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2021.02.18
♯連載
【筆者プロフィール】
山口紘実(ヨガ講師・セルフ骨盤メイク主催)
1989年生まれ。2歳と0歳の母。20代でのインド放浪をきっかけに、ゆるく幸せに生きようと自営業の道を歩み、27歳の時に提唱した「骨盤メイク」というオリジナルメソッドで独立。2020年にレンタルスタジオ運営を開始し、現在はワークライフバランスを模索中。
骨盤お悩み相談室:http://kotsuban-onayami.com
【目次】
無名のヨガインストラクターがレンタルスタジオを経営してみたら
<第1話>「乳幼児をかかえたママが不動産経営?!」
<第2話>「内見にいざ出陣!」
「駅から近くて、10枚くらいヨガマットが敷けて、窓が2カ所以上あって換気がしやすくって、ヨガスタジオにぴったりの綺麗で素敵な物件、おまけにとびきり家賃が安いのがあれば、自分でスタジオを持ってもいいですよ」
株式会社オリエンタル・サンの山田武男さんに、自分のスタジオを持つことを勧められた時、私はあえて無理難題をふっかけたのです。
そんなのあるわけない…。
遠回しに断ったつもりでいましたが、後日、山田さんから1本の電話が入ります。
「面白い撮影スタジオがあるから見に行こうよ」
向かった先は、神田の「イサオスタジオ」という場所。なんでも、イサオさんという名の映像制作のプロが、テレビ撮影に使うような本格的なカメラを使って、超ハイクオリティなYouTubeライブの番組制作などを手がけている、ということでした。
イサオスタジオの様子。コンパクトなスペースにカメラが上手く配置され少人数向けの収録スタジオになっています( https://www.isaostudio.jp/fitness-ch )
イサオスタジオは、元々小さな和室だったそうです。自分達で壁を塗ったり内装工事を行ったりして、撮影スタジオにリノベーションしたそうですが、その完成度には驚きました。
「こんな場所ならヨガの動画を撮影してYouTubeで流すのもありかなぁ」
一瞬、ヨガユーチューバーとしての未来に夢が広がりました。
「いや待てよ、ヨガの動きを撮るにはもう少し部屋が広くないと全身が映らないか」
内装工事の素晴らしさには驚いたものの、自分とは違う世界だと断念。部屋を出ようと扉に手を掛けたとき、山田さんが言いました。
「そういえば下の階に空いている部屋があるけど見てみない?」
見学だけならいいか…と思い、山田さんに連れられて階下に向かいました。
階下に着いて、玄関扉を開けた私の最初の感想は、「わ~、サラ金の事務所みたい」でした。そこは、まるで漫画「闇金ウシジマくん」の世界そのものでした。目に飛び込んできたのは、タバコの吸い殻の山とそこから発せられる強烈な臭い。ホコリが溜まっていて灰色がかって見える室内、いかにも悪者が座っていそうな大きくて黒い椅子とデスク。さらにトイレが今どき珍しい和式と、これはもう一刻も早くここから飛び出したいばかりの部屋でした。
「だれがこんな部屋を借りるんだろう」
漫画「闇金ウシジマくん」の世界観を醸し出している
使用するのをためらってしまう和式トイレ
誰がどう見ても、私が描くヨガスタジオの世界観とは全く違います。候補にさえならない物件だったはずなのに、私はあることに気づきました。
「あれ、ここ…。日差しが入って風が通って気持ちいい!」
開放感のある窓で、風通りも抜群!
隣のビルと隣接していないため、明るくて風通りの良いこのロケーションは、【日差しが入って風がよく通る二面窓】という、私の絶対に譲れない条件をクリアしていました。しかもこのビルは神田駅から徒歩1分という駅近です。
「あれ、条件に近いかも…」
「ちなみにお家賃は…?」
恐る恐る聞くと、予算内どころか想像よりもはるかに安い金額が返ってきました!なんとオーナーさんが2年後にビルの取り壊しを検討しており、「リフォーム費用がかかるくらいなら、あと2年は空室でもいい」と考えていたという、そもそも人に貸す気がさらさら無いという物件だったのです。
「だからこんな状態で放置されているというわけです」とニッコリ顔の山田さん。
「本当に自分たちで安く綺麗に内装工事ができるのなら、初めてのスタジオ運営にはピッタリの掘り出し物件かもしれない!」
私は、運命の出会いに近いものを感じました。そして、ワクワクが止まらなくなりました。
ちなみに前回の記事で私が出した条件とこの物件の比較はこちらです。
もちろん、いいことばかりではなく、借りるにあたって想定外のハードルもありました。
・自分で内装工事をしないといけないこと。
・2年間の定期借家契約だということ。
・エレベーターがないため、5階まで階段で上がらなければいけないということ。
エレベーターなしでは、子連れレッスンやマタニティレッスンの需要は見込めません。ですが、この時はすでにコロナ禍だったので、「子連れの方や妊婦さんはオンラインレッスンという選択もあるかな?先生だけスタジオに来てここからオンラインレッスン配信という需要はあるかもしれない」と前向きに考えることにしました。
初めて内見した日から3日後、山田さんの紹介で、 株式会社サン・グリーン・アソシエイツの君塚社長に来ていただいて、内装工事の見積もりを出してもらいました。
山田さんと君塚社長曰く、「電気配線などの専門工事だけ専門業者に任せて、壁塗りや床の張り替えなど自分たちでできることは自分でやる。トイレも洋式トイレを上からかぶせるタイプにすればコストはそこまでかからない。トータル20~30万円でいけるのでは」とのことでした。
この話を聞いた時、私の心は決まりました。長年の夢だった自分のヨガスタジオをここで開きたい。そして、【1カ月後には工事を完成してスタジオオープンする】を目標に掲げ、私はこのサラ金オフィスを自分のヨガスタジオとして契約することにしたのです。
山田さんには、「自分で内装工事をするならスピードが命!」と念を押されました。というのは、とても地道な作業であり、ダラダラやっていると疲れてしまい作業スピードが落ちるので、ワクワクしているうちに短期間でとにかく仕上げることがとにかく大切なのだそうです。早速、その日のうちに「古い壁の剥がし方レクチャー」を受け、私は、人生初の内装工事に着手したのでした。
君塚社長の指導のもと内見から3日目でセルフ内装工事に着手
ちなみに、私のヨガスタジオの象徴とも言える【パステルパープル】の壁色ですが、この色味はこの段階で決まっていました。「ペンキの注文は時間がかかるから、早く発注しよう!」と急かされ、色のサンプル表の中から適当に選んだ色が、結果的にお客さんからも大好評になったのです(笑)。
「じゃコレで」と、数秒で決めた壁色
この一連の流れで私が学んだことは、【直接、見てみないと分からない】ということでした。実際に現地に行ってみると、写真より部屋が広く感じたり狭く感じたりします。また、風通りの良さや日当たり、雰囲気等は行ってみないと絶対に分かりません。今回は古いビルではありますが、一瞬、頬を通り抜けて行った風の気持ち良さが決め手になりました。
そして、実際に物件の周辺を歩いてみて、その街の雰囲気が好きになれるかどうかも大切だと思いました。ビル周辺は、タイ料理屋さん、ビーガン料理、ベジタリアン料理などのカフェがあり、ヨガでスタジオレンタルするインストラクターやそのお客さんの好みとマッチしていると感じました。また、東京駅も近いので、お客さんがレッスンの前後で食事をしたり買い物をしたりできるかなとも考えました。
次回はいよいよトラブル勃発の内装工事がスタート!内装工事にかかった費用もお伝えします!
~第3話に続く~
(ヨガインストラクター 山口紘実)
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