• facebook
  • twitter
  • line

COLUMN

コラム

2019.02.14

♯金融

元銀行員が教える「銀行との上手な付き合い方」

このエントリーをはてなブックマークに追加

【筆者プロフィール】

檜垣圭祐

株式会社SGAコンサルティング 代表取締役社長、一般社団法人シニアライフよろず相談室 代表理事

昨今、金融庁によるアパートローンの締め付けや、銀行の不正融資が問題となっている。しかし賃貸経営を行うためには銀行からの融資はつきものだ。そこで、銀行からお金を借りて賃貸経営を行うにあたり大切なことの一つである「銀行との上手な付き合い方」について考察していく。

3つのポイント

「彼を知り己を知れば百戦殆うからず」
この言葉は「孫子の兵法」の一節だが、銀行と上手に付き合い、資金調達を円滑に進めることは、「彼(銀行)を知り」、「己を知る」ことである。「彼(銀行)」を知る上で、銀行がアパートローンの審査において重視している「3つのポイント」についての理解は欠かせない。

1つ目は事業計画。アパートローンは事業性のローンのため、「賃料収入を返済原資として、建物の耐用年数内に無理なく返済できる事業計画となっているかどうか?」が厳格に審査される。

2つ目は、融資対象不動産の担保評価額だ。不測の事態により事業計画が破綻し、返済不能となってしまうリスクをカバーするため、銀行は融資に際し、融資対象不動産(土地・建物)を担保取得する。担保評価額は、銀行によって開きはあるものの、時価よりも明確に低い水準となる。基本的に「担保評価額≧融資限度額」となるため、土地の取得費も借入れで賄う案件の場合、より多くの自己資金の準備が必要である。

3つ目は、借主の属性である。住宅ローンの場合は、給与収入を中心とする収入面が重視されるが、アパートローンの場合は、間接的な保全として、所有不動産や金融資産などの資産背景が重視される。

以上は、アパートを新築する場合を想定しているが、中古のアパートを購入する場合の資金調達においても、審査のポイントは基本的に変わらない。ただし、返済期間が最大でも「建物の耐用年数-築年数」までしか取れないこと、新築物件と比べ建物の担保評価額が低いこと、購入時にリフォームを要する場合は、そのコストが上乗せされることなどから、新築の場合よりも一般に審査は厳しくなる。

リフォームローンの前提条件

既に賃貸経営中のアパートのリフォーム資金を調達する場合は、そのリフォームが入居率の改善や家賃の引上げを通じた賃料収入の増加に寄与するものであることが前提条件だ。リフォーム資金は銀行以外から調達する方法もあり、クレジット会社が扱うリフォームローンは、金額1,000万円程度までなら無担保で対応可能なものもあるため、管理会社を介して問い合わせてみても良いだろう。

アパートローンの融資申し込み時に銀行に提出する書類は、以下の通りだ。
・事業計画書
・融資対象不動産に関連する書類として登記簿謄本
・公図、建物図面、建築確認申請書類など、借主の属性に関連する書類として過去3年分の収入のわかる資料(源泉徴収票、確定申告書など)
・所有資産のわかる資料(所有不動産一覧、預金通帳コピーなど)

アパートローン審査上の「3つのポイント」の判断材料として提出を求められていることが、おわかりいただけるだろう。ちなみに、銀行による不正融資問題を受け、「今までは預金通帳のコピーの提出を受けていたが、改ざん防止の観点から、必ず窓口で通帳を預かり、銀行員がコピーを取った上で通帳を返却するよう、手続きを改めた」という銀行もあるようだ。

銀行員と信頼関係を築く

アパートローン審査上の「3つのポイント」を理解できたら、今度はこれをモノサシにして、自身が資金調達を検討中の案件を見直してみよう。これが、「己を知る」ためのアプローチである。

「3つのポイント」を何の問題もなく充足している案件は少数派だ。自身が検討中の案件はどこに難点があるのか?難点を解決する手立てはありそうか?PRすべきストロングポイントはどこなのか?ということを、頭の中でしっかり整理しておくことが大切である。

このプロセスを経ることにより、案件の進め方について銀行員と認識を共有できるようになり、銀行員との間に、「審査する側とされる側」という相対関係ではなく、「共に考え、突破口を見出しながら案件を進めていく」という、戦友のような信頼関係を構築することができるのである。こうなれば「銀行との付き合い方を極めた」と言えるだろう。

とは言うものの、アパートローンの融資申し込みとその後の銀行との折衝は、賃貸経営の経験が浅いオーナーには、やはり重荷となる。単独で行うよりも、日々の業務で銀行と付き合いがあり、その考え方を熟知している専門業者を介して行う方が、成功率は高くなるだろう。特に初めて銀行員と面談する際は、建設会社や管理会社など、銀行とパイプのある不動産のプロに同席してもらうと良いと考える。

【筆者紹介】
愛知県今治市生まれ。東京大学経済学部を卒業後、1996年に富士銀行(現みずほ銀行)に入行。20年弱の銀行勤務の中で、法人および法人オーナー向け営業を中心に、グループ証券会社・信託銀行への出向も経験。現在は、百貨店などで相続を中心とした個別対談を行う傍ら、シニア向けセミナーやイベントの企画にも力を入れている。

このエントリーをはてなブックマークに追加
ページトップへ戻る