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2019.05.16
♯民泊・簡易宿所♯町おこし♯離島
深田三兄弟の長男、深田剛さんが切り盛りする深田建設が、奄美大島内で管理する賃貸アパートは、約60室。
島内には、学校の先生や企業の転勤者、そして自衛隊と底堅い賃貸ニーズがあり、今後新築の供給も増やしていきたいと考えている。
同社が得意なのは、「空き家」の改修だ。
以前、せいぜい家賃3万円だった一軒家をリフォームし、1カ月9万円で貸せるようにしたこともあった。
最近、特に依頼が多いのが民泊物件に再生する工事だという。
現在施工中の民泊物件を複数、見せてもらった。
「ここはほとんど廃墟に近かったです」
そう言われて見上げた一軒家は、どう見ても新築にしか見えなかった。
「10年くらい誰も住んでなかったんです。オーナーはスイス在住の方で管理もできなければメンテもできない、固定資産税が重い、という状況でした」
依頼を受けた剛さんは、全額リフォーム費用を同社で負担する代わりに、20年間借り上げ、建物は同社で運用するという契約をオーナーと結んだ。海が目の前で、ビーチまで1分という立地を考えれば民泊として活用できる道筋が浮かんだ。
改修にあたり、海から直接上がってこられる土間スペースや浴室に直行できる導線、寝室から海が見える大き目の窓の配置など、細部にまでこだわった。リフォーム代はゆうに1000万円を超えた。
インターネットで、海辺の民泊に合うような家具を取り寄せ、今年のゴールデンウィークから稼働を開始している。民泊新法の民泊になるため、180日の規制がかかる。そのためできるだけ単価を上げ、少ない日数でも利益が出るようにしなければならない。1泊あたりの宿泊料は、2万円からの予定だ。
「オーナーさんもリフォーム後を見て感激してくださいました。スイスから奄美へ旅行する人も最近増えているようで、海外からの利用者が増えることを期待しています」
次に紹介する建物は、もともと新築で同社が建てた物件だったという。オーナーが手放すのを機に買い取り、自社物件として運用する予定だ。
リフォーム後は、定員5名以下の簡易宿泊所にする計画。広い芝生スペースはドッグランにして、ペットを連れた旅行者に対応できるようにしようかと思案している。
「デッキを入れようかなとか。外観は真っ白にしようか、薄いブルーを入れてみようか。集客のためにドローンで空撮したらかっこいいかなとか、色々考えているところ」
次に訪れたのは、築15年の一軒家。簡易宿泊所として稼働させる予定だ。ウッドデッキには後付けでお風呂をつけた。
デッキから海が一望できる、見晴らしのいい場所だ。
奄美大島では海近くの土地は上昇の一途をたどっている。
ここから見える土地も、数年前まで金額さえついていなかった。それが今では1区画2億円以上のところもあるという。
島内には、最近1泊10万円を超えるリゾートホテルも出来始めている。
欧米の富裕層が訪れ、連泊する姿が多く見受けられるという。
「欧米からだと直行便がないので、どこかで乗り換えてわざわざ来ています。そのためたまたま来たというより、奄美を目指してやってきた意志が強いと感じます。ただ実際には、ホテルのプールサイドで一日中ビールやカクテルを飲みながら本を読むという過ごし方をしている人が多いような気がします。リゾートの楽しみ方が、日本人とは違うのでしょうね」
とはいえ既存のホテルで、長期滞在者に合わせたジムやプールなどを完備している例はほとんどなく、そういった環境整備も、今後欧米からの旅行者を呼び込む上で重要だと感じている。
最近、「海が見える空き家を探しています」という問い合わせが、不動産部に寄せられることが増えた。
多くは、東京で民泊をやっている人からの相談で、都会での成功体験をベースに島での投資を検討しているケースだという。
「旅行者の皆さんが何を望んでいるのか、どんな滞在を希望しているのか、見極めながらレイアウトやデザイン、それに価格を設定していかなければなりません。手探りの部分は多いけれど、そこをしっかりやっていきたい」
深田建設の子会社で、次男の小次郎さんが代表を務める株式会社しーまは、日本におけるホームシェアリングを支援するAirbnb Partnersの一社。島の民泊市場が今後どう盛り上がっていくか、注目されている。
(取材日:2019年4月6日土曜日)
(Hello News編集部 吉松こころ)
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