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2018.11.08

♯市場・トレンド

時代の流れとともに変化する部屋の探し方

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2008年4月、週刊全国賃貸住宅新聞の1面トップの大見出しには、こうあった。

「携帯電話で部屋探しする層が急増」

一瞬、目を疑う見出しだが、ほんの10年前までは、そんな状況だったのだ。今や、その携帯電話もスマホへと取って代わられた。一人1台以上の所有が当たり前となり、ショッピングの方法や情報の受け取り方も大きく変えてしまった今、部屋探しの方法はどのように変わっているのだろうか。

保有率60%超え、部屋探しもスマホが主流

「弊社の部屋探しサイト『SUUMO』も世の中の動きと同様、部屋探しサイト利用者は、スマホにシフトしています。『SUUMO』の場合、ウェブサイトとアプリがあり、同じスマホでも利用の方法は異なります。PCであれば写真が大きくてみやすいという利点もあります。利用者さんはシーンによって使い分けていると感じます」と話すのは、リクルート住まいカンパニー(東京都港区)の賃貸プロダクトマネジメントグループのグループマネージャー、佐藤淳哉さんだ。

シーンによって使い分けているとは、ウェブサイトの場合は、「そろそろ部屋を探そうかな」と部屋探しを始めるタイミングで利用するケースが多いという。一方、アプリは「更新だから引っ越そう」「異動だから1週間後には部屋を決めなければならない」と比較的、引っ越しのスケジュールが明確になっているユーザーが利用していると分析している。理由は、アプリには新着のお知らせ機能などがあり、自身の条件にあった物件情報が入手しやすい環境にあるからだ。

このようにスマホユーザーが増えているという実感があるが、実際の保有率はどうなのだろうか。総務省が発表している「平成30年情報通信白書」の2017年個人モバイル端末の保有状況を見ると、スマホが60.9%、携帯電話・PHSが29.3%となった(図表1参照)。

部屋探し方法に目を向けてみよう。不動産情報サイト事業者連絡協議会(RSC)が行った「不動産情報サイト利用者意識アンケート」によるとスマホ利用者がどの世代も大幅に増加したという結果となった(図表2参照)。

紙からインターネットへ

リクルートでは、1976年に『住宅情報』首都圏版創刊を創刊し、その後、エリアを拡大していった。1995年に『住宅情報』の特別版として『週刊賃貸スペシャル』を発刊したのが賃貸単独媒体のスタートだ。その特別版が好評だったことから1995年秋頃に『週刊ふぉれんと』が創刊された。その後、同雑誌は、名称を数回変更するが継続されていった。コンビニなどで販売されており、紙媒体を利用者が購入するというスタイルだった。

 

賃貸住宅のサイトの登場は、2003年。『Forent.jp』としてスタートした。その7年前の1996年にアットホームが現在の部屋探しサイトの前身となるサイトを、1997年にはネクスト(現・ライフル)が『Home’s 』をオープンさせている。

1995年に「ウインドウ95」が日本で発売され、インターネットでものを調べることが身近になり、部屋探しも同様にインターネットにシフトしていった。インターネットでの部屋探しが登場した当初は、PCでの検索が一般的だった。その後、リクルートではdocomoの「iモード」(1999年〜提供)利用者向けに専用のページも制作していたという。

そして、2009年に住宅系の媒体を『SUUMO』ブランドに統一した。賃貸住宅の部屋探しは『ふぉれんと』という認知が浸透していたため、ブランドが一新された時、業界内では大きな衝撃が走った。

同社が利用者や不動産会社に親しまれていた『ふぉれんと』を捨ててまで新ブランドを創設した理由をSUUMO副編集長の田辺貴久さんは次のように語った。

「 住宅情報という言葉が、一般名称として利用されるため、ネット時代に移り検索してもらう上で、デメリットでした。また、利用者は賃貸、売買など複数の領域を並行して検討する人が多かったため、ニーズに応えられるよう総合サイト化に至りました。さらにブランドを1つにすることでのブランディングの強化を図りました」。

ブランドを認知させるため、リニューアル前は、CMや駅にポスターを貼るなど、通常の数倍の宣伝量を投じました。とはいえ、当初は、リニューアルすることを不安に思った不動産会社もいたそうだ。しかし、リニューアル後、問い合わせの増加など効果が出たため、結果的には、「変更してよかった」という反応に変わっていった。

社内では、当初『SUUMO』というのは、言い慣れないことから「住宅情報スーモ」などとつけて、電話を受けていた時期もあった。しかし、今では、しっかり認知された。同社の調べによると「スーモキャラクター」の一般認知(住まい検討者以外の人も含め)は、9割超えだという。また、住まい検討者に対して「住まい探しと言えば?」という質問をしたところ73%が『SUUMO』と回答した。

ブランドを一新した頃から賃貸住宅の部屋探しは、ネットへ急速にシフトしていった。賃貸専門部屋探し雑誌は、前出の通り1995年にスタートしたが17年後の2012年に賃貸情報を掲載していた『SUUMOマガジン』首都圏6版・関西4版・静岡西部・岡山倉敷・北九州が休刊となった。

「もともと弊社は紙で情報を整理し、1冊の雑誌の中で比較検討をしやすい形で発行していていました。情報をより多くの人に手に入るように雑誌の価格を下げ低単価制作をとりました。その後、フリーペーパービジネスとして情報提供に関して無料化の道を選びます。その結果、顧客との接点が広がっていきました。世の中の動きとネット、スマホの台頭に合わせて情報の提供方法を変えてきました」(SUUMO副編集長 田辺貴久さん)

同社が9月に発表した「賃貸契約者動向調査 (首都圏)」によると、不動産会社の訪問店舗数が平均1.6店舗となった。2005年度の2.7店舗と比較すると1店鋪減少している。手軽に部屋探しができるようになっているのと同時にVRや写真、動画など、住宅情報がより鮮明に得られるため、訪問数が減少したことが考えられる。

この動きが進めば、今後は、内見せずに契約する人も出てくるかもしれない。

「VRなどの技術が成熟してくれば、内見をせずに部屋を借りることもできてしまいます。実際に『SUUMO』内でも事例が出てきてますし、実は私も内見せずに部屋を契約しました。特に問題なく暮らせています」と田辺さん。

サイト上でのVRももちろんだが、無人内覧システムやAIによる電話対応などが発達すれば、今後部屋探しはもっと身近に、もっと手軽に簡単に、ショッピングや旅行のようにボタン一つで完結できるようになっていくかもしれない。

(Hello News編集部 山口晶子)

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