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2019.01.17

♯インタビュー

熱血男が作った価格破壊の“ワンコインホームセキュリティ”

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全国賃貸住宅新聞が毎年発表する「入居者に人気の設備ランキング」では、毎回上位にランクインする「ホームセキュリティ」だが、実際のところ、導入に踏み切るオーナーはそう多くない。ネックの一つになっているのが導入費用だ。そんな中、“ワンコインホームセキュリティ”と打ち出し注目を集めているのがプリンシプル(福岡県福岡市)だ。社長の原田宏人さんにインタビューした。

営業手法を学んだアルバイト時代

「祖父、父が会社を経営し、兄も起業家という家庭で育ちました。ですから、高校を卒業した頃から、兄ができたから自分にもできるだろうと漠然と考えていました」とプリンシプル(福岡県福岡市)の社長で、今年35歳、歳男だという原田宏人さんは笑いながら振り返った。180cmの長身でイキイキと語る表情が印象的だ。

専門学校在学中のアルバイトも、“起業”を念頭に選んだ。「独立するには、営業力がないといけない」と考え、電話会社の回線営業の世界に飛び込んだ。その当時の営業は、個人宅への直接訪問がメインでここで営業に必要な胆力を鍛えた。その後、時代は電話からインターネット回線へ変わる中で、売る物が変わっても営業の前線で経験を積んでいった。「個人営業を極めたら次は法人営業が必要」と、今度は人材募集の広告営業に就き、法人開拓に没頭した。その後、2007年、23歳で独立を果たした。

独立当初は個人宅に直接訪問し、インターネット回線の販売を行っていた。それから2年後の2009年、地元福岡で足元を固めようと拠点を東京から福岡に移し、仲介会社や管理会社を回って、入居者向けのインターネット回線を提案して回った。

きっかけは娘の誕生

持ち前の営業力を武器に事業を拡大していったが、2012年、転機が訪れる。それは第一子となる娘の誕生だった。この頃から、もっと社会に意味のあるサービスや商品を提供したいと強く考えるようになっていった。

娘が生まれたことで家族をもつ喜びをしみじみと感じていたある日、突然の悲報を耳にする。社員の友人が性犯罪の被害に遭い、自ら命を絶ってしまうという出来事が起きたのだ。

「自分にもっとも近い場所で不幸な事件が起きたことで、世の中で起こっていることへの見方が180度変化しました。同じ年に子供が生まれたことの影響も大きかったと思います。それまで世の中の事件、事故を自分事に置き換えて考えることはありませんでしたが、この時以降、自分の大切な人が巻き込まれたらどうする?と考えるようになり、こんな悲劇を世の中からなくしたい、減らしたいという強い思いが芽生えました」と原田さんは話す。

前述の女性は、マンションの共用部で被害に遭った。調べていくとマンション内や室内でこのような犯罪が起こるケースは多いことが判明した。本来なら安らぎを求めるべき住宅で犯罪が起こることに、原田さんは憤りを感じたという。そこで「安心して暮らすことのできるまちづくり」をビジョンに掲げ、その第一歩として着目したのがホームセキュリティだった。一人暮らしをする若者が導入できなくては意味がないと考え、安価なものが作れないものかと、2012年、開発に着手した。

しかし、アルバイト時代や起業してからも営業で実績を上げてきた原田社長は、呆然とした。

「商品の開発って何からすればいいのかわからない・・・」

資料の作成も外注先との打ち合わせも全てが手探り状態。そんな時に手を差し伸べてくれたのがソニーで役員を務めた経験もある同社の顧問、小寺圭さんだった。仕様書の策定方法や開発会社との打ち合わせなど、様々な場面で助けられた。

必要最低限の機能で安価を実現

「もっと早く商品が完成するかと思っていた。2年もかかるなんて思ってもいなかった」(原田さん)

開発から2年後の2014年に完成したのが「SMART ROOM SECURITY(以下、スマートルームセキュリティ)」のテスト版だ。安価で簡単に導入できること念頭に置いていたこの商品は、月額費用を500円に設定した。そして”ワンコインホームセキュリティ”として販売を開始した(料金は500〜980円とインターネット環境によって異なる)。

安価を実現するため、ホームセキュリティの機能は必要最低限に絞った。スマホ型のホームターミナルとなる機械に加え、開閉を感知するセンサー、持ち出し可能なSOSボタン(リモコン)のみを基本プランとした。

警備員や車、基地など自社で保有せず、提携する警備会社と連携することで万一の事態に備えた。緊急時に警備員が出動した時は、その都度5000円が発生するという仕組みだ。

値段の安さと同様に注力したのが“簡単”であることだった。このため設置、配線工事などは一切不要とした。ホームターミナルも電源を入れ、センサーは両面テープで貼り付けるだけで導入できる点にもこだわった。インターネット環境がなくても使えるのもポイントの一つだ。

販売当初は、賃貸住宅の入居者をターゲットに仲介会社、管理会社と提携を進めた。入居契約時にホームセキュリティの案内の承諾をもらい、同社のコールセンターから入居者に電話をかける直接営業を中心にしていた。

昨年2018年には東京進出を果たし、オーナー向けの提案を強化している。このきっかけは、NTT東日本が同社の代理店になったことだった。NTT東日本はインターネット回線販売の付加価値としてホームセキュリティをセットでオーナー向けに販売している。

「もともと弊社がNTT東日本のインターネット回線の販売代理店だったことが縁で弊社の商品を販売するということが実現しました。オーナー向けの反応がとてもいいんです。2019年も通信キャリア、電力会社などインフラ会社と管理会社と相性がいい商品なので連携をとって広めていきたい」と原田さんは力強く語る。

さらに、最近は高齢者向けの見守りとしての問い合わせが増加。2018年の9月にNTT西日本と共同開発し、高齢者見守りサービス「スマートルームみまもり」のトライアルを開始した。3月までフィールドトライアルを行い、4月から本格稼働していく計画だ。

「平日が東京で土日が福岡という今流行りの“二地域居住”をしています。出張の日数がどんどん増えていき今のライフスタイルが確立していきました。6歳、4歳、2歳と育ち盛り、わんぱく盛りの子供がいますので、妻は大変だと思いますが、感謝しています。平日は、毎日フェイスタイムで家族とのコミュニケーションを取るようにし、土日は、家族サービスをするように心がけています」と照れ臭そうに笑った。

自らは家族と離れ離れになりながらも、身近で起きてしまった不幸な出来事と犠牲を無駄にしないため、安全な暮らしの提供に尽力すると誓う熱血漢だ。

(Hello News編集部 山口晶子)

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