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ROOM

ヘヤミセテ

2019.2.28

1(L)DK/一人暮らし

VOL.05

賃貸なのに購入できる賃貸住宅が誕生!デザイナー兼建築家が作ったユニークハウス

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賃貸なのに購入できる賃貸住宅が誕生!デザイナー兼建築家が作ったユニークハウス
イノウエサトルさん

イノウエサトルさん

出身地
: 千葉県
賃貸暦
: 4年
趣味
: 特になし
休日の過ごし方
: 家でボーッとする(そんな休日はほとんど無い)
住んでみたい場所(国)
: タイ(プーケット)
あなたにとって賃貸とは
: 「所有しない」という点で、自分にとって理想的なライフスタイルです。
間取り図

デザイナー兼建築家のイノウエサトルさんは、自身で手がけた賃貸住宅「高宮マンション(以下、TKM430)」に、2015年から暮らしている。物件は福岡の中心部からほど近く、最寄り駅からは徒歩約3分とアクセス良好な場所にある築43年の中古区分マンションの一室だ。

ひとつづきになったリビング・ダイニング・キッチン

部屋に入ると、リビング・ダイニング・キッチンが中央の「箱」を囲うようにひと続きのワンルーム空間が広がっていた。部屋の広さは50平米だが、そのわりには広く感じられる作りになっている。壁の数が最小限に抑えられ、少しでも広く感じられるよう工夫がなされていた。「箱」の中には、お風呂・トイレと、寝台用ロフト・納戸が据えられている。

左側の木製スライドドアを開けると玄関ドアになっている

キッチンとダイニング

ロフトは寝室として使用

バスとトイレ①

バスとトイレ②

玄関ドアは、アメリカの住宅のような造りで部屋と直結している。脱いだ靴は玄関ドアの目の前あるクローゼットに収納している。ちなみに、玄関ドアの前には木製のスライド扉があり、閉じることでドアが隠れて壁と一体化したように見える。

この、造りのユニークさからハプニングもあったとか。「知人が泊まりに来た時のことです。翌朝、私が先に家を出て、知人はその後ひとりで部屋を出たんです。ですが、木製のスライド扉が閉じられ、それが“壁”のように一体化していたため、玄関ドアがどこにあるのか探し出せず、パニックになってしまいました。知人から連絡がきておさまりましたが、ドアの仕組みを説明していなかったのがいけなかったですね」(イノウエさん)

気に入ってはいるが、反省点もあるという。美しくみせるために自然素材を使っているため、傷つきやすいというデメリットがあるからだ。「自分のようにがさつな人間でも、細かいことを気にせず生活できる丈夫な素材を使うといったことも考慮しておけばよかったと思います」(イノウエさん)

きっかけは知人の提案

ところで自らリノベーションした物件を、なぜ購入せず「賃貸」で借りているのだろうか。「とある事情から、今まで暮らしていた家を引っ越さなければならなくなってしまったんです。しかし当時は、まとまった資金がなかったこともあり、分譲ではなく賃貸できる家を探していました。そんな時に、知人であり不動産会社を経営する久門一智さんが、せっかく家のデザインをしてるんだから、住みたい物件を見つけてリノベーションしてそこに住んだらどうかと提案してくれたのです」(イノウエさん)

「残価設定型賃貸」で購入のハードルが下がる

そこから話はとんとん拍子に進み、2014年に現在の物件を久門さんがオーナーとして購入。イノウエさんが中心となりリノベーションを実施して現在に至るというわけだ。ちなみに家賃は月10万円だが、「残価設定型賃貸」と呼ばれる仕組みを利用している。この聞き慣れない「残価設定型賃貸」というのは、購入を前提に賃貸で住むというもの。将来的に家は購入したいが、手持ちの資金もなく、ローンも難しいといった人に適したスタイルだ。

物件は不動産会社が購入し、取得費用とリノベ―ション費用の総額を元に月額賃料を出す。そして最初は賃貸借契約を結び、オーナーへ毎月賃料を支払う。その後、購入することになった場合は、取得費用とリノベーション費用の総額から、これまで支払った賃料総額を差し引いた額で購入できる。また、ローンを組んで購入するケースでは、返済額を抑えられるというメリットがある。もちろん購入せずそのまま賃貸として住み続けることもできる。また、住み替えたい場合も、賃貸借契約を解除することができる。イノウエさん自身も、将来的に購入を検討してはいるものの、ライフスタイルの変化で住み替えする可能性もあるという理由から「残価設定型賃貸」が適していると話す。

民泊にも活用

3年前までこの部屋を活用してホームスティ型の民泊をしていたこともあったと語るイノウエさん。韓国、台湾、アメリカ、ヨーロッパなどから約30組のゲストを迎え入れ、世界中に知り合いができたという。

「私のデザインした部屋に興味をもった台湾人の建築家のカップルが泊まりに来たことがありました。その後、台湾を訪れた時に彼らに再会し、街を案内してもらったことはいい思い出です。1年間ほど営業していたのですが、在宅しながらの受け入れで少し疲れてしまったということと、新法成立後はルールが厳しくなると聞き、辞めることにしました」(イノウエさん)。

イノウエさんは、運よく自分の理想とする賃貸住宅を自身で作り住むことができた。しかし、分譲と比較すると部屋のバリ―ションが少なすぎると感じているという。イノウエさんは「空間にこだわる人のために、もう少し選択肢が増えればいいと思います。そうすれば仮住まいとしての賃貸ではなく、所有したくはないけれど、そこにずっと住み続けたいという「サブスクリプション住居」といった新しい概念が生まれると思います」(イノウエさん)。

(Hello News編集部 須藤恵弥子)

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