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COLUMN

コラム

2018.11.08

インタビュー

「3点ユニットでも気にしない」急成長中の外国人市場

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グローバルトラストネットワークス(東京都豊島区・以下GTN)は、日本を拠点に家賃保証(賃貸住宅保証)や不動産仲介などを行う会社でありながら、顧客を外国人に絞り事業を展開している。外国人向け賃貸住宅市場のパイオニアである同社社長の後藤裕幸さんに市場の現状を聞いた。

 ――これまで何カ国の入居者を保証してきたのでしょうか。また、どのようなスタッフが働いていますか。

家賃保証は163カ国、賃貸仲介は100カ国のお客様にご利用いただいています。地域別では、中国・韓国・台湾が7割、ベトナムやネパールなどの東南アジアが2割、そして残りの1割が欧州・欧米やその他の地域のお客様です。10年ほど前は、中国・韓国・台湾だけで8割を占めていましたが、ここ1年くらいは東南アジアが増えてきています。

180名中130名が外国籍のスタッフで、彼らの多くは3カ国語が話せます。中国やベトナムを始め、16カ国のスタッフが働いています。

 ――法務省の統計では2018年の在留外国人数が263万7251人と過去最高を記録しました。一方で、日本に住む外国人は差別や偏見で部屋探しに四苦八苦していると聞きます。このような状況で、オーナーの外国人に対する考えは変化してきていると感じますか。

設立当時の2006年は、管理会社に「入居したい外国人がいる」と問い合わせをすると「(肌の色は)何色ですか」「物件の価値が下がるから困る」などと、差別的な態度を取られたり、露骨な断られ方をされたりすることがよくありました。今は当時のようなあからさまな表現は言われなくなりましたが、それでも8割くらいの管理会社・オーナーは外国人の入居に消極的という印象です。

 ――知人のイギリス人は外国人だからという理由で入居を断られた経験があると言っていました。一方で、日本国籍ですが生まれ育ちがドバイで日本語があまり話せない大学生の知人は、不動産会社で外国人扱いされ、断られた物件もあると言っていました。こういう現状を見聞きすると、異文化圏の人々を受け入れる土壌が整っているとは言い難いことがわかります。この状況はいずれ打開されるのでしょうか。

極端な話、解約の連絡すらなくある日、突然入居者に国へ帰られてしまうことも有り得ます。そういったリスクが入居受け入れの妨げになっているのだと思います。だまって帰国してしまったからといって、海外まで追いかけることは現実的に不可能です。さらに、日本語が不自由な入居者だった場合、管理会社のスタッフが外国語を理解できなければ、確認のメールすら送れません。

とはいえ、縮小する日本人市場だけでビジネスを考えていたら、今後の人口減少時代の中で入居率を上げるのは難しくなってくるでしょう。賃貸市場の下支えとなる18歳人口は、1966年のピーク時で249万人いました。ところが、2014年には118万人と半数をきってしまいました。その上、2017年の出生数に目を向けると94万人しかおらず、将来的に入居者が減るというのは目に見えています。

 ――つまり、減少する日本人と反比例して増えていく外国人住民を取り込むことは、入居率を維持する上で欠かせなくなるということですね。

そうですね。彼らは一度受けた屈辱を忘れませんから「外国人だから」という理由でぞんざいに扱っている会社は、相手にされなくなってくるのではないでしょうか。ある不動産会社の人が「最近外国人が増えているというけれど、うちにはそんなに来ない」と言ったんです。よくよく調べると、ウェブサイトでその不動産会社からこんな仕打ちを受けたといったような口コミが書かれていました。その悪評を見て、外国人たちが行かなくなったようです。最近は、韓国の「ドンユモ(DongYuMo)」や中国の「シャオチュン(小春)」といったサイトが来日するアジア系外国人の情報源になっているようです。ネット以外でも、彼らは知人や友達同士で、あそこは良かった悪かったと情報交換をしていますから、悪い噂はすぐに広まってしまいます。

 ――逆に言えば、良い評判を広めるチャンスという見方もできるのではないでしょうか?

まさにその通りです。大半のオーナーや管理会社が外国人の受け入れに二の足を踏んでいるわけですから、早々に彼らを歓迎しているオーナーは恩恵を受けていると思います。

あるオーナーは、退去する外国人に「部屋探しをしている知り合いがいたら紹介してほしい」と伝えているそうです。そのおかげで、空室期間を作ることなく部屋を貸せていると言っていました。しかも、退去する人は自国まで家具を運ぶと輸送費のほうが高くつくことから「家具、このまま使っていいから」と置いていくケースもあり、次の入居者はすぐ住めるようです。

 ――外国人入居者への差別や偏見をなくすためには何が必要だと思いますか。

お互いに歩み寄ることが大切だと思います。新宿区では今年の新成人の外国人比率は45.7%※に達しました。特に、20代の若い世代が増えているようです。身近にいる彼らを外国人だからという理由で受け入れないのはナンセンスです。
※NHK NEWS WEB調べ

もちろん彼らも日本に住んでいる以上は、地域の文化や習慣を尊重すべきです。ですが、日本と海外ではルールも違うので、ルールを破るというよりも単純に知らないだけということもあります。

 ――例えば、どのようにルールが違うのでしょうか。

韓国では賃貸住宅を2年契約したのに1年で退居することになった場合、契約期間中は家賃を払わないといけませんが、他の入居者を自分で見つけてくれば、家賃を払う必要がなくなります。しかし、これを日本でしてしまうと、「また貸し」となり、契約違反になってしまいます。こういったトラブルを防ぐには、日本独自のルールがあるということをきちんと説明し理解してもらうことが重要です。

 ――ルールも文化も違う国から来た入居者には、どのようなことを意識して接すれば良いのでしょうか。

自分の子どもがアメリカに留学し、部屋探しをすると考えてみてください。子どもが現地でどのような対応をされたらうれしいのかを想像することが大切です。そうすることで、相手が必要としていることが見えてくるはずです。

 ――外国人はどのような物件を選ぶ傾向にあるのでしょうか。

お風呂に浸かる習慣がない国から来た方は、日本人の嫌がる3点ユニットでも気にしません。最近は、賃貸住宅の設備が進化して、オートロックや浴室乾燥機、宅配ボックス…と細かく指定する日本人が増えています。一方で、外国人は設備に関してこだわる方は少ないと感じます。というより、日本の住宅設備にはどのような設備があるのか知らない人のほうが多いので、注文をつけてこないのだと思います。

 ――後藤さんは、外国人に日本を好きになってもらいたい。そのためには彼らが住みやすい環境を整える必要があると考えていらっしゃいますが、よりよくするために取り組まれていることはありますか。

現在、ベトナム、韓国、モンゴルに4店舗ある海外支店を2030年までにアジアに30拠点開設します。現地では日本へ渡航を予定している人々に対して、日本での部屋探しなどをサポートします。

また、外国人に特化したアルバイト情報サイトの運営や携帯電話サービスなど生活全般のサービスも展開しているので、日本に来てからも生活に困らない仕組みづくりをしています。

 ――各国にも、日本への渡航をサポートしている現地企業がたくさんあるのでは?

確かに日本へ学生を送り込む現地ブローカーはいます。ですが、ただの手数料ビジネスとしてとらえ、来日後のことはどうでもいいと考えている業者が多いのです。そのため、都合の悪いことは教えてくれません。例えば、留学生は週28時間までしか働いてはいけないという重要な情報は知らせてもらえず、日本に来てから初めて知ったといったことは日常茶飯事です。そこで私たちは、日本に来てからではなく、現地にいる段階からの両親が子どもを安心して日本に送り出せるような環境を作りたいのです。

弊社では家賃保証サービスを「親代理業」と呼んでいます。母国にいるご両親とも連絡を取り、情報確認や日本の賃貸住宅のルールなどを一通り説明します。外国人が少しでも気持ちよく日本に住んでもらうために、そして日本に来て良かったと思ってもらえるよう、これからもサポートを続けていきたいと思います。

外国人の受け入れが本格化

これまで、外国人労働者の受け入れは高度な専門知識を持つ高度人材に限定されてきた。しかし、2025年の国内労働市場は583万人の人手不足に陥るという内閣府の予測が出ており、市場は危機的方向に傾こうとしている。これを危惧した政府は、今年10月にその方針を転換し、単純労働を受け入れる方針を示した。そして政府は、労働人口不足を補うことを目的に、2種類の在留資格を創設すると発表した。在留資格は、5年間働ける在留資格「特定技能1号」と、資格が更新され続ければ実質永住可能な「特定技能2号」に分かれている。

政府や世の中はグローバル化を推し進めているが、外国人が住みにくい国が果たして真のグローバル国家と呼べるのだろうか。国籍や民族が違うという理由だけで線引きをすべきではないし、「人」として受け入れるのが本来あるべき姿だろう。住まいは私たちの生活に欠かせないものだ。だからこそ業界の当事者たちが考えを改めることで、住みやすさは格段に向上するはずなのだ。

(Hello News編集部 須藤恵弥子)

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