏原さんを見て、平野社長は言った。

「あまり不動産会社が口を出さない方がいいね。下手に口を出すと中途半端になる。ここは信じて任せよう」

それは、「柏原さんを信じる」という意味とも同義だった。

トイレに扉がないのはいかがなものか。

ピンクの柱ってどうなの?

色々あった不安は、挑戦という言葉に置き換わってきた。

出来上がった部屋を見た時、平野社長は思った。

「公団の分譲というとちょっと鈍臭いイメージがあるのに、アートの力が加わればこんなに変わるんだ。通常の不動産の価値とは違う価値が生まれているのかもしれない」

柏原さんも思った。

「同じ絵を見ていても、太陽の差し込み方、その時の自分の喜怒哀楽で見え方が違って見えたりする。そこから新しいアイデアが生まれたりしてそれが心の支えになることもある。トイレに座っている時だっていろんな思考が生まれるかもしれない。家を楽しんでいいんだ、と思わせてもらえた」

今年5月、クレスにとって初の試みとなったアートマンション「越中島ハイツ」は売却済みとなった。購入者は、40代の歯科医。「ドイツのアルトバウ(古い建築)が好きで、そのイメージと重なった」と言われた。家族と共に暮らすそうだ。

「アートリノベーションがビジネスになることで不動産市場やアート市場の活性化になれば嬉しいです。エネルギッシュなアーティストの皆さんとのお仕事では、当社も元気をもらえました。こうした仕事を通じて、不動産業界に明るさを届けていきたい」(柏原さん)

コロナ禍で感じた「少しでも明るくしたい」の願いは、「不動産✖️アート」のコラボで叶えられた。

 

(HelloNews編集部 吉松こころ)

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