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COLUMN

コラム

2018.07.26

♯賃貸仲介・管理

熊本地震に学ぶ賃貸管理会社の災害時対応

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手さぐり状態での復旧活動

2016年4月に熊本地震が発生。震度7という最大震度の揺れは、全壊8662棟、半壊3万4239棟、そして避難者数18万人以上という甚大な被害をもたらした。熊本市やその周辺地域を歩くと、一見、本来の姿を取り戻しつつあるようにも見える。しかし、地震により本殿や石垣などが倒壊した熊本の象徴である熊本城の再建は、あまり進んでいない。修復作業中の本殿と、手付かずになっている倒壊箇所を目の当たりにすると、傷跡の深さを思い知らされる。熊本地震後は、自らも被災しながら、多くの不動産会社がその対応に追われた。

今年6月29日、日本賃貸住宅管理協会主催の「社宅サミットin熊本」が開催され、震災3日後から営業を再開したという株式会社明和不動産管理(熊本県熊本市)代表取締役社長の川口圭介さんが、「熊本震災の体験から学んだ災害発生時に備え管理会社から取るべき策」と題し講演を行った。その内容を紹介する。

同社は昭和56年の創業以来、大規模な震災を経験したことがなかった。川口さんは、「東日本大震災時、現地を視察して震災時の対策について勉強しました。ところが、まさか自分たちが被災するとは想像しておらず、その通り対処できなかったというのが正直なところです」と、自然災害に関しては、心のどこかで対岸の火事だと思っていたことを吐露。発生直後、とにかくあわてふためく中での対応だった。

4月14日の余震発生当日には、役員メンバーからなる「地震対策本部」を設置した。震災発生直後は全てが想定外で、手探り状態のなか、毎朝ミーティングを行い、対処方法を改善・変更した。このミーティングは6月末まで続き、2カ月半以上にわたって続いた。

 

問い合わせは1日最大2000件

 

震災後も休まず営業していた同社の社内コールセンターには、相談やクレームの電話が殺到し、4本あった回線がパンクした。そこで、社外のコールセンターに協力をあおぎ、回線を増やした。しかし、それでもつながらない時があったようで、本社以外の福岡、鹿児島、東京にある支店にもかかってくるほどだったという。入電件数は、震災発生以降の4月14日から5月末時点で17,627件あり、多い日で2,000本近くにのぼった。その大半は、「いま住んでいる物件は大丈夫なのか」といった入居者からの問い合わせだった。ところが、問い合わせに対する具体的な対応策を講じておらず、当初は「確認して折り返します」と返答。これが二次クレームを呼ぶことになった。というのも現場は大混乱で折り返し連絡などできるはずもなく、「連絡が来ない」ということがクレームになったのだ。そこで電話口では、「順番に確認していますが、危険な場合は避難所に避難してください」と伝え、その場で完結するよう対処法を変更した。

震災発生からの1カ月間は、入居者やオーナーへの連絡と点検に追われた。被害が大きく、貸出停止や立ち入り禁止になった管理物件はおよそ42棟。これらを社内の一級・二級建築士の有資格者14名が手分けをしながら回った。被害状況を写真に収め、危険な箇所には注意書きやコーンの設置、養生を施した。同社管理物件で地震により発生した不具合や故障は、小さな不具合まで入れると1万件に及んだ。

問い合わせのあった案件の中から、特に緊急性の高いものを順位付けし、復旧対応に取り掛かった。また、建築士などの有資格者が全管理物件を回り、貸し出し禁止になったものは、物件に張り紙とポスティングを行った。そして立ち入り禁止になったものは直接電話で入居者に告知した。さらに、被害状況アンケートを入居者へSMSや手紙で送り、その回答をもとに修繕の必要がある物件は工事業者へ依頼を行ったという。

全社員挙げて対応に当たる一方で、グループ会社の株式会社明和不動産賃貸仲介店舗は、震災発生3日後から営業を再開。開店2時間前の午前10時頃からお客様の行列ができた。

このような状況の中で、最も苦労したことについて、川口さんは次のように振り返る。「入居者様からの問い合わせに対応できる人員や、修理業者の確保ができず、対処が遅くなり、それがさらにクレームを生むという事態が発生したことです」

教訓から得た事前にやるべきこと7点

川口社長が地震によって得た教訓は、次の7つだ。

その1  
ソーシャルメディアを活用した人脈やネットワークを日頃から作っておく。
これはSNSで情報発信をしたところ、食糧支援やスタッフを派遣してもらうなどの支援を得られたからだ。

その2
同業者で地震を体験したことがある人に、質問できる関係づくりをしておくこと。
例えば、「躯体が歪んでドアが閉まらないがどうやって修理をしたらいいか」といった今までに受けたことがない問い合わせが来たとき、どう対処したかを聞くことができるからだ。

その3 
工事業者と関係性を築いておくこと。
震災後は復旧工事が急増するため、それに伴い工事費用の単価も高騰する。例えば、坪単価4万3000円の解体費が12万7000円になるなど価格が日々高騰するので、優先的に対応してもらえる業者と普段から関係を作っておくことが大切と痛感した。

その4
電気温水器が倒れないように補強をしておくこと。
震災時は電気温水器の根元にある給水管が折れ、そこから水が噴き出し全部屋水浸しになるというケースが多くあった。これにより、全室に設置された温水器の交換とリフォームを余儀なくされた物件もあった。このような事態を防ぐために、温水器が倒れないように固定するなど、前もってオーナーに提案することで、金銭的な被害を最小限に食い止められると考えた。

その5
社内の管理システムが稼働しなくなった時のことを考え、誰でも簡単に入力できるようエクセルなどで問い合わせ・苦情対応の管理ができるよう準備しておくこと。

その6
オーナーや入居者とはSNSを活用するなどして、緊急時にも連絡が取れる仕組みづくりをする。震災時は電話がつながらず、連絡が取れないことが往々にしてあるので、電話以外にもコンタクトが取れるようにしておく。

その7
「応急危険度判定士」など建物の状況を判断をできる資格を持つ人材を確保する。地震発生後すぐに管理物件を回り、貸すことができるか、できないかの判断ができると、その後の対応がスムーズに進められる。

管理物件を持つことが助けにつながる

株式会社明和不動産管理のグループ会社(ミリーヴグループ)である、株式会社メイワ・リーベル(熊本県熊本市)代表取締役社長、山口裕康さんは、震災発生時に直面した法人が社宅として借りていた賃貸住宅の対応について話した。

メイワ・リーベルは、法人仲介の専門会社。震災後の1週間は、社宅を契約している企業や、社宅に住む社員の家族などから、入居者の安否を確認する問い合わせが繰り返し寄せられた。

引っ越しを希望する人も相次ぎ、同社への社宅斡旋依頼は、前年比で420%増加した。しかし、依頼する企業側もパニックに陥っており、当初は50部屋の依頼だったのに、実際に必要だったのは11部屋だけだったということもあった。依頼段階でより正確な状況把握が求められることを思い知ったという。

依頼件数は急増したものの、成約件数はほぼ横ばいだった。山口さんがその理由について、「賃貸仲介会社には住む場所を失ったお客様が殺到し、どの会社も自社管理物件を紹介することで精一杯の状況だったので、業者間の物件流通がストップしたからではないか」と説明した。

同社は約1万7000戸の賃貸住宅を管理していたことで、他社の管理物件を紹介できなくても、これらの管理物件から紹介することができた。山口さんは、仲介のみを行う不動産会社について、震災などで業者間の流通が止まってしまうと、紹介自体ができなくなってしまうとし、自社で管理物件を持つことの重要性を説いた。そして「震災はどこでも起こります。有事の際は全国どこでも助けにいきますのでお声がけください」と呼びかけた。

災害は、各地で定期的に起きているが、実際に起こるまでは、自分が被災することなど誰も想像できないだろう。明和不動産(ミリーヴグループ)が体験した災害対応から学ぶことは多い。

(HelloNews編集部 須藤恵弥子)

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