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2020.03.05

♯市場・トレンド

「次は、不動産価格か!?地価か!?」新型コロナウイルスの影響どこまで?

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2月24日~25日にかけて日経平均株価が急落し、値下がり幅は2000円と、リーマンショック並みとなった。正確な情報が掴みづらい状況で、投資家も警戒感を強めているのがわかった。

「株価の次は不動産価格?それとも地価の下落が来ますか?」
「どちらも来るでしょうね。というより、業界全体に“きっかけ待ち”の雰囲気が漂っていましたから」

これは、ある大手賃貸管理会社社長の言葉だ。

なるほど、東京オリンピック開催に伴うインフラや会場施設の整備で、従来からの職人の人件費と建築資材の調達費用高騰は頂点に達しており、それらが不動産価格にまともに跳ね返ってきていた。

公示地価に関しては、バブル期(平成3年)、銀座界隈では、3150万円/㎡だったのに対し、昨年の銀座4丁目の山野楽器銀座本店前は、5720万円/㎡と、バブル期をゆうに超え13年連続で全国最高額となっていた。

「これはバブルなのか?」「いや、バブルではない」。そんなやりとりが不動産業界ではよく交わされていた。冒頭の社長の言葉は、そんな高過ぎる不動産価格に調整が入るきっかけがきた、という意味を含んでいた。


人が消えた住宅展示場

今後、起きるかもしれないこと

1.求められる間取りや設備の変化
賃貸住宅業界で、これからどんなことが起きるかを考えてみたい。まず、家のあり様が大きく変わるだろう。家でも不自由なく仕事ができる環境の整備が進むと思う。すでに、今回の新型コロナの影響で、大手企業だけでなく、中堅の企業でもテレワークが進んでいる。元々、2020年東京オリンピックによる交通機関の混雑緩和に備えて国が推奨していたこともあり、新型コロナ終焉後も導入を継続する企業は多いと予測される。テレワークに適した間取り、例えば生活空間と融合しないようなレイアウトやテレビ会議しやすい仕事部屋の設置など、新しい家へのニーズは確実に高まっていくだろう。弊社で勤務する中国人アルバイトによると、中国ではこの1ヶ月で、”家で仕事を進めるためのアプリ”が次々にリリースされているそうだ。

また、2019年に発生した台風19号による食料品の買い占め騒動の記憶が新しいうちに、今回の感染拡大問題が発生した。そのため、日頃より食料品や日用品の備蓄の重要性が認識され始めている。そこで、パントリーなど備蓄部屋のニーズが増える可能性もあるだろう。


テレワークに適したデスクワークスペースを設ける家が増えている

2.スマート仲介がより浸透していく
2017年10月から運用されている、テレビ電話を使った賃貸借契約における重要事項説明(IT重説)は、現場で対応する不動産会社の数が急速には増えなかったなどの理由から浸透には時間がかかっていた。しかし外出自粛ムードが漂っている今、IT重説のメリットを改めて考える不動産会社や入居希望者は間違いなく増えていくだろう。今後一気に普及する可能性はある。

石川県金沢市にある株式会社クラスコは、3月3日、入居希望者が自宅から賃貸物件のバーチャル内見ができるサービス「イツデモ内見」を1カ月前倒してスタートさせた。また、東京・千代田区にある和不動産は、Web上で不動産投資のコンサルティングサービスを行うサービスを始めている。こうして、従来は不動産会社に行かないと受けることのできなかったサービスが、自宅でも受けられるようになってきている。今後も新型コロナの影響をひとつのきっかけとした新しい仲介サービスが増えていくのではないかと考える。


IT重説のイメージ(出典:国土交通省資料)

3.動画コンテンツの増加
国からのイベント自粛要請により、続々と中止や延期となっている賃貸住宅関連のセミナーだが、なかには無観客で開催し、その模様を動画で撮って配信している会社もある。「5G」の普及も追い風となり、今後はこうした動きがより一層、高まってくるだろう。また、セミナー会場の様子を自宅で見られるようになることで生まれるニュービジネスにも注目だ。

ちなみに中国では、休校になった学校の教師が、動画で朝礼や授業内容を配信したり、家から出られない子供向けに、体育の授業で行う体操の配信を始めたりして、アクセスが殺到しているそうだ。

日本でも、Web面接やWeb教室、Web展示会、はたまたWeb飲み会なども始まっているとか。秋田と東京に拠点を置くWebシステム会社のフォチューナでは、テレワークが進む中、テレビ会議などのシステム面に関する問い合わせが急増し、大忙しだという。

4.布回帰の可能性
マスク不足は仕方ないにしても、トイレットペーパー、さらには生理用ナプキンまでが買い占められたのには閉口した。

今、世界ではSDGs(持続可能な開発目標)の考えが広まっているが、これを機に、布製品に回帰する流れが生まれるのではないかと、空になった商品棚をみながら思った人もいたのではないだろうか。洗濯をすれば何度でも繰り返し使える布製品は、使い捨ての製品より環境に優しいだろう。

われわれが乳幼児だった昭和50年頃までは、紙おむつではなく布おむつを使う家庭も多かった。最近、マスクは使い捨てから、手作りタイプや洗濯して何度も使用できるガーゼタイプに回帰する流れもある。布から紙へと進化していったものだが、原点回帰して布製に戻る可能性もあるかもしれない。


マスクの品薄は現在も続いている


手洗いすれば何度でも使える布製の手作りマスク

5.中国での新築マンション建設ラッシュは近いか?!
中国では、中国国内にある土地はすべて国の所有物になっている。そのため、その土地に新築マンションを建てると、マンションの売り上げは丸ごと国の利益になるという。

2002年~2003年に中国を中心に流行した「SARS」が終息した際、中国政府は多くの新築マンションを建設した。理由は「SARS」対策で国が多額の費用を使ったからで、新築マンションの建設は、その費用を少しでも回収しようとした中国政府の戦略だと言われている。

もし今回も同じような流れになるとすれば、近いうちに中国で新築マンションの建設ラッシュが起きる可能性はある。

「前回も相場より2割程度安くして、新築マンションを大量に売り捌いたという実績があります。当時は中古より新築が安い場所もあったほどで、みなこぞって買っていました」(中国人留学生)


中国・北京周辺で大量に新築マンションが建つ可能性がある

自分の頭で考える力(サバイバル力)を身につける

平成バブル(1986年〜1991年)の頃、人々は地価も株価もずっと上がると思い込んでいた。給与も増え、誰もが浮かれた時代だった。ファンドバブルと呼ばれた2006年頃は、海外投資家が日本に大量のマネーを投資したことで景気が上昇した。国内外の不動産投資ファンドがバブル崩壊後に安く売られた不動産を次々に買収し、結果、都市部における地価の上昇を引き起こした。タワーマンションがどんどん立ち始めたのもこの頃だった。

これまでの数年間は何だったのだろう。

私たちは、2013年頃から始まった“インバウンドバブル”の真っ只中にいたのではないか。

平成バブルの頃、地価は当たり前に上がっていくと誰もが思い込んでいたのと同様、インバウンド、特に中国人観光客はこれからもずっと来ると誰もが思っていた。銀座の高級ブランド店やデパートは「中国語対応OK」のバッチをつけたバイリンガルを大勢雇用していた。インバウンド対応のホテルが東京、大阪、京都などで次々に建設された。転貸して民泊を始める個人投資家も増えた。インバウンドが来なくなる、なんて思わない。今この波に乗らないとチャンスを逃す、という空気があった。「オーバーツーリズム」という言葉まで生まれ、テレビでは、日本人が日常的に利用するバスに観光客が溢れかえり、「もう観光客は来ないで」と叫ぶ地元住民の姿が紹介されたこともあったほどに観光客は文字通り押し寄せていた。

それが、このコロナショックでパタリと止まってしまった。今までのバブル崩壊が突然やってきたように、今回も突然やってきた。町から観光客が消えた。ディズニーランドも休園。知人の民泊ホストは、2月の予約がゼロだと悲鳴を上げている。


民泊の場所を確認している外国人観光客

今必要なことはなんだろうか。

ハローニュースが以前伝えた、2019年7月4日号「災害と日本人~『自助・共助・公助』の意識改革~」の記事には、「(災害時に)大切なことは、正しく迅速な情報が提供されたとして、そのあと、どのように行動し身を守るかということだ」とある。

また、「防災・減災は、『自助』が基本にあり、そのうえでコミュニティ内の『共助』を互いに提供し合えることが理想だという」とし、「いざという時に守り合う『共助』の友」が重要であるという。

「自助」の基本にあるのは、自分の経験に照らし合わせながら自分で物事を考え、判断する力なのかもしれない。しっかり考えれば、お米やトイレットペーパーを買い占めることなどなかったはず。正しい情報かどうかを判断し、お互いに協力し合う姿勢が、突きつけられているような気がする。

(Hello News編集部 鈴木規文)

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