• facebook
  • twitter
  • line

ARTICLE

記事

2019.07.04

♯災害

災害と日本人~「自助・共助・公助」の意識改革~

このエントリーをはてなブックマークに追加

SNSが注目された、東日本大震災での「奇跡のリレー」

大規模な災害時にSNSの持つ力が改めて注目されたのは、2011年の東日本大震災での「奇跡の情報リレー」といわれたケースだろう。巨大地震による津波が押し寄せて孤立した宮城県気仙沼市内の公民館に、福祉施設の児童ら400人余りが取り残された。そのことをメールで知った海外在住の家族がツイッターに救助要請を投稿し、拡散したツイートを見た東京都の幹部が東京消防庁のヘリコプターを現地に向かわせ、全員が無事救助されたというものだ。

有効性と問題点のはざまにAIの登場

その後、大規模な災害時にはSNSで多くの「救助要請」が投稿されるようになった。2018年7月の西日本豪雨で甚大な被害を被った岡山県倉敷市真備町のケースではどうだったか。早い時点で倉敷市の公式ツイッターアカウントが「市役所から自衛隊に派遣要請しており、順次救助活動に入りますので、もうしばらく、なるべく安全な場所で待機してください。」とツイートした。これをきっかけに、公式アカウントに向けて直接救助要請のツイートが一斉に寄せられるようになった。

その先の対応は、市の担当職員が寄せられるツイートをプリントアウトして、災害対策本部の消防局の連絡要員に手渡すというアナログなもので、対応が追い付かず、結局は「直接119番してください。」とツイート。あとで聞けば、市の消防局では平均的な件数の30倍にものぼる2,400件の通報のために指令台すべてが119番対応にかかりっきりになってしまい、SNSの情報をシステムに入力できる人間がいなかったという。

また救助要請のツイートにはたくさんの人からコメントが寄せられ、アドバイスや励ましの言葉などに助けられたという声もある一方、被災地以外の人による緊急性の低い書き込みが多く、本当に重要な情報が埋もれてしまっていたという問題点が浮き彫りになっていた。

多くの人が電話をかけて119番がつながりにくくなったとき、災害に強いとされるSNSを通じた救助要請を生かすためには、行政側はシステムと人員の体制作りが必要だ。そしてSNSユーザーにも、当事者以外の発信は、リツイートも含めて控えることが求められる。

このようにSNSの有効性と共に問題点が浮かび上がる中、このたび民間企業と政府が新たなイノベーションを立ち上げた。

災害時の情報収集にSNS活用、AIが信頼性を評価。LINEや自治体ら「AI防災協議会」設立

災害時の情報収集にSNSの書き込みやAI(人工知能)を活用する仕組みを検討する「AI防災協議会」が6月18日に設立された。LINE、ヤフー、SOMPOリスクマネジメントなど8社に加え、AIや防災などを専門にする研究機関と有識者、茨城県など全国18の自治体が参加する。

SNSやチャットbotを活用し、一般人からの情報を収集、整理するシステムを検討する。集めた情報の信頼性をAIが評価することで、デマや誤報などを取り除いた情報を防災対応者や被災者に向けて発信できる仕組みを目指す。2019年夏以降、神戸市などで防災訓練での活用や実証実験を行う。


出典:AI防災協議会

私たちがコミュニティにおいてできること

ところで、災害への向き合い方として、「自助」「共助」「公助」という3つの考え方があるのをご存じだろうか。

「自助」は災害時に自分自身の命は自分で守るということ。「共助」は顔の見える範囲内における地域コミュニティで災害発生時に力をあわせること。「公助」は公的機関が個人や地域では扱いきれない問題を解決することをいう。前述のような公の機関によるAIを使った防災情報の提供は「公助」にあたる。

大切なことは、正しく迅速な情報が提供されたとして、そのあと、どのように行動し身を守るかということだ。近頃は、「自助」「共助」「公助」のバランスが変化しているという。

重点を置くべき防災対策(自助・共助・公助の調査時点別比較)


出典:内閣府政府広報室「防災に関する世論調査(平成14年9月調査・有効回答2,155人)、(平成25年12月調査・有効回答3,110人)、(平成29年11月調査・有効回答1,839人)」より作成

地域問題に詳しい、一般社団法人日本集合住宅安全協会で代表理事を務める、鈴木健一さんに話を聞いた。

防災・減災は、「自助」が基本にあり、そのうえでコミュニティ内の「共助」を互いに提供し合えることが理想だという。そのためには、日頃から地域コミュニティの醸成が必要だ。隣人の顔も知らないような都会暮らしでは、意識してそういう機会を作らないとコミュニティは育たない。例えば、町内会、自治会、マンション・アパートの入居者同士の交流などだ。

これからの時季なら、地域のお祭りやイベントに参加するのもいいだろう。そこで交流した人々は、いざという時に守り合う「共助」の友だ。また「防災の日」を機会に、近隣同士が防災訓練を実施してみる。これは最も直接的な「共助」のシミュレーションになるだろう。

いま求められる意識改革

内閣府「平成22年度版防災白書」によれば、日本の国土は世界の0.28%しかないというのに、全世界の活火山の7.0%が日本にあり、マグニチュード6.0以上の地震の20.5%が日本で起こっているという。それに加え、地球温暖化に伴う台風や集中豪雨が激化していることによる風水害・高潮・土砂崩れなどの「気象学的危機」が追い打ちをかけ、かつてないほどの自然災害が国全体に襲いかかっている。

私たちに求められている喫緊の課題は「命を守る」ことの自主性であり、周囲との連帯である。今後、AIを駆使した情報の精査と発信が、混乱を防ぐことを期待を込めて見守りたいが、その先の行動は私たち自身にかかっている。

(Hello News編集部 黒後登志恵)

このエントリーをはてなブックマークに追加
ページトップへ戻る