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2019.09.12

♯市場・トレンド

受け取り革命の主役。宅配ロッカー最前線

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※本記事は「武蔵TIMES 令和元年/8月号」(発行:武蔵コーポレーション)に掲載された「吉松こころの不動産最前線」に加筆修正を加えたものです。

増え続ける新たなニーズ

物流業界で今後キーになってくる言葉が3つあるそうだ。

それは、「自動化」「無人化」、そして「ストレスフリー」。

これを証明するかのように、宅配ボックス最大手、フルタイムシステム(東京都千代田区)には、これまで予想していなかったような問い合わせが急増している。

ある大手飲食チェーン店からは「お持ち帰りの弁当を自動で出せるような冷蔵ロッカーはないか?」、法人ユーザーからは「オフィス内の本やPC、備品、制服などの貸し出しをロッカーでできないか、履歴も残していほしい」、個人の顧客からは「通販で買った商品を、いつも使っている駅で受け取れないかしら」などだ。

長年、エントランスの顔だった宅配ボックスは、今やマンションから飛び出し、商業店舗やオフィス、学校、駅、スーパー等へと設置場所を広げている。それは消費者の「よく利用する場所で、好きな時間に自由に受け取りたい」という欲求がどんどん高まっているからに他ならない。

前述のフルタイムシステムの副社長、原周平さんは、「宅配に限らず、あらゆるものの受け取りの場面でロッカーが使用され始めています。宅配ロッカーというよりむしろ、ピックアップロッカーといってもいいかもしれない。受け取るのは何も宅配物だけとは限りませんから」と語る。

これだけ人材不足が騒がれて久しい昨今、企業でも「総務部に行けば〇△がもらえる」というのはもはや昔の話。すでにある地方銀行では、営業社員が使用するiPadや携帯電話の貸し出しをロッカーで行っているという。もちろん預け入れ中に充電は満タン。履歴管理もバッチリだ。こういった人を介さない仕組みがどんどん当たり前になっていくのだと思う。

賃貸での新たな試み

昨年、伊藤忠アーバンコミュニティとフルタイムシステムは、単身赴任者が多く住む、法人契約の多い賃貸マンションでユニークな試みをスタートした。

それは、お掃除ロボットや高圧洗浄機、自転車の空気入れといった備品の貸し出しだ。

個人ではなかなか手が届かない高価なお掃除ロボットも、「建物全体でシェアして使おう、それを管理人さんではなくロッカーで管理しよう」というものだ。

さらには、電動自転車の鍵とバッテリーの貸出返却・利用料の収納までもロッカーを介して行っているという。「一番利用頻度が多いのは、空気入れ」(原さん)だそうだ。

オーナー独自の利用法も

一方でオーナー達の独自の利用法も面白い。アパート70戸と学生寮などを所有する林浩一さんは、宅配ロッカーを入居者とのコミュニケーションに活用していると話す。

入居者とは、普段からメールやSNSなどで頻繁にやり取りをしており、中には旅行先からお土産を買ってきてくれる入居者もいるという。そんな時、“何番の宅配ボックスにお土産を入れました”とメッセージが届くそうだ。

「帰宅したらすぐに立ち寄って受け取ります」(林さん)

川崎市を中心に350戸を所有する石井秀和さんは、ロッカーを活用してこんなことを考えている。

「日頃から入居者さんが熱を出してダウンしているようだと聞けば、ポカリスエットや薬などを持って行くことがあるんですが、入居者さんが女性の場合は、パジャマだったりすることもあるので直接行けないんですよ。そんな時はドアノブにかけたりするんですが、今後は宅配ボックスに預けてみようかなと思っています」(石井さん)

視点を変えるだけで様々な使い方ができる宅配ボックス。

「こちらが想像していなかった活用の方法が広がっている」(原さん)とあるように、荷物の受け取りという用途以上の付加価値と可能性が広がっている。

(Hello News編集部 吉松こころ)

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